3月。
僕は無事に受験に合格し、県内トップの高校に入学することができた。
入学式では宣誓をするという話も回ってきて、どうやら入試の点数では一位だったらしい。
面倒だから断ろうかと思ったが、僕は奨学会から奨学金をもらって学校に行く。だから、宣誓をできるのであればするべきかと思い、その話は受けることにした。
4月。
入学式は何事もなく無事に終わり、1年6室の教室に入る。
新入生は406名。1室から6室までは1室41人、7室から10室までは1室40人のようだ。
「皆さんこんにちは。1年6室の担任の宮部です。よろしくお願いします」
軽く会釈。
クラスメイトの自己紹介があったが、聞き流す。特に興味はない。どうせあまり付き合いはないだろうから。
自分の自己紹介も、名前だけを言ってさっさと座る。
自己紹介も終わり、先生が何か話している。
特に重要そうなことは話していないようなので、これも聞き流す。
本を読みたかったけれど、流石にそれはまずいかと思って、先生にバレないように周りを見まわす。
寝ている人が数人、スマホを触っている人が1人、欠席1人。
初日から欠席をする人もいるのか。
寝ている人、っていうのはどういう神経をしているんだろうか。
僕にはとうてい真似できない。
先生が話しているのに寝る、というのは。
だが、先生もとがめるようなことはしない。
この高校では生徒が寝ることなど日常茶飯事だという噂を聞いたが、それはどうやら本当らしい。
寝る生徒曰わく、学校で勉強するよりも塾や独学の方が効率がいいから学校で寝て家で勉強をするらしい。
確かに一理あると思う。僕も学校で勉強をするよりも独学の方が効率がいいと思う。実際、公立中学校に通っていたが、数学と英語は高校の範囲は独学で終わらせている。独学でできるのであれば独学でやった方が効率はいいのだろう。
でも僕は人が話しているのに寝ることなんてできない。僕が真面目気質だと言われることも関係しているだろう。
人と話すことは苦手だし、できれば1人でいたい。
でも話は聞かないといけない。聞き流す、といっても、後で思い返そうと思えば思い返せる。
スマホを触っているのは論外。この学校は、スマホの持ち込みは禁止されていないけれど、敷地内で電源が入っているのはアウト。使うのなら敷地外に出てから使わなければならない。
休み時間中に敷地外にでることは許可されているから、連絡をしたいときは休み時間などに敷地外に出ないといけない、ということになっている。
実技教科以外は適当にこなしつつ、実技教科では悲鳴をあげつつ、4月の授業は乗り切った。
友達といえるような関係の人はいないけれど、中学校のときも同じようなものだったから問題ないだろう。
休み時間にはずっと読書をしている僕に近づいてこようとする人もいなくて、僕から話しかけにいくこともなかったから、僕はクラスの中で孤立した。
これでいい。
授業でペアを組まないといけないときにぐらいしか困ることなどはない。成績はトップだから、ペアを組むことを申し出ても嫌がられることも特にない。
何も問題ない。
これでいい。
そういえば、入学式の日に欠席していた子は、まだ1度も学校に来ていない。
先生は家庭の事情だと言っていた気がする。
あの子の名前は何だっけ・・・・・・。そうだ、菊原さんだ。
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