異世界きんたま転生

~駄女神と共にきんたまを集めて世界を救う宇宙一くだらない物語~
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第4話 異世界に来て1秒で〇〇をした話

公開日時: 2021年6月11日(金) 12:36
文字数:2,706

「それじゃ、早速メラキアへレッツゴーしましょう!」


「はぁ…はぁ……はぁ………」


 ツッコミすぎて疲れてる俺を他所に、メイナは意気揚々とそう言う。


「……てか、メラキア……人間界って、どうやって行くんだよ」


「ふっふ~ん。良い質問ね! しょうがないから教えてあげるわ!」


「あ、じゃあ結構です」


「聞きなさいよ!」


 メイナがつっこむ。

 ………こいつ。ツッコミも出来るんだな。


「……ゴホン! まあ良いわ。それじゃ説明するわね!」


 一度咳払いをして、メイナは喋りだす。


「メラキアへは、『ワープ』を使って行くのよ!」


「――――――『ワープ』?」


 なにやら急に異世界っぽい単語が出てきた。


「そう! 『ワープ』よ! ……えーと、まず。私たち女神には女神熟練度というのがあるのよ!」


「女神……熟練度」


「女神を1~10の数字でランク付けすることね!」


 ほう―――――。

 1~5までで数字を付ける学校の成績表と似たようなもんか。


 ――――ちなみに、俺は3年間ずっと1~2を行き来してたが、親にはずっと3だと嘘をつき続けてきた。


 ―――――あぁ………もう二度と会えないくらいなら、ちゃんとした真実を伝えとくべきだったなぁ。


「………っと! ちょっと! どうしたのよ?」


 そんなことを考えてボーッとしてる俺にメイナが顔を覗かせて聞いてくる。


「っうぇ!? いやなんでもねぇよ。……で、その女神熟練度がなんだって?」


「うん。でね。その制度があって、ランクが1~3の女神は人間界へ『ワープ』が出来ないの!」


「―――――――――――で?」


「で? じゃないわよ! 私は人間界へアンタを連れて『ワープ』が出来るのよ!」


「………………いや、それさっきも聞いた……」


「―――――――――――――」


「え?―――――――――――」


 何故か空気が悪くなり気まずくなる。


 ―――――――――――――。


 ―――――――――あっ!


「お前! 自分が女神熟練度が4以上あるってのを自慢したいの!?」


「そう! その通りよ! なんで気付かないのよ!」


「いや分かりずれぇ自慢の仕方すんな! ……じゃあ一応聞いてやるが、お前の熟練度はなんなの?」


「6よ!」


「いや微妙!!」






 その後、またも少しメイナと言い合った後に。


「それじゃあそろそろ『ワープ』始めましょうかね!」


 と、駄女神は言い出した。


 ―――――次の瞬間。メイナの手はキラキラと光り輝きだす。


「おぉすげぇ! なんかやってること女神っぽい!」


「いや女神だから! 純然たる女神ですから!」


 そう喋ってる間も、メイナの手は光り続け。


「うぉっ!? なんだ!?」


 途端に、その『ワープ』とやらが始まった。


「こ、これが……『ワープ』!?」


 一瞬にして真っ白な虚無空間から、謎の空間へと移動する。

 辺りを見回すと、そこは先ほどまでの虚無な背景とは違い、様々な色……レインボーが辺り一面に広がっている。


 ――――――――そして。


「な、なんだこの浮遊感……」


 そう。俺はそのレインボー空間で浮いていたのだ。


「これが『ワープ』……ってやつか。……てかメイナは?」


 この空間に入ってから、メイナの姿が見当たらない。

 いなくなったらなったで静かだから良いのだが……流石にこんな未知の場所となると話しは別だ。


「あいつマジでどこに……」


 こう呟いてる間も、俺はレインボー空間で浮いてる……というより、下に向かって沈んでいる。


「真下に……なんか光りがあるな」


 なんとなくだが、あの光りの場所に落ちれば良い気がして、俺は身を任せひたすらに落ち続ける。


 ――――――――――――――。


 ―――――――――ん?


 ――――――――なんか……変だぞ。


 この感覚―――――――どこかで。


 思い出せ……これは…………そうだ。小学生の頃、遠足のバスで吐いた思い出。

 

 ――――――――――あぁそういえば。

 俺って酔いやすい体質だったな。


 ―――――――――――――っ!?


 瞬間。俺は落ちてゆく浮遊感に耐えられず、口を塞ぐ。


 ―――――そう。来たのだ。吐き気が。


 やっべ。この『ワープ』空間……超気持ち悪ぃ! 吐きそう!


 俺はそう思いながら必死に耐える――が。


 ヤバいもう限界だ。

 ブツが……アレが、もう喉まで上がってきる!


 もう…………ヤバいヤバいヤバい!

 あ、……………ぁ、ァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!


「―――――――――――――ぁ」


 瞬間。唐突に『ワープ』が終わり、俺はレインボー空間から外に出た。


 ………………そして。


「おぼっぼろろぼっっおおぼっぼぼぼ」


 俺はここがどこかも分からないまま、吐いてみせた。


「ハァ……ハァ………ハァ………」


 口から汚物を完全に出しきり、場所を確かめるべく周りを見渡す。


「………ここは……路地裏?」


 そう。その文字通り、今俺がいる場所。今俺が吐いた場所は、路地裏だった。


「メイナが言ってた……第2宇宙のメラキアが……ここ……か。そして、そのメラキアの路地裏に俺は『ワープ』をしたと。……なんで異世界のリスポーン地点が路地裏なのかは謎だが……」


 好都合だ。

 ちょうど路地裏だったお陰で、俺が汚物……ならぬゲロを吐いた瞬間は誰にも見られてない。


「ふ~、良かったぁ。ここが大通りとかだったら社会的に死んでたな………」


 そう言った瞬間。ゲロを挟んだ反対側の何もない空間が突如として光りだし。


「よっと! よし、無事に着けたわ!」


 その光りの中からメイナが出てきた。


「メイナ!」


「あら、アンタの方が先に着いてたのね。まぁ、『ワープ』には個人差があるし、しょうがな…………い…………か……―――」


 途中までいつも通りに喋ってたメイナだが、突如言葉が詰まった。

 その原因は………間違いなく。俺のゲロが落ちてるのを見つけたからだ。


「………バカスグル。アンタこれ……なにやったの?」


「すまん。あの『ワープ』空間が気持ち悪すぎて吐いちゃった。………ま、特に誰にも見られてないし、迷惑もかけてないから大丈夫っしょ!」


「―――――――え?」


「―――――――え?」


「―――アンタこれ……見えてないの?」


「見える? なにが?」


「いや、アンタが吐いた場所を……じっくり見てみなさいよ」


「いやいくら自分のだからってあんまじっくり見たくはないけど……なに? 一体なにがかるん……だ…………――――よ」


 ―――――――そう。


 俺がゲロを吐いた場所……地面に、いたのだ。


「嘘………だろ………?」


 ――――――おっさんが……中年太りしたおっさんが……いたのだ。


 俺の―――――ゲロを顔面に浴びて、何故かぐーすか寝てる―――――おっさんが。


「――――――――――」


「――――――――――」


 俺とメイナはお互い無言で顔を見合わせ。


「――――事後処理はよろ…ブルッキゥ!」


 そう言って逃げ出そうとした俺をメイナがぶん殴った。


【つづく】

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