菊原さんは何を考えているのかよくわからない。

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公開日時: 2021年1月4日(月) 14:00
文字数:1,609

翌日も菊原さんは欠席し、その翌日は登校した。

「菊原さん、風邪?」

「はい。風邪、引きやすくて」

「きついなら保健室行かないとだめですよ?」

「ありがとうございます。でも、4月来ていないので、授業はできるだけ参加したいな、と思って」

「そうですか。でも、無理はしないでくださいね」

「はい」


「おい、風間が話してるぞ」

「いや、2人とも性格が近くてお似合いなんじゃないか?」

「邪魔しないようにしたほうがいいって。ああいう奴らって怒ると怖いから」

「そうだな」


近くの男子連中の話し声が聞こえる。

とりあえず僕は自分の席に座って本を読む。

そういえば、菊原さんはどうして本を読んでいるんだろう。

ちらりと菊原さんの方を見る。

やはり本を読んでいる。

「何か、習慣になっちゃって」

「今まで、本を読むことぐらいしかすることがなかったので」

菊原さんは、前に僕が何故本を読むのかと問うたときにこう答えた。

どういうことなんだろう。


そういえば、名前を呼ばれたのは久しぶりな気がするな。


「風間君、クラスのライングループに入らないかい?」

学級委員の村田君が来た。

「え、いや、遠慮しときます」

「いやいや、入っておいてもらたほうが便利だからさ」

「はあ。じゃあ、一応。基本的に既読はつかないと思ってもらえると助かります」

「ああ、うん、大丈夫だよ。緊急のときは電話かける。でも、週に1回くらいは見てね」

「わかりました」

村田君とラインを交換する。

「あ、私も」

「あ、菊原さん」

「菊原さん、スマホ買ってもらえたんですか?」

「はい。風邪引いている間に買ってきてもらいました。使い方、あまりわからないので後で教えて下さい」

「いいですよ」

「じゃあ、えっと、風間君と村田君と交換すればいいんです、か?」

「いや、風間君と交換して、風間君が菊原さんをグループにいれてもらえれば。じゃあ僕はこれで」

菊原さんとラインを交換。菊原さんはやり方がわかっていなかったから、教えながら。



放課後。


いつも通り図書室の読書スペースに菊原さんはいた。

「あ、風間君」

手招きされる。

「どうしました?」

「スマホの使い方、教えて下さい」

「あ、いいですよ」


スマホの使い方を数分間教えて、その後、気になっていることを聞いてみた。

「あの、何で本を読んでいるんですか?」

「・・・・・・前にも言いませんでしたっけ?」

「はい。前にも聞きました。本を読むことぐらいしかすることがなかったから習慣になった、と。何で本を読むことが習慣になったのかな、って」

「・・・・・・ごめんなさい、もう時間なので」

菊原さんは走って行った。

聞かない方がいいのかもしれないな。

もう聞かないようにしておこう。



翌日。


菊原さんはまた欠席。

僕はいつも通り本を読む。

「風間君。もっと友達をつくったらどうだい?」

村田君が話しかけてきた。

「どうしてですか?」

「学生時代は人との関係を学ぶ場でもあるらしいよ。今の君みたいに、その場を無駄にする理由はない」

まあ、それは一理あるかもしれない。

「将来、人との関係っていうのは大事になるだろうからね。まだ学生とはいえ、そのことくらい、理解しているだろう?」

「まあ、そうですね」

「まずは僕と友達になろう」

「はぁ」

「敬語なんてやめなよ。もっと、明るく。本を読むことが悪いとは言わないけど、読んだことを活かさないなら意味はないよ」

「いや、僕が読んでるのは実用書じゃないし」

「そういう問題じゃない。とにかく、友達を作りなよ」

友達、ねえ。

そんなこと言われたってな。


「そうだよ、友達は大事だよ?」

佐藤さんも来た。

「特に、彼女とかね」

この人はその類の話しかできないんだろうか。

「彼女とかはともかくさ。君も菊原さんももっと皆とつながりを持ちなよ。まずは、僕と佐藤さんと鈴木君と君と菊原さん。この5人だけでもいいからさ」

村田君は僕らのことを気遣っているのだろう。

どうせ断っても何度も言ってくるんだろうし。主に佐藤さんが。

友達になる、か。

「よろしく」

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