菊原さんは何を考えているのかよくわからない。

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公開日時: 2021年1月23日(土) 02:00
文字数:1,580

11月に入った。


っていうか、寒すぎ。

地獄。

高校までの道のりがありえないくらいに寒い。

僕は自転車で学校まで向かっている。

11月の時点でこんなに寒かったら、来月や再来月はどれだけ寒くなることか・・・・・・。

寒いの、苦手なんだけどな。


生徒会の仕事は滞りなく終わらせることができていたが、菊原さんは欠席が多く、少しカバーしないといけないことも多かった。


そしてついに・・・・・・菊原さんは、入院した。



菊原さんが入院したという知らせを聞いた僕は、その日の放課後に急いで病院へと向かった。

「菊原さん」

「あ、風間君。ごめん、学校休んじゃって。生徒会、大変だよね」

「そんなこと、今はどうでもいいから。どうしたの?」

「えっとねー、そんなにひどいわけじゃないよ。ごめん、先生が何て言っていたか忘れちゃったけど。入院は、1週間ぐらいだって」

1週間、か。

入院についてあまり詳しくないから、それが長いのか短いのか僕には判断できない。

「気を遣わなくて良いんだよ。きついならちゃんと休んで。入院してもらったほうが困るんだから」

「うん、ごめん」

「林檎、食べる?」

「むいてくれるの?」

「うん」

「食べる」

持ってきた林檎の皮をむきながら尋ねる。

「大丈夫?」

「・・・・・・何が?」

「身体」

「うん、大丈夫だって。1週間しか入院しないんだよ?」

1週間しか。しか、ってことは、1週間っていうのは短い、って捉えていいんだろうか。



翌日。


病院で菊原さんのお母さんと偶然出会った。

「あら、風間君。お見舞いにきてくれたの?」

「あ、はい」

「ありがとね。あ、そうだ。晴良、明日誕生日なんだけど、知ってた?」

「え!?そうなんですか!?」

「うん」

知らなかった・・・・・・。

「あ、プレゼント買いにいかないと」

「やっぱり晴良、伝えてなかったんだね」

プレゼント、何がいいんだろう。

「あの、菊原さん・・・・・・晴良さんって、何か好きなものとかありますか?」

「んー、何だろう。何でも喜びそうだけど。あ、晴良の知らないもの、とか」

「知らないもの?」

「知らないものを知ることが面白いと感じるみたいよ」

そうなんだ。

でも、知らないもの、っていってもな・・・・・・。

「知らないもの、って、どんなものがありますか?」

「さぁ?それは自分で考えるべきなんじゃない?」

それはそうだ。プレゼントだし。


知らないもの、か。

知らないもの・・・・・・。

何だろう。

いや、普通に本人に聞いた方がいいか。


ドアを開く。

「あ、今日も来てくれたんだ」

「うん。さっきお母さんに聞いたんだけど、菊原さん、明日、誕生日なんだって?」

「うん、そうなんだ」

「何か欲しいものとか、ある?」

「んー、愛情?」

いや、そんなこと言われても。

「冗談冗談。欲しいもの。お金とか、希望とか」

「希望?」

「生きる希望」

「重たいな・・・・・・。というか、生きる希望、ないの?」

「いや、あるけどさ。誕生日に病院って、嫌じゃん?」

「まあ、そうだろうね」

誕生日を病院で過ごすって嫌だな・・・・・・。まあ、僕も誕生日に祝われるわけでもないから、家にいるだけだけど。

「慣れたっていえば、慣れたんだけど」

慣れた・・・・・・?

「あ、そうだ、あれがほしい!」

「あれ?」

「あれだよ、ほら。シャーペン」

「シャーペン?」

「うん。私、鉛筆使ってるんだけどさ、世の中にはシャーペンっていうものがあるんでしょ?」

菊原さんの筆箱を見てみる。開いてる。中は・・・・・・本当に鉛筆だ。

シャーペンを知らないのか?

シャーペンって結構前からあると思うんだけど。

「色とかの希望は?」

「何でも良いよ。強いていうなら、金箔で覆われてるやつがいい」

「ごめん、それは無理」

金箔で覆われてるシャーペンって何?そんなのあるの?


それから数分話して、僕はシャーペンを買いに行った。



翌日。


菊原さんに金色のシャーペンを渡したら喜んで貰えた。

金箔は無理です、ごめんなさい。

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