【完結】慰霊の旅路~煩悩編~

退会したユーザー ?
退会したユーザー

小野湖(山口・宇部市)

公開日時: 2022年4月3日(日) 22:46
文字数:8,789

2026年4月4日 土曜日 AM10:00

慰霊の旅路に投稿された心霊調査のために侑斗は山口県宇部市にある小野湖へと足を運んでいた。カメラを三脚にセットした状態で動画配信用の映像を撮影し始めた。


「慰霊の旅路のライブ配信をご覧の皆さん!おはようございます!とは違うんですけどね!収録なのでライブ配信じゃありません!後々映像を編集後、動画として配信する予定です。僕饗庭侑斗社会人として2年目を迎えまして勤務先でも後輩の職員が出来てまだ、まだ忙しすぎるとは言える状態ではありませんが僕が市長に進言して立ち上げた心霊観光課としては立ち上げたばかりで、小城市の心霊観光都市宣言もこれから徐々に心霊スポットとされる場所のデメリットばかりがクローズアップされがちですがそれをできる限り色々な方に足を運んでいただける機会を我々が作って少しでも肝試しの若者達によるマナー問題の改善にも繋がっていければという、少しでもね今の心霊スポットを取り巻く環境を我々の活動で良くしていきたいと思っています。今回は僕の後輩で新入職員であり同時にボランティア霊能力者でもある吉岡祐輝君と共にお届けしたいと思いますので、では吉岡君!挨拶をどうぞ!」


侑斗が吉岡に対して挨拶をお願いすると、右横から照れ臭そうに吉岡が「どうも。皆さん初めまして。小城市心霊観光課という市民課の中にあるちっちゃな課の一つなんですけどね、僕と饗庭さんは市民課の職員であると同時にボランティアで霊能力者としての活動をしています。これからは、小城市のみならず日本全国規模で心霊スポットのイメージ改善のみならず、肝試しのマナー問題にも我々が介入することで少しでもより良い方向へと改善できるように努力していきたいと思いますので宜しくお願い致します。」と挨拶を済ませると、侑斗に「さて、今回僕達が来ている心霊スポットについて、饗庭さん紹介を宜しくお願いします!」と振ると、侑斗は「緊張で言葉がたどたどしくなるかと思ったけど案外緊張していないんだな。まあいいや。今回僕達が来ている心霊スポットの紹介をしよう!」と語ると、説明を行い始めた。


「今回、僕達が来ている心霊スポットは山口県宇部市にある小野湖へとやってきました。厚東川ダムのダム湖は水没した旧村名で、厚狭郡小野村にちなみ小野湖と名付けられたそうです。ここで伝わる心霊現象を説明するまでに厚東川ダムについて説明します。厚東川ダムは大規模な旱魃の被害により造られたのですが、湖は自殺の名所として知られており、この地で絶命した方と関係しているのかどうかは定かではありませんが少女の霊や上半身だけの霊、テケテケなどが目撃されているということです。特に女の子の霊は湖面に立ち手を振ってくるとされているが、見る人によっては死の世界へと手招きされているようにも見えるという。上半身だけの霊やテケテケは下半身が欠損した状態の霊のことを指すため、推測の範囲内ではありますが同じ霊ではなかろうかということです。そのほかの情報ですと、戦時中の労働者が亡くなった場所とも噂されている、先程説明した女の子の霊なのかどうかはこれもまた検証の価値があると思うが別サイトでは湖面上に立っている女の子の霊を見てしまうと取り憑かれて事故を起こしてしまうとされています。また今僕達の背後にある小野隧道では、地元の方からするとダム湖よりも有名だと話す方もいらっしゃるようで、トンネルの中央で車を停めライトを消すと霊が現れるという噂がある。この場所でエンジンを切ってしまうとエンジンがかからなくなるという事例もある。またトンネルを出た先の横道には車内で一家心中を図ったのでは?というのもある。」


侑斗が一通りの説明をし終えると、吉岡が別の情報について語り始めた。


「饗庭さんも仰っていたことですが、小野湖は入水自殺が多い事でも知られており夜に小野湖へと足を運ぶと女の子の霊が湖面に立っていて、こちらに向かって手を振ってくれるというのもあり、上半身だけの霊で夜中に湖畔をドライブしていたら物凄いスピードで車を追いかけてくる、恐らくこれがテケテケではなかろうかとされているとも説明しましたよね。小野湖の周辺には有名な化けトンが昔はあったそうですが、これは今僕達がいる460号線の小野隧道のことではなく、今は切り通しになっていて消えてしまったトンネルだという情報もありますね。後はYouTubeの赤い橋ってのも気になりますね。結構これだけ情報が豊富だと霊能者として検証のし甲斐はありますね。午前中のこの時間帯でもちょっと出てきそうな嫌な雰囲気がありますが、夜になるとさらに雰囲気は変わってくるでしょうけども僕達は社会人として遵守しなければならないルールとマナーを守って明るい時間帯での肝試しを行いたいと思います。」


吉岡が調べたことを語り終えると、侑斗は失笑しながら「俺が説明したことと重複しているじゃないか。それにトンネル今ないって!?それじゃわざわざこの付近の路肩に俺の車を停めたのも意味ないじゃん。とりあえず噂か真実か検証のためにもここでダラダラとしてないで、車に乗ってライトを消した状態でエンジンを止めた後に再発進が出来るかどうか検証をしてみよう。切り通しになったとか云々の話も噂話の一つに過ぎないんでしょ?だったらもう行こう。」と言って早々と車のところへ戻ると、吉岡は侑斗に「あっ、待ってください。早いですね!」と言いながらカメラを撮影した状態で三脚を片手に再び車に乗るとエンジンを発進させ小野隧道のほうへと入っていくと、トンネルに入って中腹のあたりでライトを消しエンジンを止めると、周りの交通の状況も確認した後にエンジンがかかるかどうかを確かめてみることにしたが、エンジンは通常通りに発進することが出来た。


助手席に座る吉岡は侑斗を撮影しながら「噂だったってことですね。ライトも消してエンジンも止めて再発進が出来るかどうか、エンジンはかかりました。また今のところ御霊の存在も確認することはできませんね。僕達が話していたちょうどトンネルの入り口の脇の部分ってのかな、草木が鬱蒼と生えていたあの箇所で微弱ですけど浮遊霊の存在を確認することは出来ましたが、トンネル内に入るとそうでもないって言いますか、まあライトがないので昼間でも車のライトが無いと気味が悪く感じる印象を持たれたからこういう噂が出回ってしまったのかもしれませんね。」と話すと、侑斗は「小野隧道はあくまでも、車でトンネルを通行する際は気をつけなさいという意味合いが込められているのかもしれない。山間とはいえ、少し行けば人家もあるわけだし、歩行者が歩けるような路側帯なども整備されていないから当然ながら歩行者が車道に出てくる危険性も考えられるって話。エンジントラブル云々の話は全国各地の化けトンでよく聞かれる話だから、恐らくここにもおまけって言ったらおかしいけど付随した可能性のほうが高い。さすがにこんな怖い道を果たして何の目的があって歩いて通るのか、それすらミステリーではあるけどな。」と笑いながら話した後に、「さてこの先のアクトビレッジおのに向けて進もうか。美味しそうなパン屋さんもあるみたいだよ。社会人祝いに買ってあげるから、ここのパン屋さんのパンで昼飯をとってから心霊スポットの検索サイトには掲載されていないが小野湖に差し掛かる小野大橋と、吉岡が言っていたググったら出てきた名前が分かんないんだけど赤い橋も気になる。小野大橋、赤い橋の順で心霊検証をした後、厚東川ダムへと行ってそれで小野湖での心霊調査を終了させようか。」と吉岡に対して提案をした後、吉岡はスマホを片手に「そうですね。そうしましょうか。次に向かう佐波川トンネルでの心霊調査はなるべく時間をかけて行いたいところですしね。今地図を調べたらパン屋さん結構人気あるみたいですよ。午前中に行かないと売れ筋の商品が即完売になってしまうほどらしくって、それでも残っている商品は美味しいみたいですよ。へえ。」と話すと、侑斗は「そんなことはどうでもいい。とりあえず休憩しよう。」といって返事をすると車を敷地内の駐車場に停めた後、パン屋さんへと向かい購入し、敷地内のベンチに腰を掛けて食べることにした。


侑斗が「菓子パンしか残ってなかったけど、でも小麦の味がしっかりしている。美味しい。人気があるのも理解できる。ってか吉岡、俺がおごるからってなんで俺は2つしか買わなかったのに、どうして3つも選ぶわけ!?」と指摘すると、吉岡は「いやどのパンも美味しそうだったから凄く迷ったんですよ~。」と言い訳を話すと、侑斗は「ったく。まあいいや。くだらないことで言い合っているのも時間の無駄だな。」と言いながら購入したパンを食べ進んでゆくと、眺める景色を見た吉岡が侑斗に「入水自殺が多いとも噂ではあったじゃないですか。ここまで小野湖の面積が広大だとここだけ入水自殺が多いとか、ピンポイントで飛び降りる場所があってもおかしくないんですけど、でも投稿されている情報を見る限りでは不特定なんですよね。」と話すと侑斗は「噂は噂でしかないからね。真偽を確かめた結果を報告するのが俺達の仕事なわけ。これだけ情報が拡散されていると、果たしてどれが真実でどれが都市伝説の類の一つにしか過ぎないのか、そのためにもここにきている。有名だから色んな情報がありふれるのは致し方がない、有名になればなるほど色んな人が思いに思った見立てを話し合ってそれがいつしか怪談として出回ってしまう。テケテケの話も、上半身だけがはっきりと見えただけに過ぎないのかもしれない。普通に考えて上半身と下半身がはっきりと分断された状態でってのはまずありえない。車だろうが列車にひかれたとしても、殺害した後に遺体を真っ二つに切断したほかないからね。意識のあるうちにそんなことをするってのはギロチンを使ったとしても被害を受けた方が想像を絶するほどの雄叫びを上げながらなんてことがもしこの世の中にあったとしたらそれはそれで恐ろしいことが起きたことになる。まだ小野隧道に行っただけにしか過ぎないけどもテケテケは違うと俺は思う。だって自殺以外、事件は起きていないでしょ。入水自殺で遺体が分断されるなんてのは遺体の体内に溜まっているガスで必ず湖面に浮き上がってくるから絶対に考えられない。」と思ったことを率直に語り始めると、吉岡は「佐波川トンネルもありますから、そろそろ行きますか。」と立ち上がり、車へと戻り、小野大橋へと向けて車を出発させた。


車が小野大橋に差し掛かった時にハンドルを握りながら侑斗は「本当に車一台しか通れないほどのスペースしかない。ここを通過するときは周りの交通の状況にも配慮しながら通過するしかないな。」と語った後、霊視検証を行いやすいように速度を落として橋の上を通過することにしたその時だった。


吉岡が「何だか、橋の欄干から俺達のほうをじっと見てきている視線を感じるんですけど、これは検証する必要性があると思いますよ。」と侑斗に切り出した。


侑斗は「俺もまさに同じことを考えていた。ちらちらと足場のないはずの欄干の下からじっと誰かが覗き込んでいるんだよね。視線がまるで”次は誰が通るんだろ?”的な感じでさ、ちょっと車を運転していても気になるところだ。この先の車が駐車できるところで駐車をしてから歩いて渡ってみよう。」と提案すると車を左の敷地内に駐車してから、徒歩で小野大橋へと向かうことにした。


歩きながら吉岡が「やはり何名かいますね。橋の下から僕達を覗き込んでいる方達が複数名。自殺の名所と言われる割には数的には少ないほうだと思いますが、やはり気になるのは笑顔で手招きをする女の子がどこで出てくるかがピンポイントの情報がないのでそれを確認するしかないですかね。」と語ると、侑斗は「ここはオレンジ色の欄干でいかにも自殺の名所でよくある血の色を彷彿させる赤い橋にも共通する点があるが、ただこの場合は街灯などの設備が整っていないためにわざと蛍光色のオレンジ色で塗っただけに過ぎず、またオレンジ色だからって自殺が多いとは限らない。しかしながらもこの小野湖で命絶った方達が多くはないが、今の時点で20名弱程いるかいないかぐらいかな。ここは若干出る程度のものでその先の赤い橋のほうが俺は信憑性が高いと思う。赤い橋は自殺の名所でよくあるし何より血の色を彷彿させるし、そもそも場所的に地図をもう一度見てほしいんだけど人家がごくわずかにある程度に過ぎないんだけど、その赤い橋のほうが俺はちょっと怖い気がする。小野大橋での視線を感じたところを重点的に撮影し終えたら、赤い橋の近くにまで行こう。」というと車を駐車させておいた場所にまで戻ってくると赤い橋の付近へと向かうことにした。


赤い橋の付近で車を駐車させると、徒歩で赤い橋のところまで辿り着くと吉岡が「さっきの小野大橋も欄干の下から覗き込まれているって感じが凄くあったけど、ここのほうがもっとすごく気配を感じますね。橋の上のほうからも、この下から覗き込まれているという感じも、こっちのほうが視線を強く感じますよ。噂にあった自殺が多かったって場所はひょっとするとここなんじゃないんですか。明らかに僕達の後を付いていくような足音が聞こえてくるし、小野大橋よりも更に怖さのレベルが上がってきているような気がしますよ。」と話すと、侑斗は「吉岡、橋の向こう側の湖面に佇んでいるの、あれ噂の女の子の霊じゃないのか?ほら、正面から見て右側のほうで女の子が笑顔で此方を見ながら手を振っているようにも見えるが、どうだろう。」と吉岡に女の子が湖面に立っていると人差し指で指し示した場所を確認させると、吉岡は言われた通りにじっと見つめると「ああ、確かにそうですね。女の子ではないような気がしますよ。身長の高さから見ても少女ではない、成人の女性じゃないんですかね。だとしたら噂はひょっとするとこの橋から見て、湖面に佇む女性を見て女の子の霊だと小っちゃく見えるから勘違いをした可能性もありますね。」と見立てると、侑斗は「やっぱりそうだよね。あれどう見ても女の子じゃない。女性だよね。噂では女の子の霊がという内容だったけども、でも仮にもし女の子の霊だったとしたら笑顔で手を振るなんてことは今までの心霊スポットで行って見た限りでは、女の子の霊が出てくるとされる場所で共通する点が、例えば事故が多いような場所で亡くなったりする場合は自分の死を理解できずにただただ”家に帰りたい”といって泣きついて来たり、或いは死んでから生前に出来なかったことや生きていたらもっとしてみたかったこと、例えば公園の滑り台やブランコに乗って遊んでいるって話があるでしょ。それはねまだまだ遊びたかったのに思いがけない形で亡くなってしまったためにもっと遊びたかったというのが心残りとして残るというのもある。いずれにしろ笑顔で手を振るなんて、注目をされたいがためにそういう振る舞いをする、アクションを起こすということは子供の霊では出来ない仕草だ。大人とみて間違いないだろう。だとしたら今俺達が見てしまったあの女性の霊というのは、恐らくだがかつてここで身投げをして亡くなられたのではと、そういう見立ても出来るな。ただこの欄干の造りからしても子供なら高さがあるから攀じ登ろうとしても足がそもそも届かない、無理と判断して大人ならば簡単に攀じ登れることが出来る。吉岡試してごらん。身長165cmの吉岡なら、女性の霊と同じ気持ちになれる。身長185cmの俺が攀じ登っても何の説得力のない映像になる。自慢じゃないけど俺と兄貴は身長が180cm以上の高身長で高学歴で高収入が自慢だからね!」と話すと、吉岡は「まあそうですよね。でもそう言っている割にはあまり次から次へと交際女性の話って正直僕が知っている限りでは最近恋とかしてないですよね?何かあったんですか?」と切り出すと侑斗は「最近ね、色々と仕事で忙しくてね、恋してねえんだよ!依頼があるからって愛が芽生えるかってか全くもってねえよ!」と強い口調で突っ込むと、吉岡は「ハハハ。最近まで北海道の心霊スポットの動画に霊能者として出演していましたよね。そりゃあ僕なんかよりも忙しいと思いますよ。色んな心霊系のTV番組や心霊系YouTuberの動画出演されたりと、週末はめまぐるしく各地へ移動したりしていますからね。遊んでいる暇などないのは当然だと思います。でも饗庭さんも饗庭さんのお兄さんもカッコいいんだから普通に彼女にして下さいとか女性の方から逆ナンされたり告られたりするってことも頻繁にあるほうじゃないんですか?それもまた違うですか?」と言って質問すると、侑斗は「俺は兄貴と違う。逆ナンして告ってきた女の子と付き合って入籍したりしない。俺はハンターだ!本気で好きになったら俺のほうから追っかけてハンティングする!ただ出会いがないから現在フリーなだけ。」と言い切ると、吉岡はただただ笑うばかりで言葉に言い表すことはしなかった。


吉岡の態度を見た侑斗は「はあ!?何それ!?とりあえず女性の霊が死のうと思ってこちらに来て欄干を攀じ登った末に小野湖に勢いよく飛び込んだことになるよな。でもその場合なら、ここで身投げをしたのはその女性だけじゃないってことになる。女性が死後にこの場で一人でいることの寂しさを紛らわすために、仲間を増やそうとして手招きをするというのは、自殺の名所あるあるの一つだが、その場合なら他にもいるはず。大体自殺の名所とされる場所には自殺防止対策が取られるはずだがここには防犯カメラのようなものもなければ、自殺防止用のネットやフェンスなども設けられていないから、あったとしても件数は知れているんじゃないかな。何だろう、人目につかないこの場所でひっそりと苦しまずに死にたいとか、そう考える人が訪れる的なところなのかもしれない。死んでもすぐに遺体を見つけてほしいのが身投げを図った目的ではなさそうだな。理由がわかったところで次、厚東川ダムへと行こう。長居は禁物だ。」と言って足早に橋の対岸へとやってくると車の置いてある場所へと戻り始めると、吉岡は「女性の霊が出たのだから、やはりここが怪しいところなんじゃないんですか。確かに衝動的に死のうと思って欄干を攀じ登って死ぬことも出来るし、ここまで分かれば何も厚東川ダムへ行く必要ってあるんですか?」と訊ねると、侑斗は「さっきも言ったことになるが、自殺防止対策が取られていない以上、仮に身投げがあったとしても件数が知れている。赤い橋だからこそ不気味な印象を持つのかもしれないが、恐らくここは夜中になってしまうと街灯も何もない暗闇になるから目印の一つとして橋の色を赤くしただけに過ぎないんじゃないかなと俺は思った。厚東川ダムを確認する必要がある。厚東川ダムのほうがもっと怪しい可能性がある。飛び込んで流れ着いたのがここでここ息絶えたという可能性も捨てきれない。噂にはなかったが何度も何度も飛び込みを行おうとしている霊もひょっとするといるかもしれない。その辺りを確認する必要がある。」と言って説明すると、吉岡は「まあ厚東川ダムも心霊スポットの一つですからね。それに明らかに駐車場じゃない場所に車を駐車していますからね。」と理解を示すと、車に乗り込み厚東川ダムへと向け出発した。


そして、厚東川ダムへと到着すると、駐車可能なスペースに車を駐車させてからまず最初に厚東川ダム水神社へと足を運び参拝を済ませてから、厚東川ダムの付近を警戒しながら霊視検証を行うことにした。


侑斗が「立入は出来ないけど、ダムの堰堤にある管理棟らしき建物に向かうまでのあの通路で強烈な視線を強く感じた。夜になればさらに人がいなくなることから見てもその時間帯を狙って立入禁止の場所に足を運んだ末に飛び込んだ可能性も捨てきれないな。今こうして俺達を仲間に企てようと誘い込もうとしているのを見て、やはりここが多くの方が身を投げた可能性も捨てきれない。駐車してきたあのスペースのフェンスからは気配は感じられなかったが、あのダムの堰堤ってのかな何人かいたよな。フェンス越しにじっと見つめる人が3人ほどいたんだよ。明らかにフェンスの裏側で足場がないところだよ。さっき俺達が女性を見た赤い橋や複数の人の視線を感じた小野大橋まで仮にもしこの地で飛び込んだ方が流れ着いた可能性は皆無に等しい。水圧で骨折してまともに泳げぬ状態でこの地に辿り着いたときに息絶えたとしたら車でここまで来るにも相当の距離があるのに、あそこまで辿り着こうというのは無理があるから、やはりセットで考える必要がある。小野大橋も、赤い橋も、そして厚東川ダムも複合的に投身自殺が起きた、だからダム湖である小野湖が心霊だと言われる経緯にも繋がったのかもしれない。そうだと分かれば、俺達のできることは亡くなられた方々に追悼の意を捧げること。完全除霊は不可能、ここで除霊をしようと思ったらあっちこっちで自殺者の霊が集まりだして最終的に俺達は囲まれてしまう事態に陥ってしまうからな。ダム湖に向かって両手を合わせ拝んでから、次の佐波川トンネルへと向かおうぜ。出来ないことは出来ないから、きっぱりと見極めをつけよう。」と吉岡に提案するとダム湖に向かって手を合わせた。その様子を見た吉岡が侑斗の横に並ぶような形でダム湖に向かって両手を合わせ追悼の意を捧げたところで小野湖での心霊検証の撮影を終了させ、次の佐波川トンネルへと向け出発することにした。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート