6月に入り、定期テストがあり、その結果が返ってきた。
その結果は意外なものだった。
僕1位、そしてあの転入生が2位、菊原さんが3位、村田君が4位。
「どうしようどうしようどうしよう、変な人にこされた」
菊原さんが焦っている。
「いやいや、そこまでのことではないって。たまたまだよ、たまたま」
生徒会室でこんな話をしている。
「菊原さん、転入生にこされちゃったんだ、へー。風間君、菊原さんに勉強教えてるんでしょ?責任感じる?」
「責任、っていうか」
「私の力不足ですから風間君は関係ないですよ」
宮坂先輩と小野先輩がさっきからこちらを見ている。
何か嫌な雰囲気な部屋だな、ここは。
「そうだ、今年の予算なんだけど」
「何ですか?」
「この前の会議で今年の予算配分決めたじゃん?」
「ええ」
この学校では、生徒会にもちゃんと予算がある。それも、生徒達で動かせる予算が。
その配分は生徒会執行部で決めるわけだが。
「何か、もう1回決め直そう、って言ってる人たちが結構いるんだけど、どうする?」
「却下でいいんじゃないですか?」
考えるまでもない。却下。
「どうして?」
「一度決まったんですし。それなりの理由を提示してもらわないと再配分なんてできませんよ」
「そっか。そうだね。じゃあそう伝えておこう」
翌日何人かの先輩たちが資料を持ってきたが、一瞥して却下した。
週末。
いつも通り菊原さんの家に向かうと。
「え、どうしたの?」
信じられないくらいに散らかっていた。
「あ、ごめん、散らかってて」
「いや、それはいいけどさ。問題は散らかってる理由、なんだけど。探し物とかならいいけど・・・・・・そんな感じじゃないし。何かあったなら、聞くよ?」
先週までは普通にあった花瓶が床で割れている。
探し物じゃない。
きっと暴れたんだ。
暴れたのか暴れられたのか。
どっちにしろ、菊原さんに何かあったんだ。
「聞かせてくれないかな?」
菊原さんは首を振る。
「何でもない。何か、苛々しちゃって」
そういえば、菊原さんのお母さんもいつもと雰囲気が違った気がする、けど。
やっぱり何かあったんじゃないだろうか。
でも、菊原さんは言ってくれそうにないし。
帰り際に菊原さんのお母さんに聞いてみよう。
「今日もありがとうね」
「いえいえ。あの・・・・・・少し、質問いいですか?」
帰り際。予定通り聞いてみることにした。
「晴良がおかしいの?」
「え?・・・・・・そうですけど。何かあったのかな、って」
「まあ、あったのよ。晴良の人生に関わること、かな。やっぱりショックだったのね・・・・・・」
「それで、何が?」
「晴良は話そうとしなかったんでしょ?」
「はい」
「じゃあ私からは言えないわ」
どうしてこの親子は隠そうとするんだろうか。
僕のことが信用できないのだろうか。
翌日。
「風間、どうしたの?」
転入生が話しかけてくる。
「何ですか?」
「あんた、元気なさそうに見えるけど。大丈夫?」
心配、してくれてるのか。
「大丈夫です」
自分では元気がないという感覚はない。
いつも通りな気がする。
だけど、周りからすればそうではないらしい。
「言いたいことは言わないと駄目よ?悩みははき出せば」
「五月蠅い。黙っててくれませんか」
「・・・・・・そう、わかったわ」
何故か苛々して、転入生にあたってしまった。
転入生は何も悪くない。
むしろ、悪いのは僕の方だろう。
だけど、何故か苛々した。
何故なんだろう。
放課後。
図書室に菊原さんがいなかったので、1人で本を読む。
「ちょっとは落ち着いた?」
また転入生が話しかけてきた。
「ああ、さっきは、すみませんでした」
「いいのよ。そういうとき、あるものだから。それで、何があったのか話せる?」
この人はカウンセラーでも目指しているのだろうか。
優しいんだな。
でも。
「あの」
「何?」
「図書委員長が、睨んでます」
この転入生の声が大きいせいだ。
転入生が委員長に捕まり、説教されている間に僕は家に帰った。
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