菊原さんは何を考えているのかよくわからない。

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Another story 9~10

公開日時: 2021年3月14日(日) 02:00
文字数:1,061

「よし、テストも終わったし、週末カラオケ行こうぜっ!」

鈴木君が言った。

「俺と佐藤と風間君と菊原さんでさ!」

「いいね、それ。鈴木が奢ってくれるのかー、やったっ!」

「え、何でそんな話になってんだよっ!?」

「あ、それ、僕も行っていいかな?」

「おう、村田も歓迎するぞ」

「むしろ、クラス皆で行かないかい?」

「よし、いいな、それ。皆で行こう!」

「風間君も来るんでしょ?」

「うん。菊原さんは?」

風間君にそう聞かれて迷う。

カラオケ。行ってみたい。けれど、大人数でいて問題ないのかな。私が突然倒れたりしたら・・・・・・。

いや、今を楽しもう。

「それじゃあ、私も行こうかな」

「よし。じゃあ他の人は僕に任せて」


カラオケで皆が次々と歌っていく。

「菊原さんも歌いなよ」

「いや、私は」

「もう、さっき風間君が言われてたの忘れたの?カラオケに来たんだよ?歌わなきゃ」

「う、うん」

私でも上手く歌える曲を歌った。少し昔のアイドルだけど、皆知っているだろう。

「菊原さんも歌上手いね。もっと自信持てばいいのに」

「う、うん。でも、今まであんまり歌ったりしなかったから。曲もあんまり知らないし」

「ふーん、そうなんだ」


その後二次会もあって、三次会もあったけれど、三次会まで行く余裕はなくて、帰ることにした。風間君も帰るらしいから、一緒に帰る。

「楽しかった?」

「・・・・・・うん。新しい友達もできたし。やっぱり、友達っていいね」

一時期は友達を、いや、知り合いを作らないと決めたはず、だったのに。

私は、楽しんで良いのかな。

残り少ない余生を。

私が死んだときに、皆を悲しませてしまっていいのかな。

「風間君は、・・・・・・ううん、何でもない」

「ん?何?言ってみて」

「・・・・・・じゃあ、相談なんだけどさ。風間君は、相談したいことがあったら、誰に相談する?」

「うーん、そうだなー。相談するっていう発想が今までにあんまりなかったから、なんとも言えないかな。何か悩んでるなら、相談乗るよ?」

「ううん、大丈夫」

一瞬、全てを打ち明けてしまおうかと思ったけれど、できなかった。私にはそれだけの度胸がなかった。

「じゃあ、またね」

「うん。また」



7月に入ると、海に行くという話が出て来た。

「菊原さんは、来る?」

「うーん、どうしようかな・・・・・・。許可が出たら行こうかな」

「親厳しいの?」

「うん、まあ、そんなところ」

許可を出すのは親じゃなくて医者、なんだけどね。


その後、先生から何とか許可はもらえた。

ただ、あまり長距離を泳いだりするのは控えたりするように言われた。

それでもいい。

楽しめれば、それで。

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