「海だーっ!」
佐藤さんが五月蠅い。
「海、初めて来た」
菊原さんは海が初めてらしい。そういう僕も初めてなのだけれど。
「海って、楽しいの?」
いや、僕に聞かれても困る。
水着に着替えてから再集合。
「可愛いね、菊原さん」
「・・・・・・ありがとう」
顔を赤くしている。
菊原さんはビキニに近い水着を着ている。というか、女子は全員そんな感じだ。
男子は普通。トランクスとかいうやつ。
「鈴木」
「ん?」
「風間君を見習いなよ」
「あー、佐藤、可愛いよ」
「心こもってなさすぎでしょ」
「中島さんも可愛いね」
「当然でしょ?」
風間君は転入生に積極的に話しかけにいっているようだ。やっぱり・・・・・・。
「風間君もそう思う?」
2人を見ながら菊原さんが聞いてくる。
「うん」
でも、あの、その。
その姿でそんなに近寄ってこられると困ります。目のやりどころというか。その。
「俺にはどうせパートナーなんていないよ・・・・・・」
1人で泣くフリをしている近藤君。
「あれ、吉良さんは?」
「後ろにいるけど?」
「うわっ!?」
後ろを見ると吉良さんがいた。びっくりした。気付いてなかった・・・・・・。
「その反応ひどくない?」
そういえば、吉良さんは去年も同じクラスだったんだっけ。
あんまり記憶に残ってないな。
「ほら、どう、可愛い?」
「あー、うん、可愛いと思うよ」
可愛いと思っていても相手に可愛いと言うように強要されると可愛くなくみえてくる。何故だろう。
「それにしても、ここカップル多いよね。ここに一組、あっちに一組、そこにも一組」
「あ、私たちはカップルじゃないよ」
何故か分からないが、心が一瞬沈んだ気がした。
「え、そうなの?そんなに近づいてるのに?」
「ただの友達だよー」
「本当に?」
「うん」
「吉良さん」
「ん?」
「吉良さんがここにいると、近藤君が本当に孤独になるんですけど」
「あー、まー、いいんじゃない?近藤だし」
可哀想な近藤君。
「風間が行けばいいじゃん、近藤のところに」
「ああ、そうだね」
「え、行っちゃうの?」
何、行っちゃうの、って。
寂しがってくれているのか?と思うと何故か喜んでしまう。
「いや、普通に近藤呼んでくればいいだけじゃん」
「まあ、そうだね」
8人集合。
「で、何する?」
「まずは海で適当に遊ぶもんじゃないの?」
「ビーチバレーは?」
「水鉄砲?」
最後のは見当違いでしょ。
浮き輪に乗って海でプカプカと浮かぶ。
このまま何も考えなくていい時間が延々と過ぎていけばいいのにな・・・・・・。
「風間君、何考えてるの?」
「んー、ダラダラと過ごしたいなー、って。最近忙しかったし」
「ダラダラと?時間の無駄じゃん。意外」
「疲れをとったほうが効率がいいこともあるんだよ。時間の無駄が全て悪ってわけじゃない」
「そうなんだね」
「まあ時間がないときにダラダラしてたらだめだけど。海に遊びに来てる時点で時間をもてあましている、ってことだしね」
「楽しむために時間を使ってるんだよ。ほら、遊ぼうよ」
「もうちょっとこのままで・・・・・・」
「やっ!」
水が飛んできた。
鼻に入った。
痛い。
「やってくれたね・・・・・・」
浮き輪から下りて。
「よいしょっ!」
菊原さんに水をかけた。
「うひゃぁっ!」
それを遠目で見る近藤。
「あれがイチャイチャ、ってやつか・・・・・・」
その近藤の肩に手をかける吉良。
「そうだよ、あれが私たちには永遠に到達できないイチャイチャってやつだよ」
近藤は村田たちを見る。
「あれは・・・・・・上手くいきそうにないな」
どこからどう見ても、中島は村田から距離をおこうとしている。村田はそれに気付いていないようだった。
「あいつらは今まで通り、か」
鈴木と佐藤は浮き輪を投げ合っていた。
「あー、俺も彼女ほしー。吉良さん、俺の彼女にならね?」
「断固拒否する」
「だよなー」
近藤は海に潜った。
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