菊原さんは何を考えているのかよくわからない。

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公開日時: 2021年1月25日(月) 04:00
文字数:1,405

冬休みになった。


休み明けのテストに向けての勉強を菊原さんとしつつ、年賀状はどうしようかと考える。

年賀状。

年賀状、送った方がいいのだろうか。

僕は冬休み中、2日に1回くらいは菊原さんの家に来ているわけだけど、それでもやっぱり年明けの挨拶って必要だよな・・・・・・?


うーん、どうなんだろう。

調べてみよ。



あー、なるほど。

どうやら、昔は年賀の挨拶を一軒一軒まわってやっていたらしい。だが、交流の範囲が広くなってきたりして、そういうわけにもいかなくなった。だから年賀状を出す、と。

なら出さなくていいのか。


「風間君、酸化剤と還元剤、って何?」

スマホから顔をあげて、首をかしげている菊原さんを見る。

酸化剤と還元剤。

・・・・・・ど忘れした。



年が明け、神社へ。

受験前には、九州在住ということもあり、大宰府天満宮に行くようにしているが、今回は大宰府までは行かない。お礼参りももう済ませてあるし。

近所にある神社だ。

家族で行く予定だったが、菊原さん、というか、菊原さんのお母さんに誘われて、菊原さんたちと一緒に行くことにした。

そのことを両親に伝えたときには

「お、ついに彼女ができたのか!?」

と父が大袈裟に騒いだので

「そんなわけないでしょ」

と言って自室に帰った。



神社で。

「風間君は、何をお願いしたの?」

「それは・・・・・・」

恋愛成就。

だけど、そんなこと恥ずかしくて言えない。

「1年間、健康に生きられること、かな」

「そうなんだ」

「菊原さんは?」

「私は、1年間死なないで健康に生きることだよ」

死なないで、って。大袈裟だな。

でも、そういえば。

「菊原さんって、その、持病とかあるの?答えたくないならいいけど」

菊原さんが去年欠席した回数は多く、そもそも4月には登校していない。

聞いていいのかわからなかったが、聞いてみた。

「あー、うん、まあね。生まれつきのやつでさ。そんなに重いやつじゃないんだけど、時々学校休んじゃう」

「ああ、そうなんだ」

あれ?菊原さんのお母さんの顔が、若干曇ってる気がする。

いや、気のせいか。



翌日。

いつも通り菊原さんの家に来て、勉強を教えていると。

「あ、雪だ」

雪が降ってきた。

「積もるかな?」

「僕、寒いの苦手だから積もるような気温になってほしくないな・・・・・・」

「そうなんだ。私、雪だるまとか作ったことないから、作ってみたいな」

「僕も作ったことないよ。ここ、九州だし。雪だるまつくれるくらいに雪が積もることなんて、数年に一度しかないよ」

「へー、そうなんだ。じゃあさ、雪積もったら、雪だるま作ろうよ」

「・・・・・・僕ら、高校生だよ?」

「いいじゃん。ね?」

「・・・・・・はぁ。わかったよ。まあいいよ」

「やった」



そして更に翌日。

僕は防寒具を厚く着て菊原さんの家に来た。


そう、雪が積もった。


「約束通り、雪だるま作ろう!」

雪だるまか。

菊原さん、子供っぽいところもあるんだな。


雪を集めて、まるめて、崩れて。

・・・・・・我ながら不器用だな。いつまでも雪だるまが完成しないような気がする。

「おりゃっ!」

「痛っ」

後ろから攻撃された。

これは・・・・・・雪合戦というやつか。

「こら、晴良。駄目よ」

「えー、ごめんなさい」

雪合戦が始まるのかと思ったが、菊原さんのお母さんが止めてくれた。

助かった。雪合戦なんてボロボロにされる予感しかしないし。


その後、結局雪だるまは完成したのだが、数時間後には溶けてなくなってしまった。

何か、悲しいな。せっかく作ったのに。

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