異世界きんたま転生

~駄女神と共にきんたまを集めて世界を救う宇宙一くだらない物語~
退会したユーザー ?
退会したユーザー

第5話 出会って5秒で美少女に通報

公開日時: 2021年6月11日(金) 21:01
文字数:1,942

「おいおいおいおいおい! どうすんだよこれ!」


「私に聞かないでよ! こんなものを吐いたアンタが悪いんでしょ!?」


 ……という感じで、現在俺とメイナは路地裏にて言い争いをしていた。


 俺たちの足元には……未だ眠り続けるおっさんと……その顔面に堂々と乗っかってる……ゲロ。


 ―――――――マジでやっちまった!

 異世界に来て1秒でゲロ吐くって我ながらなんなんだよ!


「と、と、と、と、と、とととりあえずこのおっさんごとゲロを凍らせて、証拠隠滅しましょう! アル・スティール!」


「待て待て待て! このすばとリゼロが被ってる! 第一お前アルレベルを使えるほど強くねぇだろ多分! って、そうじゃなくて!!」


 あまりの緊急事態に慌てまくる俺たち。


 ――――――ダメだ。もうマトモに考えられなくなってきた。

 ……………てか。


「割りとマジでこのおっさんをなんとかしねぇと! こんな所を誰かにでも見られたら……序盤のナオフミみたいにややこしいことに……


「あの~……そこのお2人。一体そんなに慌ててどうしたのですか?」


 瞬間。路地裏の入り口の方から、とある声が聞こえてきた。


「「――――――――――――」」


 俺とメイナは無言になり、声がした後ろを振り向くと……そこには、見知らぬ少女がこちらを凝視して突っ立っていた。


 ――――――そして。


「……………………」


 少女はしばらく無言になったと思ったら。


「衛兵さん連れてきます」


 そう言って、路地裏を出ようとしたので。


「「ちょっと待ってぇぇぇぇぇ!!」」


 俺とメイナは肩を掴んで必死に止めた。






 ――――――見知らぬ少女。

 恐らく背丈的に俺より年下だろう。

 桃色の髪を肩まで伸ばし、身長相応の胸があり、全身黒い服を着た―――見知らぬ少女。


「…………本当に、これは一体……どういう状況なんですか?」


 少女はその青色の瞳を細め、腕を組みながら俺たちに聞いてくる。


 ……ちなみに。俺とメイナは今、ゲロおっさんの横で正座をして、少女に見下ろされてるといった形だ。


「あの~……いや、これはですね……」


 俺はなにか良い言葉を探そうと頑張るが……なにを言っていいのか分からない。


 神界から『ワープ』をしてきてその『ワープ』で酔ってゲロを吐きました。……なんて言っても信用されそうにないし。


 ――――――これは一体どうすれば。


「とりあえず…………お聞きします。このお方に吐瀉物を吐いたのは……どちらですか?」


 そう思っていると、少女はゲロおっさんを指差し、質問してきた。


「あ、それはこの男よ! このバカスグルが勝手に吐いただけで、私は無関係よ!?」


 メイナが手を上げて勢いよくそう言う。


 くっそ! たしかにそうだけど! なんの弁解の余地もないけど! だからってんな正直に言わなくても良いじゃん! ちょっとは庇ってくれよ!!


「…………………」


 メイナの発言を聞いた少女は俺の方を向き。


「本当なんですか?」


 と聞いてきたので。


「…………はい。本当です………」


 俺は正直に答えた。


「―――――そう……ですか。……なんというか……本当にヤバいですね。―――えーと……バカスグルさん……でしたっけ?」


「いやバカは余計! スグルだから! 普通に五十嵐 傑だから!」


「イガラシ・スグルさんですか……」


「そうそう! ………ちなみに、君の名前は?」


「私……ですか? 私はペルシです。ペルシ・ミリア」


「ペルシ……ちゃんか……」


 名前が判明した少女―――ペルシちゃんに対して俺はそう呟き。


「で、この惨状のことなんだけど……」


「はい。スグルさん。ちゃんと説明してください。どうして国王様にこんな汚物を吐きかけることになったのかを」


「そうだよね。……分かった。ちゃんと話すよ」


「正直に言ってくださいね。……場合によっては罪に問われる可能性もありますよ」


「まぁ……だよな。国王にゲロを吐いたってなると…………―――――――――。――――――――――――――――――。―――――――――。――――うん?」


「…………? どうしたんですか?」


「え、いやペルシちゃん今……なんて言った?」


「え? ……いやですから、罪に問われる可能性もあると」


「そうじゃなくて! その1個前! 1個前に……このおっさんのことをなんて……」


「? ……だから、あなたたちもご存知の通り、顔に吐瀉物をかけられて、今もなおここで眠っていらっしゃる方は、このメラキアの国王様ですけど……って」


「―――――――――――」


「―――――――――――」


 そこで一度俺とメイナは顔を見合わせ。


 大きな深呼吸をしてから。


「――――――――もう一度……」


「言ってくれるかしら―――――?」 


 人生でかいたことのない量の冷や汗をかきながら、ペルシちゃんにそう言った。


 ――――――どうやら俺は。

 異世界に来て1秒でこの国の王様にゲロを吐いた………らしい――――――。


【つづく】

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート