ピンポーン
菊原と書かれた表札をちらりと見てからインターホンを押した。
「あ、風間君・・・・・・」
出てきたのは本人ではなく、お母さんだった。
「あの、晴良さんはいますか?」
「・・・・・・ちょっと待っててね」
菊原さんのお母さんがドアを開けて出てくる。
「晴良はね、東京に行ったの」
「東京に?」
「ええ。東京大学に合格したから」
東大に合格したのか。
東京に行くなら、そう教えてくれればよかったのに。
やっぱり、最後にあったときのあれのせいかな・・・・・・。
「いつ頃帰ってきますか?」
「さぁ。もしかしたら、ずっと東京にいるかもしれないわ」
「そう、ですか・・・・・・」
会いに行くなら東京に行くしかない。でも、東京か・・・・・・。
「じゃあね、風間君。幸せになってね」
「え?」
菊原さんのお母さんの言葉に少し違和感を感じ、顔を見る。
「何で、泣いているんですか?」
「・・・・・・晴良がいっちゃったから、寂しいから、かな」
そう言って家の中へと戻っていった。
少し違和感を感じながらも、僕にはそれをどうすることもできず、家に帰った。
去年は綺麗に感じた桜も、今年は灰色に見える。
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