殺したいほど憎いのに、好きになりそう

「いじめっ子×美少女おじさん」
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

聖人君子

公開日時: 2025年3月31日(月) 14:00
文字数:1,238


 ビデオ店でエロビデオをレンタルしている男子を見て、一気に冷めてしまった。

 巨乳ものだったし、チラっとしか見えなかったけど。

 たぶん、今の俺。水巻 藍に似た幼い顔の女優を選んでたもんなぁ。

 色々としんどい……。


 仕方ないので、駅前をブラブラと歩くことに。

 1995年の真島駅……じゃなかった筑前真島駅は汚いなぁ。

 タクシー乗り場が無くて無法地帯だから、車でいっぱい。

 下手したら、接触事故を起こしそう。

 当時は普通に歩いたものだが。


 駅を通り過ぎると、すぐに目にしたのはゲームセンター。

 そして店の前でたむろする”チーマー”達。

 まだ顔は幼いので、ひょっとしたら中学生も混ざっているのかな?

 タバコを吸いながらスケボーで遊んでいる。


「ギャハハハ! 下手だっぺ、お前」

「俺まだ、始めたばっかだっぺ!」


 うへぇ……治安悪いな、この辺りは。

 ちょっと、駅周辺はやめておこうっと。


  ※


 元々が陰キャのひきこもりだから、本屋へ入ることにした。

 前世じゃ個人経営の本屋は潰れまくったけど、この時代ならまだたくさんある。

 ゲームも一緒に販売している大きな本屋だ。

 名前は確か、”A2エーツー”だったけ?


 自動ドアが開くと、まっすぐに雑誌コーナーへ向かう。

 昔のくせで、グラビア雑誌のコーナーへ来てしまった……。

 表紙になってるアイドルが懐かしすぎる。

 ”ヒナカタ・アキコ”だもんなぁ。

 若っ! よくお世話になったから、買っちゃおうかな?


 気になったので、そのグラビア雑誌を手に取り、立ち読みしてしまう。

 この時代ではグラビアアイドルやっていても、後に有名な歌手や女優になるタレントが何人もいる。

 ってことは、これ買って綺麗に保管してたらプレミアつくかな?


 黙ってグラドルの水着姿を見ていると、近くにいた人々の様子がおかしい。

 こちらを見てヒソヒソと小声で何かを話している。

 あ、ヤベッ……今は女の子だった。


 恥ずかしくなった俺は、すぐにグラビアコーナーから退散する。

 すると、マンガ雑誌のコーナーに見覚えのある姿が目に入った。

 ツンツン頭の小柄な少年。ショートパンツにタンクトップを着ている。

 いつも制服姿だから気がつかなったけど。本当に全身の肌が焼けているんだな。

 それか、生まれつきの地黒とか?


 あ! わかったぞ!

 こいつもさっきのビデオ店で見た男子生徒と一緒で、夜のおかずを買いに来たんだな。

 よし、何を買うか後をつけてやろう。

 それでレジ前に立った時、わざと声をかけてやろう。鬼塚の黒歴史になるだろう。


 ~5分後~


 さっきからずっと鬼塚のやつを見張っているが、おかずらしいものは手にしていない。

 彼が立ち読みしている本は、『月刊 バスケ』スポーツ雑誌だ。

 わかった。こっちはフェイクで後からスケベな本を下に隠して買うんだろ? 常套手段じょうとうしゅだんさ。


 しかし、俺の予想を裏切り、鬼塚はそのまま雑誌を閉じてレジへ向かう。

 ちゃんとお金も払うし、なんだったら、お店の人に頭を下げていた。


 クソがぁ! なんで買わないんだよっ!

 男なら買うだろ、普通!

 前世じゃ俺のことを虫のように扱ってたくせに。

 聖人君子か、てめぇは!?

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