「え、ビーチバレー・・・・・・?」
「うん、ビーチバレー。わかる?」
「ごめん、わからない」
ビーチバレーなんて生まれてこのかた、一度もやったことがない。
「菊原さんは?」
「私もやったことない」
「中島さんは?」
「私もやったことないわ」
「村田君は?」
「僕もやったことない、な」
「吉良さんは?」
「私もない」
「近藤君は?」
「俺はやったことあるぜ」
「鈴木は・・・・・・あるよね」
「あるぜ」
まさかの8人中3人しか経験者がいない。
ビーチバレーって何ですか。
海に行ったときにやることもあるスポーツ、っていうことぐらいはわかっているけど、その程度しか知らない。
そもそもバレーのルールさえよく知らないのだから、ビーチバレーなんて知るよしもない。
「楽しいの?」
「楽しいよ」
その後、佐藤さんに指導される。
で、男子対女子でビーチバレー。
結果、男子完敗。
「弱っ」
「雑魚いね」
「私たちの敵じゃなかった」
ひどい言われようだ。
「貝でも集めていようかな・・・・・・」
「お前は何歳だよ」
「そろそろ片付けよう。移動時間も考えると、そろそろ撤収しないと」
「えー、もうちょっとー」
「駄目駄目。ほら、文句を言わずにさっさと片付け」
村田君の指示によって、僕らは片付けを始める。
時間管理なんかは全部村田君に任せてたけど、村田君は全てを完璧にこなしてくれた。本当に助かった。
その後は、何か問題があった、なんてことはなく、普通に帰った。
翌日。
「昨日楽しかったね」
「そうだね」
菊原さんに呼ばれたから菊原さんの家を訪れていた。
「それで、今日は何か?」
「用事がなきゃ呼んじゃいけない?」
「いや、そんなことはないけど」
っていうかこんなやりとり、前にもしたことがある気がする。
「はい、これ」
「・・・・・・ん、何?」
何故か帽子を渡された。
「風間君、お洒落とか興味なさそうだったからさ。何かいいものをあげた方がいいんじゃないかな、と思って」
「ああ、ありがとう」
お洒落に興味がないと思われるような服装だったのか・・・・・・。僕はそんなにセンスがないのだろうか。
「でも、何で?」
「風間君、もしかして・・・・・・」
「ん?」
「自分の誕生日、覚えてる?」
「・・・・・・あー」
そういえば、今日は僕の誕生日だった気がする。
「そっか、今日誕生日か」
「そうだよ。何で自分の誕生日も覚えてないの?」
「あんまり祝われることとかないからさ。ほら、夏休み中じゃん?だから、今までもあんまり祝われることがなかったんだよ」
「家族からは?」
「前は祝われてたけど、何年か前からそういうのもなくなったかな」
「何か可哀想」
哀れまれた。
「風間君はさ、何か好きなものとかあるの?」
「読書」
「それ以外で」
「んー」
何かあるだろうか。
強いて言えば菊原さんと会話することだけど、そんなことは恥ずかしくて言えない。
何か、何か、ねえ。
「ないかな」
思いつかなかった。
「何か趣味を作りなよ」
「えー・・・・・・」
「それかさ、あの、私以外ともちゃんと交流しないと駄目だよ?」
「村田君とか」
「異性は?」
「佐藤さんとか、吉良さんとか。あと、最近転入生が何故かよく話しかけてくるよ」
「ふーん、そうなんだ。っていうか、ちゃんと名前で呼んであげなよ」
「なんだっけ。中島さんだっけ」
「そうそう。ちゃんと仲良くしなよ?」
「んー、まあ、努力する」
努力するだけなら誰にでも出来る。結果を出すのは誰にでも出来ることではない。
「でも、突然そんな話して、どうしたの?」
「風間君の将来が不安になって」
僕の将来は菊原さんに心配されるほど怪しいらしい。
でも、実際不安だな。
対人とかあんまり無理だし。
菊原さんのいうとおり、他の人ともちゃんと交流もたないといけないな。
その後、少し話してから家に帰った。
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