菊原さんは何を考えているのかよくわからない。

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公開日時: 2021年2月9日(火) 13:00
文字数:1,516

「え、ビーチバレー・・・・・・?」

「うん、ビーチバレー。わかる?」

「ごめん、わからない」

ビーチバレーなんて生まれてこのかた、一度もやったことがない。

「菊原さんは?」

「私もやったことない」

「中島さんは?」

「私もやったことないわ」

「村田君は?」

「僕もやったことない、な」

「吉良さんは?」

「私もない」

「近藤君は?」

「俺はやったことあるぜ」

「鈴木は・・・・・・あるよね」

「あるぜ」

まさかの8人中3人しか経験者がいない。


ビーチバレーって何ですか。


海に行ったときにやることもあるスポーツ、っていうことぐらいはわかっているけど、その程度しか知らない。

そもそもバレーのルールさえよく知らないのだから、ビーチバレーなんて知るよしもない。

「楽しいの?」

「楽しいよ」

その後、佐藤さんに指導される。


で、男子対女子でビーチバレー。

結果、男子完敗。


「弱っ」

「雑魚いね」

「私たちの敵じゃなかった」

ひどい言われようだ。

「貝でも集めていようかな・・・・・・」

「お前は何歳だよ」



「そろそろ片付けよう。移動時間も考えると、そろそろ撤収しないと」

「えー、もうちょっとー」

「駄目駄目。ほら、文句を言わずにさっさと片付け」

村田君の指示によって、僕らは片付けを始める。

時間管理なんかは全部村田君に任せてたけど、村田君は全てを完璧にこなしてくれた。本当に助かった。


その後は、何か問題があった、なんてことはなく、普通に帰った。



翌日。

「昨日楽しかったね」

「そうだね」

菊原さんに呼ばれたから菊原さんの家を訪れていた。

「それで、今日は何か?」

「用事がなきゃ呼んじゃいけない?」

「いや、そんなことはないけど」

っていうかこんなやりとり、前にもしたことがある気がする。

「はい、これ」

「・・・・・・ん、何?」

何故か帽子を渡された。

「風間君、お洒落とか興味なさそうだったからさ。何かいいものをあげた方がいいんじゃないかな、と思って」

「ああ、ありがとう」

お洒落に興味がないと思われるような服装だったのか・・・・・・。僕はそんなにセンスがないのだろうか。

「でも、何で?」

「風間君、もしかして・・・・・・」

「ん?」

「自分の誕生日、覚えてる?」

「・・・・・・あー」

そういえば、今日は僕の誕生日だった気がする。

「そっか、今日誕生日か」

「そうだよ。何で自分の誕生日も覚えてないの?」

「あんまり祝われることとかないからさ。ほら、夏休み中じゃん?だから、今までもあんまり祝われることがなかったんだよ」

「家族からは?」

「前は祝われてたけど、何年か前からそういうのもなくなったかな」

「何か可哀想」

哀れまれた。

「風間君はさ、何か好きなものとかあるの?」

「読書」

「それ以外で」

「んー」

何かあるだろうか。

強いて言えば菊原さんと会話することだけど、そんなことは恥ずかしくて言えない。

何か、何か、ねえ。

「ないかな」

思いつかなかった。

「何か趣味を作りなよ」

「えー・・・・・・」

「それかさ、あの、私以外ともちゃんと交流しないと駄目だよ?」

「村田君とか」

「異性は?」

「佐藤さんとか、吉良さんとか。あと、最近転入生が何故かよく話しかけてくるよ」

「ふーん、そうなんだ。っていうか、ちゃんと名前で呼んであげなよ」

「なんだっけ。中島さんだっけ」

「そうそう。ちゃんと仲良くしなよ?」

「んー、まあ、努力する」

努力するだけなら誰にでも出来る。結果を出すのは誰にでも出来ることではない。

「でも、突然そんな話して、どうしたの?」

「風間君の将来が不安になって」

僕の将来は菊原さんに心配されるほど怪しいらしい。

でも、実際不安だな。

対人とかあんまり無理だし。

菊原さんのいうとおり、他の人ともちゃんと交流もたないといけないな。


その後、少し話してから家に帰った。

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