殺したいほど憎いのに、好きになりそう

「いじめっ子×美少女おじさん」
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

ギャップ萌え

公開日時: 2025年5月19日(月) 14:00
文字数:1,520


「いやぁ~ 気持ち良い! な? ここのショーは、一番前の席に限るだろ」


 そう言って、俺に微笑む鬼塚。だが、いつもと雰囲気が違う。

 あ、ずぶ濡れになって、前髪が全部下りているからだ……。

 いつもツンツン頭だから気がつかなかった。

 こいつ、男のくせして小顔だし、目も大きいから前髪を下ろすだけで可愛く見えてしまう。


「聞いているか? 水巻」

「え……? あ、うんうん」


 声をかけられて、慌てて視線を下ろすと。偶然、彼の胸元に目が行く。

 白いタンクトップはびしょ濡れで、中が透けて見える。

 つまり、鬼塚の小さな”つぼみ”が丸見えな状態。


 それを見た俺は思わず、生唾を飲み込む。

 前世ではいじめられていたから、憎くて仕方なった。

 だから、こいつの顔を思い出すと殺意しかわかなかったのに……。

 女体化したせいか、鬼塚の幼い身体を見ると胸を打つ音が激しくなってしまう。


 それにしても、なんて可愛らしいつぼみなんだ。

 小麦色に焼けた肌とは違い、ピンク色で美しい。

 美少女であるこの藍ちゃんでも、負けてしまう気が……。


 しばらく、俺が鬼塚の身体へ釘付けになっていると、彼が突然怒り始めた。


「おいっ! 水巻、お前早く身体を隠せよ! ほ、他の奴らが見ているぞ!」


 と顔を真っ赤にして、俺の胸元を指差す。

 彼がなぜこんなに怒っているのか理解できない。


「なんのこと?」

「み、水巻の胸が……透けているっことだよっ!」


 そう言われて、ようやく自身の胸元に視線を下ろすと。

 確かに彼の言う通り、ふくよかな胸の谷間が丸見えだった。

 急いでカーディガンを着て隠してみたが……どうやら、もう遅かったようだ。


 周りにいた観客は、みんな俺の胸に釘付け。

 中には、ビデオカメラで撮影するお父さんまで……。


「水巻、こっちに来い!」

「うん……」


 俺って、ちょっと隙がありすぎる女子なのかな?


  ※


 鬼塚に連れられて、一階まで逃げて来た。

 いくらカーディガンで隠しているとはいえ、中のワンピースはまだ濡れている。

 「ハンカチで、身体を拭きたいから」と鬼塚に説明して、女子トイレに逃げて来た。


 なぜ逃げたかと言うと、胸の高鳴りが治まらないからだ……。

 この藍という少女はまだ幼いのに、身体はもう大人。と言っても過言ではない。

 痩せているのに、胸だけはちゃんと発達してる。

 彼女の胸が大きすぎるせいか、心臓の音がすごくうるさい。


 女子トイレに設置してある鏡を見ながら、濡れた胸元をハンカチで拭う。

 鏡に映っているのは、自身の胸なのに。先ほど目に入った彼の小さな蕾が忘れられない。


 俺は一体、なにを考えているんだ?

 あんな奴の身体なんてどうでも良いはずなのに……。なんで繰り返し、頭の中で思い出しているんだ?

 ふと、鏡に映る自分の顔を見つめてみると、真っ赤だ。


「クソ……こんな顔じゃ、しばらくトイレから出られないよ」


 このあと、顔の色が正常に戻るまで30分もかかってしまった。



 トイレから出てくると、廊下でボーッと天井を眺める少年を見つけた。

 鬼塚だ。濡れていたタンクトップは、どうやらもう乾いているようだ。

 これで俺も理性を保てる。


「あ、ごめん。鬼塚、トイレが混んでいて……」


 俺が声をかけると、彼は「別に構わない」とそのままレストランへ行くことになった。

 ずっと気になっていたのだが、それは鬼塚が背負っているナップサックのこと。

 たぶん、小学校の授業で作った手作りの物だろう。


「ねぇ、そのナップサック。何が入ってんの?」

「あ、これか? 今日のお昼ご飯だよ」

「お昼ご飯……? レストランに来たから、そこで注文するんじゃないの?」

「はぁ!? そんなもの高いに決まってんだろ! だから俺が弁当を作って来たんだ。ちゃんと水筒とお菓子も持ってきたしな」

「……」


 小学校の遠足かよ? というか、お前は俺のお母さんじゃないだろう。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート