痛い。
喰らえ、気持ちいい。
痛い、痛い、喰え、もっと、痛い、治す、痛い、食べたい。
断線しかけのコードに電気を流したみたいに、バチバチとスパークが脳内を駆け巡る。
外からの受信と内からの発信が入り乱れて、宙に浮いているみたいに意識がフワフワする。
何も見えない、聞こえない。皮膚を境に外部との感覚的な接点を一切無くしたとしたら、こんな感じなのだろうか。
しばらくその浮遊感に身を任せていると、混然一体となったその信号群が秩序を取り戻していく。
痛い。身体の欠損発生。
治す。捕食済のリソース解放。
喰え。リソースの補充要求。
徐々に思い出す。
そうだ、オレはしくじって城崎の攻撃を受けてしまった。
触れただけで何でも消し飛ばすトンデモ能力だ。つまりオレは死んだのだろう。
しかしそうなると、今なお感じるこの痛みは何だ。
意識が明滅していたさっき程じゃないけれど、右肩の辺りがジンジンと焼けるように痛い。
痛むということは生きているということ。
オレは、まだ死んでいないのか。
ならこの暗闇は何だ。
すぐ近くにいるはずの城崎はどこにいる。
そう意識したとき、前方に光の塊が滲み出てきた。
光が生まれたことで、この暗闇に距離と位置が定義された。
「捕食」で抜き取った病魔の力のようなソレに、オレは惹きつけられる。
どういう仕組みか、光の源には手を伸ばすだけですぅっと近づけた。
その光は触れると暖かく、また何とも言えぬ良い香りがして、食べたら美味いに違いないと感じた。
バレーボール大の光球を両手で掴んでかぶりつこうとしたところで、オレははたと気付く。
その手が黒い炎に包まれていることに。
そして、掴んでいる光球がずぶ濡れの子猫のように震えていることに。
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