「風間先輩、ですよね?」
悲愴について、何故かチェロをすることになり、チャロの練習をしていると、見覚えのない人に声をかけられた。
先輩、と呼ばれているし、きっと1年生なんだろう。
「えっと・・・・・・」
「あ、すみません。1年の、後藤桜です」
「・・・・・・僕に何か用?」
「あ、はい。先輩、選挙に出るんですよね?」
「え、いや、そんなことはないけど」
「え!?」
「・・・・・・え?」
そんな噂が流れているのか。
「菊原先輩が、風間先輩のことを宣伝してましたけど」
何しとんねん。
「選挙活動、ってこと?」
「はい」
まだ選挙まで1ヶ月くらいあるんだが。
「風間先輩なら、生徒会長になれますよ!」
「・・・・・・ありがとう」
「録音成功」
「は?」
「菊原先輩が、こういう会話をして録音しといて、って」
「何で?」
「この会話の録音があれば風間先輩に出馬を説得させられるから、って」
・・・・・・え、何それ。初耳なんですが。
「あ、私チェロ弾けますよ。お教えしましょうか?」
「あ、お願い。全然駄目なんだよね・・・・・・」
「毎日練習してるんですか?」
「だいたい毎日だね」
「風間先輩、生徒会室か教室か図書室にしかいないですよね」
「まあ、そうだね」
というか、それ以外に行く場所ないでしょ。
「生徒会室で楽器の練習している人初めて見ましたよ」
「そういえば後藤さんは何で生徒会室に入ってるの?」
「菊原先輩に指示されたので」
・・・・・・へー、それで入ってきたんだー。
後日。
僕はやはり菊原さんに説得され、結局選挙に出馬することになってしまった。
「ありがとう」と言ってしまったのが痛手だった。
「応援するよっ!」
宮坂先輩が言った。
「はぁ、ありがとうございます」
「頑張ってね」
小野先輩も応援してくれた。
応援してくれるのはいいけど・・・・・・。
「ダルい・・・・・・」
「まだそんなこと言ってるの?頑張ってよ」
「というか、チェロ上手くなったね」
「1年の、後藤さんに教えてもらってて」
「モテてるねー」
「いや、そういうのではないので」
菊原さんにけしかけられた後輩ですよ、恋愛感情とかあるわけないじゃないですか。
今日は、一旦悲愴をあわせてみることになっていた。
僕のチェロは、上手いといわれた。
菊原さんはピアノを弾くのだけれど、それも結構上手かった。
「吹奏楽部たちを潰そうじゃないかっ!」
と言った宮坂先輩は、その場にいた吹奏楽部部長にビンタされた。
演奏の練習をすると同時に、クラスでの猿芝居、じゃなかった、ロミオとジュリエットの演劇(?)の練習もしないといけないから大変だった。
特に主役だし。
主役だし。
最悪だし。
主役なんてやっぱり嫌だ。とても緊張するし台詞も多いしずっとでとかないといけないし。
っていうか、ロミオとジュリエットってこんな話だったのか。知らなかったな・・・・・・。
こういう話、全然読んでこなかったもんな。
「ああ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」
という転入生の声を最初にきいたときには笑った。
「何で笑ったの!?」
「いや、すみません。いつもとの差が」
「言ったわね。あんたは言ってはいけないことを言ったわ」
気にしてたらしい。
「すみませんすみません」
「今回だけは許してあげる」
許して貰えた。案外緩い。
というか、ジュリエット役はやっぱり菊原さんがよかったな・・・・・・。
菊原さんのクラスでは喫茶店をやるらしい。時間があったら優先順位は1位で行こうと思う。
メイド喫茶ではないらしい。
別にメイド喫茶がよかった、とかではないけれど。決して。そんなことはないけれど。
来月は色々な行事があるな。
文化祭・体育祭・選挙まであと1ヶ月をきっていた。
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