(9)
娘はこたつの中で眠っている。恐らく今日一日はしゃぎすぎたのだろう。明日から寒気が来ると先程見ていたニュースで気象予報士が伝えていた。
朝の出勤が辛くなりそうだ。
時計を見ると夜の八時を過ぎている。妻はまだ帰らない。余程居心地がいいのだろう。
僕はパソコンの前に立ち、文章を打ちこんでゆく。
これは手紙だ。
宛先人はK。
性別も分からぬ指輪の持ち主へ、僕は手紙を書く。
『K氏へ
あなたがこの手紙を拾えば、全てが明るみになったのだという意味を知るでしょう。
あなたは自首すべきです。そして亡くなったあの幼子の魂に悔い改めて、これからを償いで生きなければなりません。
すべては幼き名探偵が知っています』
もしこの手紙がKへ渡れば何かが起こるかもしれない。
僕はそれを紙に印刷すると指輪と一緒に同封して、娘の幼稚園のバッグにいれた。
勿論、その作業は手袋をして指紋が付着しないように。
娘の寝言が聞こえる。
「パパ、明日…、頑張るぅ…」
僕はそれに満足するように笑った。
明日、娘はKが恐れおののく名探偵になるだろう。
僕は言った。
「明日、幼稚園に行ったら誰にも分からぬようにパパがバックに入れた便箋を跳び箱の所に置いてね。誰にも分からないようにだよ」
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