完結済 短編 現代世界 / ホラー

山の中の廃屋 ~返してよ、それ、

公開日時:2022年12月6日(火) 08:38更新日時:2022年12月6日(火) 08:38
話数:1文字数:5,845
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これは俺が高校三年の秋の出来事だ。

 俺には仲のいい友達が三人いたんだ。仮に彼らをA,B,Cとしよう。

 Aはしっかり者で俺たちのグルーブの中の中のリーダー的存在だったんだ。兄貴肌で人情もある。でも少し強引なところがあって、なおかつ力も強いので周りからは少し恐れられていたように感じる。

 Bはかなりの怖がり。前に心霊ものの番組を見た時にはひとりでトイレに行けなくなったほどだ。

 その時寝てから、Bに起こされてトイレに行きたいからついてくるように言われたがめんどくさいので断ったら翌日そいつ失禁してやがった。その時Cもいてそっちにも声をかけたみたいなんだがそちらにも断られたみたいだ。今思い出しても笑える。

 Cはこの中でも一番のお調子者。

 いつも何かしら面白いことをやってみんなを笑わせていたな。

そんな調子で大体このメンバーの中で行動することが多かったんだ。



そんなある日、Bがそれはもう、うっきうきな顔で〇県にある古い廃屋に行ってみないかと俺に言っていた。そこは結構有名な心霊スポットで近くで聞いてたBは当然顔を青くしていやがるんだがAも結構乗り気で行くことになってしまった。

この時俺は嫌な予感しかしなかったよ。だってそうだろう?あんな噂のあるところに行こうなんて正気じゃないぜ。

しかも出発日時が次の日曜日ってふざけてるのかと思ったね。だけどまあ、あいつらのことだから絶対に行くだろうと半ば諦めてもいたさ。そんなわけで俺も三人と一緒にその心霊スポットに行くことになった。行きはAの運転だった。

いつまでもびくびくしているBの様子も気にせずCはその廃屋の曰くについて話し始めた。

なんでもその廃屋は100年以上も前に建てられたもので当時は金持ちの屋敷だったらしい。そしてそこにはある女が住んでいたそうだ。女はある男と恋に落ちたがその男は浮気性で結局最後は女を捨ててほかの女と結婚したという。女はそれを知って自殺し屋敷は無人となった。それからというものそこに住んだ者は不幸に見舞われるとかなんとか……

正直俺はこの時点で帰りたかったのだが、小心者だと思われたくなかった。Bはすでに泣きそうな顔をしていた。

助手席に座っていたCはAに道を指示をしながら、さらに話をつづけた。

「それであの廃屋からは女のすすり泣く声が聞こえたり、

人の気配を感じたりするっていうんだよ」

ここまできて俺もだんだん怖くなってきた。ワクワクといったような表情を隠さないCが不気味に思えたほどだ。

「おい!ちょっと待ってくれよ。じゃあその女はまだそこにいるかもしれないじゃないか!」

Bは震えながら言った。

「大丈夫だよ。ほら、俺たち幽霊とか見えない体質だから」

Cがおどけた。

こいつは本当に空気が読めない奴だと思う。

そしてとうとうその例の廃屋に着いてしまった。

車は山の中腹あたりにあった。道の脇には木が何本もあり見通しはあまりよくない。車を止めて外に出てみると風が強く吹き木々がざわめいているのがわかった。

「おい、ここヤバいんじゃないか?」

俺は少しびくつきながら言った。

情けない話、その廃屋にはいかにもな雰囲気があった。今は夜であたりには該当もない山道だ。当然暗かったのだが、廃屋の周りはさらにその闇が一層深まってるように見えて、雰囲気もかなり重く感じた。俺は霊感なんてないはずなんだがそれでもここはやばいってひとめで分かった。

「よし、やっと着いたな、早くいくぞB!!」

「やめておさないでよぉ」

すでにBは半泣き状態だ。

「俺らもいくぞ」


俺はAに続いて


歩き始めた。前ではBがまだ嫌がっていたがAが無理やり連れていくことにした。

「ったく、いつまでビビってんだよ」

Bたちをおいこして先頭を歩くAはそんなことをぶつくさ言いながらもずんずん進んでいく。俺たちもそれに続いた。

しばらく進むと目の前に古ぼけてボロボロになった門が現れた。その先にある建物が問題の廃屋だ。

Aはさらに足を進めていき俺たちもそれに続き廃屋へと近づいていった。

そこで俺たちはとんでもないものを目にする。

なんと、門の前には人影があったのだ。

着物を着た女性がこちらを向いて立っていた。と思ったら、すうっと消えていった。

俺は初めて幽霊をまのあたりにして思わず歩みを止めた。それに気が付いたAが

「どうしたんだ・・・?」

と不思議そうにする。

「どうっしたじゃないだろ!!今、女の幽霊があそこに立ってたんだ!」

俺は慌ててAたちに説明したが、

「何言ってんだお前?誰もいなかったぞそれに、まだ廃屋にも入ってねえだろ!!ビビってんのか!!」

と一蹴されてしまった。

「何々、俺にはなにもわからなかったけどなぁ~、あっ、もしかして怖いの?」

と馬鹿にしたように言ってきたので少しムカッとした。こういうやつだってわかってたんだけどな。誰も俺が見た幽霊は見なかったらしい。釈然としなかったが、言い合うのも馬鹿らしくなったので俺はそれ以上なにも言わずに再び歩き出した。

廃屋の前に立つと、さっきよりも不気味な気が漂っているような気がしてならなかった。

「よし!それじゃあ入るぞ」

と言ってAがドアノブに手をかける。

「まてよ!ちょっと待てよ!鍵かかってるんじゃないのか!?」

俺はAを引き留めようとした。

「うっせえな。かかってたら壊せばいいだろ!」

確かにドアは木製で雨風に野ざらしだったので朽ち果てていて力があるAじゃなくても簡単に壊せそうな感じだった。

「もう怖いからやめようよ」

Bが泣きべそをかき始める。

しかしAは無視して扉を開いた。すると、ぎぃいいーという音を立てて扉が開いた。

中から冷たい風が吹いてくる。

「うわあああ、やっぱやめよ、かえろーよ」

Bはもう限界といった様子で今にも倒れてしまいそうだ。

「大丈夫だって、ほら行くぞ」

そういってAはさっさと中に入っていった。

俺たちも続いて入った。

建物の中に入るとそこは外から見た通りボロボロで、床は腐っていて穴が開いているところもあった。壁にはツタが巻き付いており、ひとめで人が住んでいるとは思えない有様だ。

「おい、これ見てみろよ」

そういってAが指さしたところに目を向けると、そこには大量の血痕らしきものが落ちていた。

不気味すぎて笑えねーよ。Cがよこですげーすげーとか言ってるけど。

その跡は奥の部屋まで続いていた。一通り探索し終えたがめぼしいものがなく、Cは少し不満げだった。

Aもしらけた様子で、

「これ以上は何も出てこねーだろ」

と言ったのですでに買える雰囲気だった。

部屋を引き返していると

「なにあれ……」

Bがつぶやく。

そこには頑丈そうな扉があった。位置的にはこの建物の入り口の真反対だ。

「おい、こんなところに部屋なんてあったか?」

俺は疑問を口にした。最初に入った時にはそんな扉見かけなかったように思う。

「いや、少なくとも俺は知らないな」

Aも首を横に振った。

「入ってみようぜ!!」

ワクワクしながらCが言った。

「やめとこうよぉ」

Bは泣きながら訴えたが結局押し切られてしまった。

そしてその部屋の扉を開ける。

ギィーっと音がして開くと目の前には大きな祭壇のようなものが見えた。

「なんだよ、ここ」

古い廃屋でほかの部分はかなり老朽化していたのにその部屋だけは異様にきれいだった。大型のお雛様人形の台のようにだんだんになっていて、不気味な人形やらぬいぐるみが置かれている。懐中電灯を向けると鮮やかな赤い布がしいてある。その横には床から生えているのか紫色っぽい植物が生えており、なんとも言えない不気味さを醸し出している。

「なんだよ、何もねえじゃん」

つまらなさそうに言うA。

「なんだ?あの箱」

cが指さしたのはそのだんだんになっている頂点。そこにはテディベアのぬいぐるみがすわるように置かれていたのだがその足の間に小さな市松模様のわしが張られた箱があった。

「せっかくだから開けてみようぜ!!」


「やめたほうがいいよ」

Bは必死に開けようとするCを止めるが、

「大丈夫だって!何か宝でも入ってるかもしんねえだろ?」

と聞く耳を持たない。Aもそれを見て止めようとしない。

「ちょっと!!さすがにやめろって!!」

俺が叫ぶと、背筋に冷たいものを感じて思わず止めるが。

「うっせえ、俺は絶対この箱を開けるんだ」

と言って箱を放さない。その様子にその様子に俺らはなぜだか焦りを感じた。

Cはもう半分くらい箱を開けてしまっていた。その時、

「きゃあああ!!!!」

甲高い悲鳴が響き渡った。


「なんだよ今の声」

慌てたようなAの声。


「返して・・・」

今度はなぜだか後ろから聞こえた。明らかに俺らの声じゃない。女の声だ。

振り返るとそこにいたはずのBの姿がなかった。

「おい!どこ行った!?」

Aが叫んだ。

「わからん!!気がついたらいなくなってた!」

俺は答える。

「とにかく探すぞ!」

Aはそういうと走ってどこかへ行ってしまった。慌てて追いかける。

が、途中で、Cがついていないことに気が付いた。

「おい、A!!Cもいないぞ!!」

後ろを振り返ったその時、

「あははははははははあはh」

狂気じみた女の声が廃屋全体に響いた。

「くそっ!あいつら、どこにいるんだ!?」

とにかくやみくもに走り回るA。

「おいA、とりあえずCはあの部屋にいると思うからいったん戻ろうぜ。」

俺はパニックになりながらもいなくなった二人を見捨てるわけにもいかずに提案する。

「ああ、そうだな、お前の言うとおりだ。いったん戻ろう。」

俺たちはさっきの場所に戻ってみることにした。するとそこには下を向いているCがいた。

「お前なにしてんの?」

Aがあきれたようにいう。

「・・・・・・・」

しかしCは黙りこくったままだ。

俺はこの辺で嫌な予感がしていた。

「・・・・・てめえ、ふざけてんのかおい!!!」

Aは焦りとパニックで

Cを怒鳴る。

「・・・・・・」

それでもCは黙ったままだ。

「てめえ!!」

俺は何とはなしに床を見た。

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

俺は絶叫をすんでのところでこらえた。

Cの手にはさっきの箱が明けられた状態で握られてあり、その下には黒くて長い髪の毛が大量に落ちていた。

そしてCの影は明らかにCのモノではなく女の影になっていた。

「おい、いい加減なんとかいえ!!」

AはCを怒鳴りつけその肩をつかんで揺さぶった。

ヤバいと思ってAを止めようとしたんだけど遅かった。

Cはゆっくり顔を上げた。そこにはCの顔はなく、明らかに女の顔がこちらを見ていた。Cの体なんだけど顔がもうCじゃなかった。女だったんだ。目はなんといっていいか白めの部分が赤く。黒目の部分が白い頭から血を流した女がAをじっとりと見つめる。

そしてゆっくりと口を開いた。

「私のかえしてよぉぉぉぉぉぉ!!!」

そう叫んでAに飛びかかってかたのあたりを噛みついてきた。

Aは反射的にCを殴り飛ばし俺に声をかける。

「おい、逃げるぞ!!」

俺は極度の恐怖で動けなくなった体を無理やり動かして逃げる。

後ろからはガリッという音が聞こえる。

振り返るとAは噛まれたらしい右肩を抑えながら必死に走っていた。

そのすぐあとに俺もAの後を追いかけた。

 階段まで来たときに下の階から足音が迫ってくることに気が付く。

Aは階段の踊り場にしゃがみ込んでしまった。どうやら腰が抜けたようだ。

「おいっ!しっかりしろよっ!!」

そう言ってAを起こそうとすると、上から何かが落ちてきて俺の首元をかすって床に落ちた。一瞬何が起きたかわからなかったがそれは血の付いたナイフだった。


「ああ、私の、かえしてぇ」

「うわああああああああああああ」

思わず叫ぶと、その声に反応してか、上の階にいた奴が飛び降りて俺の前に着地した。どうやって上に上ったとかはこの際考えない。

想像すると怖すぎる。

そいつはあの箱を持っていた。Cだ。その顔は歪んだ女の顔。

「私のだぁ、わたしのぅ!!」


「A、早くしろよ」

その時俺はAの指に見慣れない指輪がされているのを見てしまった。懐中電灯に照らされ怪しく光ったそれにはなにかはわからないけれど赤い石がはめれていて銀のわっかの部分にはさびたような汚れがこびりついていた。

Aがこんな指輪を持っているはずがない。

「おい、Aその指輪どうしたんだよ」

あれは焦ってAを問いただすとAは初めてその指輪に気が付いたようだった。

「なんだよこれ」

Aはあわてて指からその指輪を取ってCのほうに投げつけた。

Aはなんとか立ち上がり、

「おい、逃げるぞ!!」

そういって走って廃屋の外に出た。外の空気が気持ちい。振り返る余裕もなかったためCがどうなっているのかは俺にもわからない。


それからのことは正直覚えていない。

気づいたときにはAの運転する車に乗っていた。しかしそこにはCとBの姿はなかった。

俺が目を覚ましたこと聞きが付きAはまだ青い顔をしながら、

「取り合えず警察には電話した。」

とだけ言った。おれも頭が回らずうんうんとうなづくことしかできなかった。

 ****************************

次の日、大学へ行ったがBとCの姿はなかった。

しかしAの姿は見かけたので話しかけた。

なんでも昨日警察にかけた時は半信半疑だったようだがしぶしぶといった感じで捜査してくれたらしい。廃屋の中央にCが大の字で倒れていたそうで今は病院にいるとのこと。Bに至ってはまだ行方不明だそうだ。


「あの時、」

Aはあの時おもむろに話始めた。

「あの時、あの指輪を見た時、何で自分がそんなものしてるのか本気で分からなかった。俺はあんな指輪した覚えなんてねーのに。」

あの時のAの驚きようを見て、うすうす気が付いてはいたがやはり実際本人から聞くとさらに薄気味悪かった。

俺たちは相談してCの病院にお見舞いに行った。昨日のことがあり、恐怖で立ちすくんではいるもののいかないわけにはいかなかった。病院に行く途中AはBの実家に連絡を取っていた。

「やっぱりまだ帰ってねえって。」

暗い声のAはそのまま、警察に連絡した後もBの実家に連絡を取ったことを話した。その時にAはかなりBの両親に責められたらしい。



Cの病室についた。すごく緊張していた。Aがごくりとつばを飲み込む音が聞こえた。

Cはベットの上に座り込んでいるように見えた。顔はうつむいている。

「おい、大丈夫か?」

Aが声をかけるが反応はない。俺がもう一度呼びかけようとしたとき、Cが顔を上げた。その顔はあのとき見た女のものだった。

「私のかえしてよぉぉぉぉぉぉ」

そう叫ぶCの指にはあの赤い石のついた指輪がはめられていたのだった。

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