翌日も菊原さんは欠席し、その翌日は登校した。
「菊原さん、風邪?」
「はい。風邪、引きやすくて」
「きついなら保健室行かないとだめですよ?」
「ありがとうございます。でも、4月来ていないので、授業はできるだけ参加したいな、と思って」
「そうですか。でも、無理はしないでくださいね」
「はい」
「おい、風間が話してるぞ」
「いや、2人とも性格が近くてお似合いなんじゃないか?」
「邪魔しないようにしたほうがいいって。ああいう奴らって怒ると怖いから」
「そうだな」
近くの男子連中の話し声が聞こえる。
とりあえず僕は自分の席に座って本を読む。
そういえば、菊原さんはどうして本を読んでいるんだろう。
ちらりと菊原さんの方を見る。
やはり本を読んでいる。
「何か、習慣になっちゃって」
「今まで、本を読むことぐらいしかすることがなかったので」
菊原さんは、前に僕が何故本を読むのかと問うたときにこう答えた。
どういうことなんだろう。
そういえば、名前を呼ばれたのは久しぶりな気がするな。
「風間君、クラスのライングループに入らないかい?」
学級委員の村田君が来た。
「え、いや、遠慮しときます」
「いやいや、入っておいてもらたほうが便利だからさ」
「はあ。じゃあ、一応。基本的に既読はつかないと思ってもらえると助かります」
「ああ、うん、大丈夫だよ。緊急のときは電話かける。でも、週に1回くらいは見てね」
「わかりました」
村田君とラインを交換する。
「あ、私も」
「あ、菊原さん」
「菊原さん、スマホ買ってもらえたんですか?」
「はい。風邪引いている間に買ってきてもらいました。使い方、あまりわからないので後で教えて下さい」
「いいですよ」
「じゃあ、えっと、風間君と村田君と交換すればいいんです、か?」
「いや、風間君と交換して、風間君が菊原さんをグループにいれてもらえれば。じゃあ僕はこれで」
菊原さんとラインを交換。菊原さんはやり方がわかっていなかったから、教えながら。
放課後。
いつも通り図書室の読書スペースに菊原さんはいた。
「あ、風間君」
手招きされる。
「どうしました?」
「スマホの使い方、教えて下さい」
「あ、いいですよ」
スマホの使い方を数分間教えて、その後、気になっていることを聞いてみた。
「あの、何で本を読んでいるんですか?」
「・・・・・・前にも言いませんでしたっけ?」
「はい。前にも聞きました。本を読むことぐらいしかすることがなかったから習慣になった、と。何で本を読むことが習慣になったのかな、って」
「・・・・・・ごめんなさい、もう時間なので」
菊原さんは走って行った。
聞かない方がいいのかもしれないな。
もう聞かないようにしておこう。
翌日。
菊原さんはまた欠席。
僕はいつも通り本を読む。
「風間君。もっと友達をつくったらどうだい?」
村田君が話しかけてきた。
「どうしてですか?」
「学生時代は人との関係を学ぶ場でもあるらしいよ。今の君みたいに、その場を無駄にする理由はない」
まあ、それは一理あるかもしれない。
「将来、人との関係っていうのは大事になるだろうからね。まだ学生とはいえ、そのことくらい、理解しているだろう?」
「まあ、そうですね」
「まずは僕と友達になろう」
「はぁ」
「敬語なんてやめなよ。もっと、明るく。本を読むことが悪いとは言わないけど、読んだことを活かさないなら意味はないよ」
「いや、僕が読んでるのは実用書じゃないし」
「そういう問題じゃない。とにかく、友達を作りなよ」
友達、ねえ。
そんなこと言われたってな。
「そうだよ、友達は大事だよ?」
佐藤さんも来た。
「特に、彼女とかね」
この人はその類の話しかできないんだろうか。
「彼女とかはともかくさ。君も菊原さんももっと皆とつながりを持ちなよ。まずは、僕と佐藤さんと鈴木君と君と菊原さん。この5人だけでもいいからさ」
村田君は僕らのことを気遣っているのだろう。
どうせ断っても何度も言ってくるんだろうし。主に佐藤さんが。
友達になる、か。
「よろしく」
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