完結済 短編 現代世界 / その他

『猫岳』ニュース

公開日時:2022年3月5日(土) 00:54更新日時:2022年3月5日(土) 00:54
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予告編1 2021年8月6日(金曜日)公開作品上映前分



「これで、何もかも終わったんですね深見さん」

「はい、桜子さん。もう全て終わりました」

「深見さん、あたし怖い…」

「もう大丈夫ですよ」

「深見さん…」

「…いつでも戻ってきます」

「待ってます」


男のナレーション :〈犬掻き湖の惨劇から三年…〉

山あいの暗い湖が映る。


都会の小さなビル。ガラスに深見探偵事務所の文字が入ったドアが開けられる。


「春彦!いるか春彦!」

「あ、順一伯父さん」

「小石川さんが行方不明らしい!」


「僕は一体何を間違えたんだ」


「祟りや!猫清の祟りやー!」


2022年2月公開!『猫岳村』!


   ◇   ◇


Moonlight劇場出入口前ホール

「『君の笑顔は百万ボルト』良かったねー」

「あたしめちゃ泣いたわ~」

「あー私もー」

「レイトでもいっぱいおったね」

「うん。初日やからやろね」

「予告のやつビックリせんだ?」

「したー、もう。全然知らんだわー」

「高3の夏休みに『犬掻き』見に行ったよね~」

「凄かったよねー」

「続きある思わんだわ~」

「私もー」

「今度のが冬やって~」

「ねー」




予告編2 2021年12月17日(金曜日) レザレクションズ上映前


例の湖のそば。

「深見さん…」「待ってます…」

ちょっと不安げに微笑む、ヒロイン桜子。


田んぼの道の真ん中にいたおばば。

「あんたけ?東京から来たいう探偵ちゃ?」


意地悪そうなおじじ。

「こんなとこにわざわざ来てからに」


順一伯父。

「春彦、本当に残念だったとしか…」


助手。

「先生、もう僕たちに出来ることなんて無いですよ!」


深見。

「どうして。全部終わったはずだったのに。どうして…」


おばば。

「祟りや。小石川のもんどもら祟られて当然やちゃ!」


警部さん。

「深見さん!にゃんこや!猫だらけや!」


懲りない深見。

「僕は最後まで、必ず…!」


火事の中、助手…。

「先生、早く逃げて!」


猫。

「ニャーッ!!」


警部。

「ヒーッ!ギャー!」



   ◇   ◇


CinemaTRONのホール

「まあ、取り敢えず観たな」

「おー。昔のキアヌ若かったのー」

「おう、あんなんやったな」

「つか、『猫岳』ヤバくね?」

「頭離れんだな」

「アッハッハ。そうそう」

「桜子、死んだん?」

「微妙やったの」

「警部アウトやろ」

「ひでーの」

「おばば怖かったの」

「おー、猫も」

「『犬掻き』超えるやろ」

「どうかの~」

「全世界公開やぞ」

「強気やの」

「観に行くんやろ」

「行くわい」

「マック行くやろ」

「行くわい」






2022年2月13日(日曜日)

CinemaTRON 舞台挨拶


司会(女)「皆さんこんにちはー!本日は『猫岳村』超大ヒット御礼舞台挨拶にお越しいただきありがとうございます!」

前崎「ありがとうございます!」

キャー!亮カッコいいー!春彦ー!

前崎「アハハハハ。ありがとうー!」

磯村「ありがとうございます」

あすかー!かわいいー!桜子ー!

磯村「フフフフ」

月野「『猫岳村』観てくれてありがとうございまーす!」

しずくちゃーん!かわいいー!

月野「!ありがとうございます!」

磯村「ジロリ」

司会「ははは。監督どうですか~。なんと公開3日で世界興行収入100億ですよ!」

監督「いや凄いっすね。怖いくらいです。これ祟られてないですよね?」

助手役「ははははは」

順一役「ははははは」

警部役「ははははは」

司会「主演の前崎亮さん。どうですか、この作品」

前崎「はい!間違いなく僕の代表作になります!」

キャー!カッコいいー!

司会「月野しずくさん、今回が映画初めてということでしたがどうでした~」

月野「はい!あの…」

ワー!しずくー!

月野「アハハハ。ありがとうー。はい、皆さん優しくて、とても楽しめました。あ、映画は物凄く怖いです!」

磯村「……」

司会「私も見させていただきましたが、なんとも怖すぎ。恐い。余りの恐怖に何人か失神者も出たとかで…監督怖すぎですよ!」

監督「いや~。そうですね~やっぱり『犬掻き湖』観てからの方が良いかもしれないですね。ね、あすかちゃん」

磯村「え、あ、はい。…」

司会「もう、いややわー。ちゃっかり宣伝してますねー監督!ウォーミングアップ的に『犬掻き湖』なんてー」

監督「え!いやそんな…」

磯村「ウォーミング……わなわな」

司会「監督、今回はアクションも相当なモノだとかで!」

監督「いやー、実はそうなんですよ!アクション指導の方が素晴らしくてね。いつの間にかアクション要素も盛り沢山となっちゃって!ハッハッハッハッ!」

前崎「ホント、実際撮影もアクション映画なの?って言うくらい凄くて、いやもっと厳しかったかもしんないですね」

司会「そうですか~。クレジットでは“ACTION…U.OKUGAWA”とだけ出ていますね。これは月野さんに関係あるといううわさの“オクガワ”さんの事なんじゃないですか?」

監督「えっ!君ちょっと、何の話してんの?ちょっと困るよ!」

司会「いえいえ、突然現れた謎だらけのスーパーアイドルの事を皆知りたがってるんですよ~。異常なくらいにガードの固い撮影だったって言うじゃないですか~」

監督「いや、そんなの当然だよ。どんな作品だって誰だって世に出すまでは大切に大切にだね…」 

司会「またまた~。もっと裏話下さいよ~」

前崎「さっきから何だあなた!」

監督「おいっ、誰かッ!」

 ザワザワ、ザワザワ。

磯村「彼女の事で一つだけ分かってる事があります」

監督「おっ、おいっ!磯村君!」

前崎「あすかっ!」

磯村「もうっ。下の名前で呼んじゃダメじゃない」

前崎「あっ、ご、ごめん。へへ」

 えー、ウソーっ!やだー!やっぱりー!

監督「はぁ~。やれやれ」

磯村「んんっ。えー、彼女の事で一つ言えるのは、彼女の演技は本物だってこと。そうでしょ監督?」

監督「フフ、そうだね。オーディションで月野を見た時ね、テレビで君を見つけた時の衝撃を思い出したよ、磯村」

磯村「あ、ありがとう、ございます。そんな話、初めて聞きました」

監督「当たり前だ。言うわけ無いだろ」

前崎「本人にはね。僕らは何度も聞かされてきたよ『凄い奴を見つけたぞーっ』って」

監督「おいっ、全く。まあ、とにかくお前さんは良い俳優になったってことで、俺の目は間違いなかったってことだな!フンッ!」

前崎「結局、自画自賛ってか。監督ってやつは皆こうだから」

 ハッハッハッハッ。ワハハハハ。

監督「えーっと、まあ、脱線しちゃったけど、あれですわ。月野とOKUGAWAに関しては、ゲスい話では無いです。全くです」

前崎「えっ、監督…」

監督「いや、もう面倒だし。それにOKUGAWAさんには感謝しかないしね」

前崎「まあそうですね。フフフ」

磯村「しずくさん。良かったわね」

月野しずく「はい。あすかさんありがとうございます。ペコリ」

監督「いーねー」

前崎「いや、監督。アンタもうただのファンだろ。二人の」

監督「バレた?」

前崎「やれやれ」

 アハハハハハ。

女司会「ハァー?そんないい話なんか聞きたくねーっつーの!こいつのスキャンダラスなの言えっつってんだよ!」

月野「きゃあっ!」

監督「なっ!おいっ、警備!」

前崎「あっ!監督、思い出しましたよ!去年麻薬所持とかで引退に追い込まれた女ですよ!」

監督「ああ、俺も気付いたよ」

磯村「しずくさん、大丈夫?」

月野「はい。なんとか」

女司会「いてぇー」

監督「何を痛がってんだ。人の事襲っておいて」



総合司会「いやいや~、それでは気を取り直して、特別出演した TAKA&YUJI のお二人でーす」

TAKA「僕が犯人です」

YUJI「んなわけねーだろ」

TAKA「猫清です」

YUJI「南米か!」

ワッ、ゲラゲラゲラゲラ…





 店舗前の駐車場の隅っこに自転車を止める。自転車のカゴからバッグを取り出して、何年かぶりの自動ドアを進む。

「あらっ?さっちゃん久しぶりやねー」

 覚えててくれたんだ。何だか安心した。

「は、はい。またおねがいします」

「あははは。相変わらず丁寧ね~。はいこっち座って。カバンこの中に入れられ」

 三つ並んだシートの真ん中に座る。

「今日どんなんにしとく?」

「え、えーと、短くしてください」

「短めに揃えとくん?」

「いえ、このくらい」

 左手を首の後ろの方に持っていく。

「え!こんなん短くするが?本当に!あら~」

「はい」

「ん~、どんな感じのやつにしたいとかある?」

 私はポケットに入れていたスマホを取り出す。電源を入れたらすぐにフォトアプリが開いていた。準備しておいた。

「こ、この人みたいに…」

 うう、顔が赤くなる。

「んーと。この、端っこの子?」

 昨日、アウトレットで皆さんと記念に撮った写真。

「ちょっと小さいな~」

 う、やっぱりもう一つの写真を見せなくてはいけない。

「こ、こんな感じ…」

「これなら分かるわ~。でも、この子きれいな顔しとるね~」

「はい…」

 これは、近くから撮ってしまった写真。

 チョキ、チョキ。 

 やっぱり髪の毛が落ちていくのを鏡で見てると、少し胸がキュッとなった。

 でもそれ以上に新しい髪型にワクワクした。


「はい。良いのになったわ~。さっちゃんはどんながにしても可愛いらしいわ」

「ありがとうございました」

「ちょっと休んでいかれ」

「はい」

 お金を払ってからレジの前にあるソファで出してもらった紅茶を飲んでた。

「テレビでもつけようか」

 月野しずくちゃんだ。

「あら『猫岳村』や。ヒットしとるんやとね。あそこでロケやったんやとね。芸能人来とったなんて全然分からんもんやね。来とる時に言うてくれんとね~」

「はい」

 しずくちゃんが来てたなんて!

「あら失神した人おると。危ないね~」

 紅茶を吹き出すところだった。

「新聞にも出とったやつやわ。金曜日の日、イオンの映画館で気分悪くなった人おったって。あーと、ほらこれこれ」

 家にあるのと違う新聞がテーブルの前に広げられた。

「写真も載っとるわ」

 《『猫岳村』ヤバすぎ!》という大きな見出しが目に入った。

 人だかりがした映画館の前が写っていた。

 そこに向かって走る女の子が写真の端に入り込んでいた。

「あら、これさっちゃんみたくないけ?」

「違います」

「そう…」

「はい」


(お母さん。かわいそう)


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