殺したいほど憎いのに、好きになりそう

「いじめっ子×美少女おじさん」
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

公開日時: 2025年4月14日(月) 14:00
文字数:1,489


 大好きな”ギャンプラ”の話で、鬼塚のあとをついていくことになった。

 まさか、こいつの家へ遊びに行くなんて考えられなかった。

 でも……昔、前世でいじめられる前に、何回かこいつと遊んだ記憶があるような……。


 ~前世での1993年頃~


 確か、小学校の5年生になってクラス替えをしたころ。

 鬼塚という少年に出会い、最初のころは俺に興味を持ったらしく。

 何回か、俺の家に「遊びに行ってもいいか?」と言われて、嬉しかったけど。


 いざ自宅に招くと態度が変わって……。

 

「水巻ん家ってさ。金持ちなの?」

「え? ごく普通の家庭だと思うけど」

「ふ~ん、この家が普通ね……」

「どういうこと?」

「お前には、分からないことだよ」


 それから、俺のゲームソフトや大切にしていたプラモデルも壊すし。

 母さんが気を利かして出してくれたお菓子も食べずに捨てる……本当に失礼なやつだと思った。

 その後も鬼塚は、何度か俺の家へ遊びに来たけど。

 終始、機嫌が悪く。部屋にあるゲームを片っ端から遊びまくって、おまけに部屋を荒らして帰ったけ。


 正直あいつが何を考えているのか、わからなかった。

 気がついたら、学校で俺を殴り始めて、何もしてないのにしょっちゅう股間を蹴られる。

 私物は全部、トイレの便器に捨てられる……など、陰湿ないじめを繰り返す。

 一体、俺が何をしたってんだ?



 あ~ 思い出したら、イライラしてきた。

 長い髪をグシャグシャにかき回していると、前を歩いていた鬼塚が驚く。


「み、水巻? どうかしたのか?」

「いや……別に」


 目の前にいるお前がやったんだぜ? と言っても、この世界じゃ別人みたいなものだからな。


「あ、あれが俺ん家だよ」


 そう言って彼が指差した方向には、赤レンガ調のタイルで作られたマンションが並んでいた。

 5階建てのマンションが4棟。

 先ほどの模型店から歩いて数分。JRの踏切を渡ったところにすぐある。

 

 てことは、俺の家からかなり近いな。

 踏切を渡って左手に進めば、すぐだから。

 知らなかった。鬼塚の住むマンションがこんな近くだったとは……。


  ※


 彼に案内されるまま、黙ってついていく。

 このマンションは管理人がいるけど、エレベーターは無いようだ。

 鬼塚が住んでいるのは、最上階の5階。

 膝が疲れる……。


 5階に着くと、左右に二つの扉があったが、右手にある扉は開けられたまま。

 無防備だな。

 すると、中から幼い少年が出て来た。


「お兄ちゃん! お帰り!」


 そう言って鬼塚に抱きつく少年。

 誰だ、この子?

 鬼塚に弟なんて、いたっけ? ダメだ。思い出せん。

 

「おう、ただいま。”翔平しょうへい” 模型屋でインク買ってきたから、また塗装してやるよ」

「本当? お兄ちゃん、大好き!」


 と鬼塚の胸に自身の顔を埋める少年。

 兄貴と違って、素直で可愛らしいな。肌も白いし、頭はお坊ちゃまカット。

 取り残された俺は、ひとりでボーッと二人を眺める。

 すると、翔平と呼ばれた少年が俺に気がつく。


「あ、この人。誰?」

「そうだった……この人はお兄ちゃんのクラスメイトで、水巻さんだ」


 急に名前を呼ばれてビックリしたから、緊張してしまう。


「え、えっと……水巻 藍って言います。よろしくね」

「そっか! じゃあ、藍お姉ちゃんだねぇ。お姉ちゃんはギャンプラ好き?」


 別に鬼塚の弟とか、全然興味ないし。むしろ、前世の恨みをこの子で晴らしてやりたいぐらいだが……。

 身体は正直なもので、つい反応してしまう。


「好き! めっちゃ好き! 翔平くんはシリーズならどの世代?」

「え? ギャンダムならどれも好きだよ」

「違うって、私が言いたいのは、地球軍派か宇宙軍派ってことだよ!」

「えぇ~ よくわかんない」


 どうやらこの子には、俺の持っている全知識を叩きこんでやる必要があるな。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート