「それじゃあ、そこに横になっておくれ」
エレナがぽんぽんと自分の膝を叩く。促されるまま、エレナの膝に頭を預けた。頭越しに、エレナの柔らかな太ももの感触が伝わる。
見上げると、見晴らしのよい平野が広がっており、その奥でエレナが慈しむように微笑んだ。
「そうやって見上げられたら、耳かきができないじゃないか。横を向いておくれ」
言われるがままに、横を向く。見慣れたはずの机や椅子が壁に貼りついた。
ことの発端は、テルミットが読んだ本にあった。作中で意中の女性からひざ枕で耳かきをされるシーンがあり、そのあまりに幸せそうな様子から、少々羨ましくなってしまった。
いても立ってもいられず、ダメ元でエレナに頼んでみたところ、二つ返事で引き受けられてしまった。
「フフフ、綺麗な形の耳をしているね」
エレナの小さな手で頭を撫でられ、どこかむず痒くなってしまう。
言い出したのはテルミットだが、今ではエレナの方が乗り気に見える。
「それじゃあ、今から掘るからね」
「は、はい」
エレナの手が耳に触れたかと思うと、耳の中に何かが挿入されていく。
「あぁっ」
テルミットが身をよじると、挿入された物が引き抜かれた。
「そんなに動くと危ないじゃないか」
「す、すみません」
「痛かったら、正直に言ってくれてもいいんだからね?」
「はい!」
テルミットの心を落ち着かせようとしているのか、エレナが頭を撫でた。髪から伝わる手の感触も、顔に押しつけられる枕の柔らかさも、どれも気持ちいい。危うく、意識が飛びそうになる。
「それじゃあ、入れるよ」
エレナの声に現実に引き戻され、耳に意識が移る。
ゆっくりと挿入された棒が、テルミットの奥を目指してまっすぐに進む。そして、ある程度置くまで入ったところで、耳の壁に擦り付けられる。
ほじほじ。ほじほじ。
少し痛い。だが、それが気持ちいい。未知の刺激に、よだれが垂れそうになる。
「痛くないかい?」
「大丈夫です。なんだったら、もっと激しくやっても大丈夫です!」
強気な発言に、僅かに棒の動きに力が入る。
ほじほじ。ほじほじ。
テルミットの目がトロンとなる。腰の中枢に痺れるような甘美な刺激に、体中の力を吸われていく感覚。
あと少しだけ。もう少しだけ。
心の中で催促をするも、するりと引っこ抜かれた。元の状態に戻っただけだというのに、あるべき物を失ったような喪失感。
「それじゃあ、今度は逆にしようか」
エレナが反対側を向くように促した。
テルミットが寝返りの要領で反対を向くと、すぐ目の前にはエレナの下腹部がある。行為に及んだときは正々堂々と入り口から入ったが、内部を知っている今では服越しに見ただけでその奥が容易に想像できてしまう。
そして、その裏に手を伸ばせば、黄金比のカーブを描くくびれや、小ぶりながらも女性としての機能を十全に備えたお尻がある。
想像しただけで、身体が熱くなってきた。
「どうかしたのかい?」
テルミットの変化に気づいたエレナが、目ざとく尋ねた。
「いえ、その、絶景だなぁ、と思いまして」
「? 何も見えないと思うけど」
訝しむエレナに愛想笑いをすると、耳を差し出して耳かきを促した。
ほじほじ。ほじほじ。
「……っ!」
危うく漏れそうになる声を、必死に押し殺す。
「あ、動かないでおくれ」
口元を抑えていたためか、無意識に身体が動いてしまったらしい。
エレナがテルミットの頭にそっと手を置いた。全身の力が抜けていく。
エレナに触れられて、耳かきをされているだけだというのに、どういうわけか安心感を覚えてしまう。
以前にも、こんなことがあったような。
睡魔に飲み込まれそうになったところで、耳かき棒が抜かれた。
まだ余韻が残っているのか、触れられたところに熱が残っている。
「お疲れ様。今日はこれで終わりだよ」
「ありがとうございました」
テルミットが起き上がろうとしたところで、違和感。身体に力を入れようとしても、なかなか力が入らない。
「どうかしたのかい?」
「す、すみません。腰が抜けてしまって、しばらくは立てそうにありません……」
「満足してもらえたようで何よりだよ。……でも、興奮してしまったのなら、ちゃんと正直に言ってくれていいんだからね?」
そう言うと、マヌケに直立したテルミットのそれを指で軽く弾いた。
腰が抜けるだけでなく、大きくしてしまって、しかもそれがエレナにバレるだなんて。
穴があったら入りたい気分だ。
真っ赤になった顔を隠すように、そっとエレナの太ももに顔を埋めた。
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