完結済 短編 SF / 冒険・バトル

ダ・カーポ

公開日時:2023年5月25日(木) 13:33更新日時:2023年5月25日(木) 13:33
話数:1文字数:27,456
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【プロローグ】

 ミズーリオは目を覚ました。そこは寝室だった。

「・・・夢?」

ミズーリオがリビングに行くと、置手紙があった。

「『アト少シ付キアッテホシイ』・・・何だ、これ?」

その時、脳裏に声が響いた。

「起キタノダナ?」

「その声は、メフィラス!どうして?」

「実ハ、私モ中間ノ力ヲ使エルノダ。コレガ何ヲ意味スルカ分カルカナ?」

ミズーリオは驚いた。

「まさか・・・」

「ソノマサカダ。私ハ死ノ間際ニ力ヲ使ッタ。君ト会ッテマダ死ニタクナイト思ッテシマッタノダ」

「僕のせいみたいじゃないか」

「君ノセイダ。私ハ死ヲ受ケ入レル気ガ変ワッテシマッタノダ」

「一体いつまで戻った?」

「今ハ私ガ死ヌ時カラ百年ホド前ダ。コノ時期ニ地球デハ、夢計画トイウモノガ進ンデイル」

「夢計画?」

「プログラムヲ利用シタ願イヲ何デモ叶エルトイウモノダ。ナカナカ興味深イ内容ダッタノデ、体験シタイト思ッタ。但シ、一人ダケデハツマラナイノデ、君モ招待シタイ」

「それを体験したら死を受け入れるのか?」

「単ナル体験デハツマラナイ。私ヲ楽シマセテクレタマエ」

ミズーリオは思った。

(楽しむ・・・砂漠でも聞いた。まさか、あれは他の宇宙人ではなく、メフィラスが言ったのか・・・?)

ミズーリオは尋ねた。

「楽しめなければどうする?」

「何度デモ繰リ返スノダ。私ガ死ヲ受ケ入レテモイイト思エルマデ」

ミズーリオは思った。

(メフィラス・・・間違いなく最も恐ろしい宇宙人だ。何としても楽しませなければいけない)

ミズーリオは言った。

「分かった」

「楽シミニシテイルノダ。デハ、夢デ会オウ。サラバダ」

「く、頭が重い・・・」

ミズーリオは眠った。


 

【第1章】

 戦争の時代、寂れた町はずれの道を歩く青年がいた。彼は覚束ない足取りで歩いて、道に横たわる老人に躓いた。

「前を見て歩け!」

「すまない・・・」

彼は放心状態だった。町では、一つの話題で騒いでいた。”キンコウの三剣士”。火の国、風の国、土の国の三国を代表する剣士が象徴となり戦争を終結させた。三人の剣士は特殊な力を持つ石をはめ込んだ聖剣を与えられていた。”キンコウ”とは、聖剣の輝きの意味の”金光”、国を平等にする意味の”均衡”、それから田舎出身の意味の”近郊”の三つの意味があった。

「私も、彼らと同じ志を持ち、同じ道場に通った剣士だった。それなのに、私は・・・」

もともとは、キンコウの三剣士は、キンコウの四剣士だった。三国の他に戦争に参加しておらず、戦争の終結の中心となった水の国があった。水の国を代表とする剣士、ミズーリオ・オーシャンは、その一人だった。しかし、彼は弱かった。彼を守るために、同盟を結んだ四国は敗戦しかけた。その後、彼を除いたキンコウの三剣士が奮闘し、勝利を収めた。ミズーリオは行方をくらました。町はずれの青年こそ彼だった。

「こんな素晴らしい剣を与えられても、私には扱えない。武器商人の貴族ゴールド家に嫁ぎ、武器を授けてくれた姉さんに怒られてしまうな。もっと私に相応しい武器がどこかにあるはず…」

「武器をお探しかな」

彼の心を読んだかのように、一人の露天商が声をかけてきた。

「これなんていかがかな」

露天商が勧めたのは、薄汚れた剣だった。

「一見弱そうだが、抜いた者にとんでもない力を与えるとか。但し、抜ければの話だが」

ミズーリオは興味を持った。

「それはどういうことだ?」

「選ばれた者にしか抜けないということだ」

「選ばれし者・・・」

聖剣を与えられたとき、言われた言葉だった。

「その剣、いくらだ」

「金はいらん。持っていけ」

「いいのか?」

「むしろ、持って行ってほしいのだよ。誰も使えないので返しに来る。もう返さなくていいぞ」

ミズーリオは薄汚れた剣を持ち去った。

「その剣の名は”悪宿剣”。悪魔が宿るといわれる剣。悪さをしなければいいのだが・・・」

ミズーリオが家に帰ると、そこに三剣士の姿があった。ミズーリオは陰から様子を伺った。火の国の剣士、アルフレア・ヴォルケーノはドアをノックした。

「おい。ミズーリオ。いないのか?いたら返事しろ。おい」

「アルフレア。そんな何度もノックしても意味がない。留守なんだろう」

アルフレアに言ったのは、土の国の剣士、クェーク・メガだった。

「何だ。折角三剣士が来たというのに。残念だ」

「あいつ、何を気にしてんだ。行方をくらましたところで、何も変わらないぜ」

アルフレアに言ったのは、風の国の剣士、タイフーン・カルパだった。

「これを見せに来たというのに」

アルフレアの手に握られていた一枚の手形だった。ミズーリオは三人の言葉、そして一枚の手形からある考えに至った。(私を追い出そうとしている?)ミズーリオは飛び出した。

「ミズーリオ!そこにいたか。これを渡したかった」

「そんなものはいらん!」

ミズーリオはアルフレアの手を払った。手形がひらひらと地面に落ちた。タイフーンがミズーリオの胸倉を掴んだ。

「何すんだ。アルフレアに謝れ!」

「それは私への手切れ金だろ」

「お前、弱いからってひねくれるんじゃねえ!」

「・・・どうせ私は弱い」

「お前は道場の頃から変わらねえな。どうせ、どうせ、とひねくれるのは逃げているのと一緒だぜ!」

「ひねくれているわけではない。強くなろうとしても強くなれないのだ」

「強くなりたいなら俺らに勝ってみやがれ!」

クェークが間に入って宥めた。

「まあまあ2人とも。ぐ・・・」

ミズーリオは悪宿剣を抜いていた。

「クェーク!お前、やりやがったな。本気にしやがって、ひねくれ野郎!」

タイフーンが緑に輝く聖剣を抜いた。

「これでも食らいやがれ!”金光ゴールデン竜巻ヴォルテック”!!」

聖剣から放たれた凄まじい竜巻がミズーリオを捕らえた。

「少し頭を冷ましやがれ」

直後、竜巻が切り裂かれた。

「馬鹿な・・・俺の必殺技が敗れただと!?あのミズーリオに」

ミズーリオは不敵な笑みを浮かべた。そして、一目散に駆け出した。

「うぐ・・・」

タイフーンが倒れたのを見て、アルフレアが聖剣を徐に抜いた。

「ミズーリオ。お前は仲間に刃を向けた。その行いは許すことは出来ない。覚悟せよ」

赤に輝く聖剣に炎が纏われた。

「”金光ゴールデン業火ヴォルケーノ”」

ミズーリオを激しい炎が包んだ。

「これは不可避の炎。とどめを刺すときにのみ使用する技だ。誰も生きてはいられない」

その時、炎が二つに分かれた。

「何・・・そんなはずが・・・」

ミズーリオは不敵な笑みを浮かべた。アルフレアはミズーリオの一撃を受け止めた。

「ぐ・・・なんて力だ。まるで悪魔に憑りつかれたかのように・・・」

直後、ミズーリオは素早い剣戟で、アルフレアを斬った。その場は静まり返った。ミズーリオは敵を失って、意識を失った。数時間後、意識を取り戻した。

「こ、これは・・・私がやったのか?なんて非道いことを・・・許してくれ、許してくれえ・・・」

ミズーリオは頭を地面に付けて謝り続けた。ミズーリオは立ち上がると、定まらない足取りで山奥に入って行った。道は険しくなり、気づくと、目の前に道がなくなっていた。足を踏み出そうとしたところに一人の僧が声をかけた。

「帥、ここは崖。何をしておる」

「・・・私はとんでもないことをしてしまった。もう生きてはいられない」

「何をしたのだ?」

「親友を殺した。それも三人も。私は罪を償わなければならない」

「自害することが償いとは言えない。汝に考えがある。汝が帥の親友を蘇生してみせよう」

ミズーリオは僧の言葉に驚いた。

「それは生き返るということか!?」

「そうだ。交換条件として、帥の持つ剣を預からせてもらう。良いか?」

ミズーリオは了承した。その後、僧は術を使い、三剣士を蘇生した。

「しばらく眠ったままだろう。ついでに、死の直前の記憶を消しておいた。証拠を隠滅すれば帥がしたことは覚えとらんだろう」

「そんなことまで・・・あなたは一体・・・?」

「汝は寺の住職である。古来より伝わる秘術を扱えるよう日々修行に励んでおる」

「私も修行させてください」

僧はミズーリオの目を見た。

「ついてくるがよい」

それから、ミズーリオは厳しい修行にひたすら耐え忍ぶ日々を過ごした。その間、ミズーリオは僧に関する疑問を抱いていた。断食の七日目、ミズーリオは僧に尋ねた。

「一つ尋ねたいのですが、あなたの声と似ていた、私に剣を勧めた露天商は、知りませんか?」

「ふぉっふぉっふぉ。ようやく気付きなすったか。それは私だ」

ミズーリオは身構えた。

「どういうことだ!?あなたは私に剣を勧めて、私が彼らを殺害した後に現れた。まるでこの事を仕組んだかのようだ」

「その通りだ。物語上そうなるようになっているのだ」

「物語・・・一体あなたは何者なんだ?」

「もういいだろう」

僧はミズーリオの方に手を伸ばした。気づくと、白黒の何もない空間にいた。

「ここはどこだ?は!お前は誰だ?」

そこには謎の宇宙人がいた。

「マダ思イ出サナイノカ。中間ノ力、コレデドウダ?」

「中間の力・・・」

ミズーリオは一瞬思考が停止した。そして、記憶を取り戻した。

「お前はメフィラスだな」

「ソウダ。ヤット思イ出シタカ」

「擬態できたんだな」

「少シダガナ」

「三剣士は六使徒のアルフレオ、タイフーン、クェークだった。一体あんなことをさせて何が目的だ?」

メフィラスは宝玉を取り出して見せた。

「コレヲ七ツ集メルノダ」

「それをして何になる?」

メフィラスはほくそ笑んだ。

「ソレハ集メレバワカルコトダ」

「断ったらどうなる?」

「私ハ死ヲ受ケ入レナイ」

ミズーリオは考えた後尋ねた。

「その宝玉はどうやって集める?」

「ヨクゾ聞イタ。答エル前ニ宝玉ハ何ダト思ウ?君ハ既ニ三ツ集メタ」

「三つ・・・まさか三剣士の命・・・」

「ソノマサカナノダ。宝玉ハ君ニトッテ大事ナモノ、ソレヲ君ガ集メルノダ」

「どうしてそんなことを私にさせるんだ?」

「物語ニ戻ル時間ナノダ」

「待て。言わずに行く気か」

「次ハ死後ノ世界デ会オウ。一旦記憶ヲ抜カセテモラウ・・・」

メフィラスが瞬間移動し、ミズーリオの頭に両手で触れた。気づくと、ミズーリオの体を僧が揺り動かしていた。

「・・・おい、大丈夫か。しっかりしなさい!」

「は!あれ?私は一体・・・」

「突然倒れたので驚きましたよ。修行で無理していたのでしょう」

「和尚様。私は悩んでいました。どうしたら罪を償えるのか、と。自分が弱いばかりに命を落とせば償えると思ってました。でも、それは逃げたことと同じだったのです。親友に言われて気づきました」

「ついに気づいたか。罪の償いは罪と向き合うことだ。それを君に気づかせたなら、いい親友を持ったな」

「はい。でも、私は親友に会わせる顔がありません。ここで命を尽きる覚悟です」

「そうか。それほどの覚悟をしたか。それなら、自ら悪宿剣を守ることを任せられるな?」

「それはつまり・・・」

「わしの娘との婚約をお願いしたい」

ミズーリオは婚約を引き受けた。それを聞き付けたミズーリオの姉アナスタシアが結婚式に現れた。

「おめでとう」

「姉さん!?どうして?」

「わしが伝えといた」

「和尚様も隅に置けませんね」

その後もミズーリオは修業に励み続け、闇を払った豊かな表情で死を迎えて行ったという。


 

【第2章】

 ミズーリオは、浮遊していた。辺りを見回すと、色々な情景が入り乱れる空間だった。目の前には、一つの巨大な扉があった。吸い込まれるように、次の場所へと移動した。ミズーリオが着いた先には、小さい者と大きい者がいた。大きい者が言った。

「ここは地獄。ここへ来た者は現世で罪を犯した者である。ここにおられる閻魔王様より裁きを下す」

小さい者が目を閉じ、ミズーリオの魂を見た。小さい者がビクンとし、目を開けて言った。

「お主、底知れぬ闇の持ち主と見た。泰山府君、決闘場へ案内せよ」

「真でございますか!?」

「真も真。後が控えておる。急ぎ給え」

「そういうわけだ。じっとしていたまえ」

ミズーリオは決闘場に転送された。周りが闇に囲まれた、長方形の何もない空間だった。中央より奥に小さい者がいた。

「お主は閻魔王候補に選出された。我を倒した暁には、次期閻魔王として認めよう」

「急に言われても・・・」

「いざ参る」

小さい者が両手で円を作ると、強力な闇の波動が放たれた。

「おわっ!」

「華麗な身のこなし。現世で鍛錬をしたと見える」

「鍛錬・・・厳しい修行なら嫌という程やってきた!」

「その成果を存分に見せてみよ!」

小さい者とミズーリオが互いに闇の波動を放出した。

「やりおる・・・」

「和尚様の教え、諦めるべからず!!」

ミズーリオが一歩進んだ。小さい者も一歩進んだ。互いに一歩ずつ進み、中央で最大出力を放った。

「「おおおお!!」」

靄が晴れた時、立っていたのはミズーリオだった。小さい者の体が言った。

「お主の勝ちだ。見事、次期閻魔王として認める。泰山府君、頼んだぞ・・・」

小さい者の体は徐々に薄くなり、消えた。大きい者がミズーリオの前で膝をついて言った。

「あなたは閻魔王となりました。私は閻魔王にお仕えする泰山府君と申します。身の回りのお世話をさせて頂くので、何なりとお申し付けください」

「はあ。でも、何をしたらいいのか全く分からない」

「ご安心ください。分からない時は私が手伝わせて頂きます」

ミズーリオは泰山府君の補佐を受けながら、閻魔王としての務めを果たしていた。ある時、泰山府君が言った。

「だいぶお慣れになりましたね」

「ああ。だいぶ要領が掴めてきた」

「では、そろそろ思い出してもらいましょう」

泰山府君がミズーリオの方に手を伸ばした。気づくと、白黒の何もない空間にいた。

「メフィラス!」

「物語ノ進行モ大事ダガ、宝玉ノ収集モ大事ダ」

「収集したくても記憶を抜かれてはできない」

「確カニ。記憶ヲ抜クコトハ控エル。コノ先ハ、自ラノ意思ガ必要ナノダ。ヒントハ、物語ヲ変エル行動、ナノダ」

「物語を変える行動・・・」

「宝玉ハ君ノ大事ナモノト説明シタ。ソノ事ト物語ヲ変エル行動ヲ合ワセルト宝玉ガ何カ見エテクルノダ」

ミズーリオは考えた。現実を維持する力を持つミズーリオは思い当たることがあった。

「まさか、物語の中心人物の命が宝玉」

「ソノ通リナノダ。因ミニ、コノ物語ノ中心人物ハ全部デ三人イル」

「中心人物、つまり主人公の命を奪うなんて、物語が変わるぞ!1人目がいなくなった時点で2人目と3人目が存在しない可能性もある」

「ソンナコトニナッタラ物語上モ君ニトッテモ問題ガアル。デハ、ドウスレバイイカ考エタマエ」

ミズーリオは閻魔王としての仕事に戻った。死後の世界では欲望がないので食べることも寝ることも必要なかった。その為、仕事をし続けることができた。

「それにしても、次から次へと死人が来るな」

ミズーリオは裁きをすることで一杯だった。(これでは宝玉を集めることができない)そう思ったとき、泰山府君が言った。

「何か他になさりたいのでしたら、私が代理になりましょう」

「いいのか?」

「はい。お任せください」

「あ、そう」

閻魔王の席に泰山府君が座り、仕事を始めた。ミズーリオは思った。(代理できるなら私はいらないのでは?それより、これで宝玉を集められる。しかし、どうやって・・・)ミズーリオは奥の部屋に行った。そこで、生き物と目が合った。

「ガルルルル」

「君はケルベロスだな。私の故郷ウルトラにいるのと同じだ」

ミズーリオが巨大化し、ケルベロスの頭を撫でた。

「自在に巨大化できる。これも故郷にいる時と同じだ」

「キュー」

「よしよし」

尻尾を振るケルベロスの前を通り、現世と繋がる扉の前に立った。

「じゃあ会いに行くとするか。1人目の主人公に」

ミズーリオは扉を開けた。


 

【第3章】

 発明の時代、リンク島が戦争を仕掛けられた。戦争を仕掛けたのは、ジョンという格闘自慢の男だった。世界一を決める闘技大会の決勝戦、ジョンは初めて敗れた。その相手、リンク島の王キングへの逆恨みで戦争が始まった。リンク島は敗れ、支配された。ジョンの怒りは凄まじく、周辺国までも次々と支配していった。爆風に吹き飛ばされたリンク島の王子リンクは海岸に流れ着いた。ウォーリーという発明家がリンクを介抱した。ジョンがリンクを探していることを知ったウォーリーは旅に出た。その途中、戦争の被害を受けた者を仲間にし、ジョンの追手と戦った。追手の中にはリンクの兄オーディンの姿があった。

「どうして兄さんが!?」

「世界王ジョンに栄光あれ!」

ウォーリーはオーディンが洗脳されていると見抜いた。リンクと仲間たちはウォーリーの発明したロボットで修行を積んだ。

「アタックタイプ、ディフェンスタイプ、スピードタイプと変化に対応するんじゃ!」

そして、修業を積み、リンク島での決戦に挑んだ。リンクは再びオーディンと戦い勝利した。

「父と母を頼む・・・」

「分かった!」

城の最上階で、囚われの身となった父と母を助けるため、リンクはジョンと一騎打ちに挑んだ。それぞれ伝説の獣フェニックスの力を纏った拳をぶつけ合った。

「俺はお前を倒す!!」

「恨むなら親父を恨めよ!!」

リンクは一騎打ちに勝った。その後、リンクはすべての領土を返還した。さらに、リンク島の王位継承も譲り、オーディンと共にリンク島の道場師範となった。その頃、囚われたジョンは親友に託し、命を絶とうとしていた。勇気を出せずにいたジョンの元に剣が舞い降りた。ジョンはその剣を抜き、自害できた。

「あれは悪宿剣!どうしてここに?」

空を飛ぶ鳥が呟いた。その後、リンクは旅立ったオーディンを追って旅立った。リンクの前に宇宙船が不時着し、中から二人が現れた。

「私はアグル。この星の危険分子を取り除きに来た。この男はラウス。無口だ」

「・・・」

「すまない。何か食べ物はないか?」

リンクはウォーリーを訪ねた。

「危険分子じゃと?わしも行こう」

その後、仲間たちを訪ねて、最終的に泉に着いた。そこには、伝説の獣フェニックスとバハムート、それから泉を守る者がいた。

「僕はハヤテ。彼らはドラグーン。泉には癒し効果があるんだ」

その頃、砂漠では二人の旅人が出会った。

「雷族め。妙な技を使う」

「あれは聖剣か?一筋縄ではいかねえ」

激しい攻防が続き、嵐が生まれた。

「何だ?この者らは」

空を飛ぶ鳥は嵐を避けた。嵐がリンク島を襲ったとリンクの後輩ブルースに聞き、リンクと仲間たちは砂漠へ向かった。

「ここから嵐が来たんだよな?」

「俺たちの嵐を止められるか?」

手を結んだカトリーナとロック・メガと戦いになったところに新たな敵が現れた。

「いいものを見せてもらった」

「あの者が危険分子だ」

その人物こそジョンの親友ワスプ・シャウトだった。ワスプはカトリーナとロックを手下に誘ったが、二人は断った。

「これを見てもそう言えるかな?」

ワスプは錠剤を飲み、巨大化した。それを見て手下となった二人と共にワスプは去った。

「実験を終えたら、また会おう」

リンクと仲間たちは初代英雄の後、途絶えていた英雄と聖剣を探すことにした。火、水、風の英雄と聖剣を見つけ、リンクと仲間たちは新たな力を手にした。一方、ワスプもまた実験を終えた。一つの山が消えたという噂を聞き、そこへ行くとワスプと手下がいた。

「よく来た。では、始めるとしよう。最期の戦いを!」

リンクとワスプの戦いが始まった。空を飛ぶ鳥はその様子を眺めていた。リンクと仲間たちはドラグーンに乗り優勢になったが、錠剤を飲んだ手下の攻撃でドラグーンから投げ出されてしまった。風の聖剣を使うハヤテとカトリーナとの雷族の対決、その横で水の聖剣を使うアグルと土の聖剣を使うロックとの聖剣対決が行われた。ワスプは実験の最高傑作を繰り出した。それは、伝説の獣ゴーレムに洗脳する物質”ニセ物質”を与えたニセゴーレム軍団だった。ゴーレムは分裂と合体が自由自在で、リンクと仲間たちを苦しめた。空を飛ぶ鳥は急降下した。(あれを使わせてもらおう。)鳥はどこかへ飛んで行った。(これは動きが鈍くなるな。)ゴーレムとなったミズーリオは、向かって来るリンクの仲間たちを払いのけた。(さすが主人公の仲間だけある。何度払っても何度も立ち上がってくる。仲間で苦戦していては宝玉どころではない。)ミズーリオは一体の巨大なゴーレムとなり、リンクと仲間たちを目掛け倒れた。その瞬間、ミズーリオは体に違和感を覚えた。(後ろから!?仲間か)

「危機に駆けつけないのは仲間失格だからな」

ジョンと戦ったリンクの仲間、鍛冶職人ガッテン、武器商人ゴールデン、雷族の兄弟マンとギャラクシー、それから忍び族ハイ・ストールだった。

「ゴーレムは俺らに任せろ。なあ博士」

「ハイ・ストールの言う通り、わしらは心配するな」

「お前ら、頼りにしてるぜ」

リンクはカトリーナとロックを倒したアグルとハヤテと共に聖剣を構えた。

「来たか・・・この”クジャ”が仕留める」

巨大化したワスプは山を砕いた。落ちる岩をハヤテが、踏みつけるワスプの足をアグルが防ぎ、炎の拳をリンクが放った。体勢を崩したワスプは、自動車の荷台に積まれた大量の錠剤をわしづかみにした。

「私の全てを引き出した最終形態”オズマ”。これで最期だ・・・」

ワスプは錠剤を飲んだ後、自分の力を抑えきれず苦しみ出した。

「うああああ!!」

ワスプは頭を抱え、地団太を踏んだ。激しい地響きで地面が割れ、ゴーレムが落ちて行った。(く、落ちる・・・!)リンクと仲間たちはドラグーンが来て助かった。フェニックスに乗ったリンクは苦しむワスプを目掛け飛んだ。

「ワスプ!!」

リンクの渾身の力を込めた拳がワスプの頬を殴った。ワスプの体内のエネルギーが暴走し、爆発した。

「ゆっくり眠れよ」

こうして、その後“ファースト・スクリーム”と呼ばれる戦いはリンクの勝利で終わった。(まだ、だ。)ゴーレムは地上に這い上がってきた。(見たところ、全員満身創痍だ。今しかない。)ミズーリオは再び一体の巨大なゴーレムとなった。

「ゴーレムは敵じゃないぜ」

リンクのフェニックスの力を纏った炎の拳を真正面からミズーリオは受けた。(これは一筋縄じゃいかない。考え直さなくてはいけない。)ゴーレムは動きを止めた。戦いを終え、仲間たちは別れを告げた。ガッテンは悪宿剣を保管した寺の和尚から悪宿剣の封印の手直しの依頼を受けていた。

「大きな仕事に戻る。またな」

ゴールデンは伝説に登場する女神が自分の祖先と知った。

「まさかゴールド家があの女神アナスタシアの子孫とは知らなかった!頑張って繁盛させないとな」

マンとギャラクシーは探していた雷族のはぐれ者を捕まえることができた。

「僕らの探していたカトリーナも捕まえられた。これから覚悟しろよ」

「分かったから離せ!もうこりごりだぜ」

ハイ・ストールは森に姿を消した。

「主よ。また必要があれば呼べ。手を貸す」

ウォーリーは森の小屋へ帰った。

「わしに出来る事があれば協力するぞ」

ブルースはリンクと共にリンク島に帰るつもりでいた。

「先輩、一緒に帰りましょう」

「ごめん、俺英雄になる」

「ええ!?本当ですか」

火の英雄アルフレイム・ヴォルケーノが言った。

「本当だとも。俺の家の婿に来るそうだ」

「そういう事だから、道場は任せた」

「先輩の頼みです。任せてください」

ハヤテはドラグーンと共に泉へ帰っていった。

「僕たちは泉にいるから、いつでも来て」

アグルとラウスを宇宙船が迎えに来た。

「迎えに来たぞ、アグル、ラウス」

「セブンか。感謝する」

リンクと英雄たちが残った。

「英雄が復活した。それもこれもリンク様のお陰だ」

「聖剣に再び光を当ててくれた」

「やはりあなたは、繋げる人だ」

「おれは戦った時からそう思っていた」

その様子を一匹の狐が見ていた。

「あれ?そういえば、オーディンはどこ行った?」

オーディンは世界一を決める闘技大会に参加して優勝していた。その開催地、カタナランドの姫と結婚し、繁栄させていくのだった。リンクが火の英雄の家で目覚めたある朝、異変に気付いた。

「聖剣がない!アルフレイム、起きてくれ!」

その後、聖剣は家の中を捜索しても見つからなかった。

「昨日ちゃんと仕舞ったか?」

「仕舞った。私は粗末な扱いはせん!」

「くそ!命に変わるほど大事なものだってのに!」

その様子を一匹の狐が見ていた。(もういいだろう。)狐は咥えていた聖剣を家の外に立てかけた。その後、英雄の妻が見つけ、しばらく険悪なムードが続いたという。(宝玉は主人公の命だった。つまり、命に変わるほど大事なものもまた宝玉となりえる。これで、宝玉は出現したはずだ。)ミズーリオは死後の世界に戻った。


 

【第4章】

 ミズーリオは開けていた仕事に戻ることにした。代理を務める泰山府君の肩を叩いた。

「あ、閻魔王様。お戻りになりましたか」

「代理ご苦労様。仕事に戻るよ」

「承知いたしました。補佐を致します」

ミズーリオが仕事に戻ってからしばらくして見知った人物が現れた。

「次の者」

「ここは地獄か?ということは目の前にいるのが、閻魔王か」

ミズーリオは目を見張った。その人物は、リンクの仲間の一人、ハイ・ストールだった。ミズーリオは気にせず仕事をした。

「魂に告ぐ。針山地獄へ行くがいい」

「針山は、忍び族の必須訓練だから楽勝だ」

ミズーリオは内心焦っていた。(私が焦ることはない。相手からはゴーレムにしか見えてない。たとえ強かったからといって焦ることはない。)

それからしばらくしてまた見知った人物が現れた。

「次の者」

「俺はやっぱ地獄に落ちたか」

(カトリーナ。リンクの敵の手下の一人)

「魂に告ぐ。灼熱地獄へ行くがいい」

「やってやろうじゃねーか!」

それからしばらく後。

「次の者」

「ふむ。おれは天国に行けなかったか」

(ロック・メガ。カトリーナと同じ手下の一人)

「魂に告ぐ。血の池地獄に行くがいい」

「面白い。こなしてみせよう」

ミズーリオが仕事をしながら思いに耽った。(そうか。彼らも死んだのか。)その時、泰山府君が手を伸ばした。気づくと、白黒の何もない空間にいた。

「メフィラス!急だったな」

「スマナイ。急イデイタノダ」

「それより、4つ目の宝玉は出現したか?」

メフィラスは宝玉を見せた。

「コノ通リ、宝玉ハ4ツアル」

「成功していた・・・」

「安心スル暇ハナイ。次ノ宝玉ガ現レタノダ」

「それなら急がないといけない。それよりどうして教えてくれるんだ・・・」

気づくと、ミズーリオは死後の世界にいた。

「泰山府君」

「何でございましょう?」

(メフィラスなのか・・・?)ミズーリオは疑問を押し込めた。

「代理を頼んでいいか?」

「承知いたしました」

ミズーリオは、奥の部屋に来ると、現世に繋がる扉を開けた。革命の時代、アーク・シャウトという秘めた力を持った少女がいた。アークは森で小動物のウリちゃんとよく遊んでいた。ある日、小動物が『立入禁止』と書かれた区域に入ってしまい、追いかけていった。アークは、区域の管理者に尋ねた。

「すみません、小動物を見ませんでしたか?」

「見ていない。さあ、出て行け」

アークが残念そうに帰ろうとした時、管理小屋の窓に小動物が一瞬見えた。アークは小屋の方に駆け出した。管理者は気づき、アークを止めた。

「どこへ行く!」

「だって、小屋にウリちゃんが!」

「ここへ来たのが悪い!あいつは売りに出せば金になる」

「そんな!やめて!」

「離せ!この!」

「きゃ!」

管理者はアークを殴った。アークは悲しみと怒りの感情で満ち溢れた。

「へっ!ここは俺の土地だ。分かったら出て行けよ」

「・・・ウリちゃんを返して・・・返してーーー!!」

アークから放たれた爆風はその区域だけでなく森全体を消滅させた。アークの母シャークは、家で編み物をしていた手を止めた。

「窓の揺れ。まさか、アークの力?」

シャークが森に向かうと、泣きわめくアークがいた。シャークはアークを抱きしめた。

「お母さん・・・ウリちゃんが・・・」

「辛かったね。後で聞くから、家に帰りましょ」

家に着くとアークはシャークに話をした。

「そう。今日はもう寝なさい」

「おやすみ」

「おやすみなさい。来るとしたら明日ね」

ある事を恐れて、シャークは夜通し家の片づけをした。しかし、シャークの予想より早くその事は起きた。家のドアを壊して、屈強な男たちが入ってきた。

「きゃあ!何ですか!?」

「森が消滅した。あの爆風はバーク・シャウトの力と同じものだ。あの男の力を受け継ぐ者がこの家にいるはずだ。探せ!」

「「イエッサー!」」

「やめてください!アークはそっとしておいてあげてください!」

「隊長!いました!」

「よし!連れて行くぞ!」

「「イエッサー!」」

「やめて…」

「お母さん!」

アークは悲しみと怒りの感情で満ち溢れた。しかし、力は発動されなかった。嵐が過ぎ去った後のように、家にはシャークだけが残された。

「アーク・・・」

アークを誘拐したのは、敗戦国の長だった。

「連れて参りました」

「よくやった。これで、かつて我々の国を滅茶苦茶にしたあの国にやり返すことができる。それも全く同じ手でな!」

翌日、シャークは放心状態を脱して、家の片づけをしていた。その中で、アークとの思い出のアルバム、それから『英雄リンクの伝説』を見返した。そこで、シャークは呟いた。

「夫のバークは会社で溜まった不満が爆発して力が知られた。彼は国に捕まって戦争に利用された。アークも間違いなく受け継いでいるわ。この英雄リンクの宿敵ワスプ・シャウトの力を。こうしてはいられない。早く連れ戻しに行かないといけないわ。頼れるのは、森に住むウォーリーさんだけど、無事かしら・・・」

ウォーリーは消滅した森の中の小屋で暮らしていた。その小屋は生命力の強い一本の樹によって守られていた。森はその樹によって元通りになっていた。

「いやあ、一時はどうなるかと思ったが、神様はいるのう。わしよりも、森の近くに住むシャウト親子は無事かのう?」

ウォーリーはシャークを訪ねた。

「留守かな?おや?これは・・・」

家にシャークの姿はなく、床に包丁が落ちていた。少し前、シャークは屈強な男たちに連行された。目隠しを外されると、目の前に椅子に固定されたアークがいた。

「アーク!」

「お母さん・・・」

元気がないアークを見て、シャークは国の長に言った。

「あなたがこの人たちの親玉ね!アークはあなたの為に力を使わない。離しなさい」

「どうやらそのようだ。だが、これでもそうかな?頼む」

「うっ・・・」

屈強な男の一人はシャークを押さえつけた。

「お母さん!」

「お前が力を使わないとお前の母親は死ぬ。いいのか?」

「そんなの嫌だ・・・」

アークの体は力を発動する前兆の光が放ち始めた。

「だめよ・・・力を使っちゃだめ・・・」

「さあ!その力であの偉そうな者たちをやってしまえ!!」

屈強な男が刃物を取り出した。

「やめてーーー!!」

アークから放たれた力がビームのように飛んで、その先で激しい爆風が起きた。

「いいぞ!もっとだ!もっとやれ!」

その時、窓が割れ、アークの元に剣が舞い降りた。アークが剣を持つと、スルっと抜けた。光を失った目をしたアークは、力を放ち、次々と周りを破壊した。

「おい、もういいぞ。ああ!」

アークの力で、国の長と屈強な男たちは火の海に落ちた。シャークは呟いた。

「私には何もできない。誰か・・・」

「大丈夫か!?」

「あなたはウォーリーさん!それと英雄の皆さん!」

四人の英雄たちはアークの持つ剣を見て声を揃えて言った。

「「悪宿剣!!」」

「あれを抜いた者は悪魔に憑りつかれたようになる」

「我々が止めるぞ」

アークは向かって来る英雄たちに力を放った。聖剣の力で防いだが、連続の力の発動には備えていなかった。そこに和装の剣士が現れた。和装の剣士はアークの悪宿剣を弾き飛ばした。

「あなたは伝説の剣士」

「シンメン・タケゾウ!」

意識を取り戻して力が抜けたようになったアークをタケゾウは抱き留めた。こうして、復讐の戦いは失敗に終わった。その後、この事件は“セカンド・スクリーム”と呼ばれた。この原因は悪宿剣と特定された。それを用いたアーク・シャウトには罪の代償が与えられた。アークの子孫は、悪者の意味“ノワール”の姓を代々継ぐことと、不吉な意味の名前を付けることを決められた。不吉な名前を持つ家族は世界各地に散らばるように身を隠した。それはさておき、アークは自由になった。一本の巨大な樹のある森で、タケゾウとアークとシャークが仲良さそうに暮らしているのを見て、ウォーリーは安心した。さらに、空を飛ぶ鳥も安心した。(1人目の主人公と同じなら、2人目は・・・。)ある夜、タケゾウはこっそりと家を出た。タケゾウは一週間帰らなかった。一週間後の朝、アークはタケゾウが帰らない事に泣き喚いた。シャークはアークを宥めた。

「大丈夫。もうすぐ帰ると思うわ」

「でも…ひっく…こんなに帰らないのは初めてだよ…ひっく」

様子を見ていたタケゾウことミズーリオは思った。(宝玉は出現したはずだ。もう返してあげよう。)

タケゾウが帰った後、アークは泣いていた事が嘘のように笑顔になったという。そして、ミズーリオは、死後の世界に戻った。


 

【第5章】

ミズーリオが仕事をしていると、泰山府君が雑務地獄を行う者から何やら報告を受けた。泰山府君はすぐさまミズーリオに伝えた。

「閻魔王様。来客でございます」

「来客・・・一体誰だ?」

「天国の代表者、女神様でございます」

「女神・・・」

「私もお迎えに同行いたします。参りましょう」

「仕事は止めていいのか?」

「この札を置けば大丈夫です」

泰山府君は『急用』と書かれた札を置いた。ミズーリオは奥の部屋に行った。泰山府君は肉を投げ、ケルベロスが一目散に肉を狙い、場所を移動した。すると、一つの扉が現れた。

「この扉は?」

「こちらの扉は、獄間の扉でございます。この先は狭間の空間に繋がっております。そこにある扉の先が天国に繋がっております。普段は侵入者から犬に守らせておりますが、女神様が来られるので、どかせたのでございます」

「そうか」

ケルベロスは必死に肉に食らいついていた。しかし、食べるのをやめ、獄間の扉の方に向いて吠えだした。扉が開くと、中から白い衣に包まれた者が現れた。(女神と聞いて、まさかと思ったが、本当にアナスタシア姉さんだった。)

「女神様。ようこそ地獄へお越しくださいました」

「話に入る前に、そのワンちゃんの警戒心を解くわ」

アナスタシアは手を振った。すると、白い光のようなものが舞い、ケルベロスに降りかかった。

「キュー」

「よしよし。いい子ね」

肉に食らいつくケルベロスの頭をアナスタシアが撫でた。

「さて、本題に入ろうかしら。閻魔王は背の小さい方で合ってるわね?」

「そうだ。ところで、姉さん記憶はあるか?」

ミズーリオは思い切って聞いてみた。

「記憶?生前の記憶ならあるわよ。和尚様に聞いてサプライズ登場したじゃない」

「そうか」

「どうしたの?」

「いや、あの時はありがとう。それで、話って?」

「その事なんだけど、単刀直入に言うわね。地獄の強者7人を揃えてほしい」

「強者7人・・・どうして?」

「単刀直入に言うと、その7人には、現世に生きる強者を淘汰してほしいのよ」

「淘汰?倒すということ?」

「そう。私は『環境の変化に適応しきれない動物は淘汰される』をスローガンに掲げ、現世で災害を起こしているのよ。訳は話すと長くなるから聞かないで」

「分かった。強者7人を集めればいいんだね?」

「そう。名づけて”ヘルセブン”よ」

「でも、言うことを聞いてくれるかな?」

「大丈夫よ」

アナスタシアは天国へ帰っていった。その後、ミズーリオは地獄めぐりの成績優秀者の上位七人を集めた。右からハイ・ストール、ワスプ・シャウト、ロック・メガ、カトリーナ、ジョン、ジョンの右腕ライトサンダー、ジョンの左腕レフトボディがいた。

「見覚えのある者たちが揃ったな」

ハイ・ストールが言った。

「拙者は何のために集められた?」

ミズーリオは答えた。

「君たちは現世に生きる強者を淘汰する任務を行う。名づけて”ヘルセブン”だ」

カトリーナが言った。

「へるせぶん?そんな任務やらねえ」

ミズーリオは答えた。

「任務を怠ったら、君たちは永遠に地獄めぐりをしてもらう」

ロック・メガは言った。

「それは勘弁してほしい。やるしかない」

「ヘルセブンは階級制だ。上からエンド、クロノス、シヴァ、ハーデス、アシュラ、サタン、デビルだ。今ここにいる右からその名前で任務に当たってくれ」

「俺が一番に任務を終えてやるぜ!」

「おれが先だ」

ヘルセブンの六人はすぐにいなくなった。一人残ったハイ・ストールは言った。

「拙者はここに残る。任務を怠るから地獄めぐりをして来る」

ハイ・ストールは地獄の獣と戦える闘技場へ行った。(まあいいか。)ミズーリオは仕事をしていると、泰山府君が手を伸ばしてきた。(来たな。)気づくと、白黒の何もない空間にいた。

「メフィラス。5つ目の宝玉は出現したか?」

「コノ通リココニ五ツアル。即チ、残リハ幾ツカ分カルカナ?」

「馬鹿にするんじゃない。残りは2つだ」

「正解ナノダ。但シ、コノ二ツハ今マデ通リニハイカナイダロウ」

「それはどういうことだ?やり方を変える必要があるのか?」

「ソウデハナイ。今マデノヨウニ簡単デハナイトイウコトナノダ」

「それはどうすれば上手くいく?」

「ソレハ自分デ確カメルノダナ。デハ、サラバダ」

ミズーリオは戻ると、泰山府君に言った。

「また代理を頼めるか?」

「勿論でございます」

ミズーリオは奥の部屋に来ると、ライトサンダーがいた。

「閻魔王様。報告いたします。リンク島の道場の師範、強者ウィンチェスターを倒しました」

「報告ありがとう。引き続き任務に当たってくれ」

「御意」

ライトサンダーは現世の扉を開けて出て行った。

「実際に会ってみないと分からない」

ミズーリオは扉を開けた。


 

【第6章】

 災害の時代、人類は戦争を止めた。“ファースト・スクリーム”、“セカンド・スクリーム”。この二度の大災害の後も度重なる災害を乗りこえる為、世界中の国々は一つになり、統一国家ユニオンが誕生した。災害と共に出現する獣と戦う直属の軍として国家防衛特殊部隊(Special Organization National Guardian)―通称ソング(SONG)が創設された。アークとタケゾウの孫で、忌み名マロー・ノワール、本名シンメン・サトリという少年がいた。ひょんなことからSONG隊員となったシンメン・サトリは、総司令官グレートに魅入られ、編隊タブラ・ラサに任命された。サトリは『会議室(仮)』と書かれた部屋に着いた。

「ようこそ。タブラ・ラサへ。この部隊名の意味は、白紙。いつでも動けるよう備えて、総司令官様の補助の役目をすることが基本だ!」

髭面の隊長モゲレオ・ノルマレンディーは総司令官グレートの父だった。

「また雑用か…」

「そう落ち込むな、新米。僕たちはね、何も抱える任務がないからこそ、何でもできる、可能性を秘めた部隊、私はそう思っている。まあ、元気を出したまえ」

モゲレオは用があると言って、部屋を出て行った。サトリが不安でいると、扉が開いた。

「君が新入隊員だね?ようこそ、タブラ・ラサへ!ここはね、部隊名の通り…」

「あ、その話聞きました」

「ごめん、知らなかった。僕ら自由だからさ」

眼鏡の副隊長ペリドット・ウィンチェスターはリンク島の師範の息子だった。空を飛ぶ鳥は首を傾げた。(ウィンチェスター?ライトサンダーの倒した強者と同じ姓だ。)数日後、タブラ・ラサに出動要請が入った。ソングの任務は獣を討伐することと災害を抑制することの二つだった。タブラ・ラサの三人は、未踏の秘境にて災害抑制任務に当たった。災害抑制には特殊な石”奇石”を用いた。

「ところでどうやって使うんだ?この石」

「隊長が分からないそうです。副隊長お願いします」

「何を言ってるの?使ったことないんだから分からないよ」

「それでどうして今回引き受けたんですか?」

「大丈夫!僕らはね、今までもどんな任務にもお答えしてきたんだ。例えば、凄い巨大な獣を相手にしても…そう、大体このくらい大きな…」

「…わわわ」

「…何だこいつは!」

彼らの前に現れた伝説の獣ティアマットが牙を剥いた。

「ついに我は、あのバハムートを倒し、伝説の獣に選ばれた!ここはバハムートを打倒す程に風が通る神聖な領域。ここを汚す者は何人も許さん!我特製“ツイストーム”!!」

三人は吹き飛んだが、軽傷で済んだ。これはサトリが無意識状態で放った風の“気”の力によるものだった。総司令室にてモゲレオがグレートに報告した。

「伝説の獣を倒すのはそう簡単じゃないぞ」

「そうだね。まだ早かった」

「まあ、あの獣は大人しくあの場所に留まっている。倒すのは今じゃなくてもいい」

「マロー君の事だけでも成果はあった。ありがとう」

「いえ、何でも申し付けてください、総司令官様」

その後、サトリは新部隊である編隊カリュードに任命された。サトリと他の六人の隊員にグレートが連絡した。

「現在、災害が激化し、イタチごっこのように切りがなく、被害だけが増えることで、世界各地に不安が広まっている。そこで、世界各地を回り、その不安を取り除くために獣を狩ること、それがこの部隊に課せられた任務だ。しかし、それだけでは、完全に不安を取り除く事は不可能だ。そう考えた私は、見事な歌声を持つライラ君と相手の心の声を聴く力を持つナタリー君をメンバーに加えた。よって、世界各地を回り、その活気を取り戻すこともこの部隊の目的の1つに加える」

カリュードの七人は、旅に出た。数時間後、山の中で一徹という男に案内されたが、この男は裏切ることを目的にする快楽主義者だった。

「裏切りの頑固一徹、この俺に出会った事が不運だったな。悪く思うなよ、少年少女たち」

一徹がサトリを狙って斬撃を放った。身動きできないサトリを仲間の一人、ロンドが庇った。

「感謝します、ロンドさん」

「俺はどんな壁も跳ね除ける男、ロンド!見たか?華麗な俺の蹴り!これで勝負のケリもつけてやるぜ!」

「…いや、その必要はない」

一徹はサトリが仲間を信じて待つ姿とロンドが庇う姿を見て、信頼し合うことの強さを知り、負けを認めたのだった。カリュードが去った後、一徹は前に裏切った弟子の事を考えた。(虎徹、粗鉄、あいつらいい奴らだったなあ。)一徹は、刀を自らに向け自害した。一徹は気づくと、地獄にいた。泰山府君は一徹に命じた。

「あなたは強い。地獄めぐりを終え、ヘルセブンとなりなさい」

一徹はその通り、ヘルセブンとなり、閻魔王の奥の部屋に来た。そこにもう一人がいた。

「我はアシュラ。燃え盛る”憤怒”を満たすため参らん!」

アシュラに続いて、一徹も現世の扉を開けた。現世で、空を飛ぶ鳥は翼が体長に比べて大きい獣を発見した。(あの獣は襲うつもりだ。)その獣は、カリュードの七人の前に降りた。

「翼の先端が剣のように鋭い。あれは翼の獣ウイングエッジだ」

サトリの仲間の一人、クリスが言った。ウイングエッジは、そのクリスを狙って攻撃した。

「レイピア、マローたちを連れていけ!シュン、守るぞ!」

カリュードの七人は隊長ロンドの指示で二手に分かれた。(まずは小手調べだ。)ウイングエッジとなったミズーリオはサトリの仲間の実力を試すことにした。(この獣の特長は、やはり翼だ。それにしても重い。)ロンドの指示でウイングエッジの両翼は地面に突き刺さった。(まずい。)

「食らえ!ジャンプ蹴り!!」

空を飛ぶ鳥は倒れるウイングエッジを眺めた。(危ない所だった。彼ら、かなり出来る。)横を飛ぶ鳥が声をかけてきた。

「閻魔王様。直ちにお戻りください」

「まさか泰山府君か!?分かった」

死後の世界に戻ると、泰山府君が言った。

「大変でございます。申し上げますと、ヘルセブンの階級アシュラが戻らないのでございます。これは死者が生き返った状態であり、禁忌を犯しています」

「それは一大事だ」

「直ちに追手を向かわせておりますが、問題はヘルセブンが一人不足していることでございます。ついこの間、交代で抜けたラック・ゴールドは浄化の時を待っています。呼び戻しますか?」

「そうしてくれ。ん?ラック?」

「はい。閻魔王様が外出中にヘルセブンになった後、一徹と交代で抜けたのでございます」

「ああ、そうじゃなくて、知り合いかと思って」

ラック・ゴールドは浄化の寸前でヘルセブンに戻された。(やっぱりあのラックじゃないか。)

「何だ?もうすぐ天国に行けたっていうのに」

「お前は二度も選ばれた。うーん、どうやら現在ヘルセブンの下から二番目に強いらしいな。新たな階級カラスは一番下になるので、前と同じデビルに任命する」

「有難うございました。代理はお任せください」

カリュードはオーディンの子孫が王を務める地、カタナシティへ来た。その時、本名と生き別れた妹の事を知った。

「妹はどこにいるの?」

「家の手紙を見れば…その服、ソングね。人を救う仕事は立派よ、誇りをもって生きて…」

「母さ-ん!!」

母を背負いながら走るサトリの前に足が速い隊員が止まった。

「私はジュゼット。その背中の人を貸せ」

ジュゼットとともに家に着いたサトリは手紙を読んだ。

「そうか。分かったよ、母さん!」

手紙の内容と最後に花の絵が描かれていたことから、妹は花の名前の姫と分かった。亡くなった母を埋めた後、サトリはクリスと合流した。

「旅の目的が一つ増えたね」

その時、一徹は、ジュゼットに狙いを定めた。

「うっ・・・」

「どうしたの?クリス」

「我はヘルセブンが一人、カラス。ジュゼット・マクベウス、その命頂戴する」

一徹は、必殺技”真・裏斬り”を使い、任務を遂行した。

「任務完了。帰還する」

サトリとクリスにとっては辛く悲しい経験となった。サトリと仲間たちは様々な経験を経て、強くなっていった。空を飛ぶ鳥は悩む。(シンメン・サトリ。彼にとって命に変わるもの。それは一体何だ。)


 

【第7章】

 ミズーリオはシンメン・サトリの命に変わるものを探していた。シンメン・サトリはショクシティにいる仙人から教えを授かった。

「ずばり『無の境地』じゃ!」

「むのきょうち…」

「そうじゃ。これは初歩の教えであり、どの武器、どの技にも、ましてや生活においても活きる。昔、刀国に沢庵和尚と呼ばれる人がいた。その著作『不動智神妙録』の中でこう言っている。“心を何処に置こうぞ。敵の身の働きに心を置けば、敵の身の働きに心を取らるるなり。敵の太刀に心を置けば、敵の太刀に心を取らるるなり。敵を切らんと思うところに心を置けば、敵を切らんと思うところに心を取らるるなり。我太刀に心を置けば、我太刀に心を取らるるなり。我切られじと思うところに心を置けば、我切られじと思うところに心を取らるるなり。人の構えに心を置けば、人の構えに心を取らるるなり。とかく心の置き所はない”と。つまり、心を無にすることが最善。般若心経というお経にも“空”の大切さを述べている。空というのは無と同じこと。それに至るのは簡単なことじゃない。だが、無理なわけでもない。その方法はある。それは“無の境地”これを知ること。無は有の反対、つまり、何もかも捨て去って自分が全く空っぽの状態になったことを想像する。そこからは、もう自然に身を任せる。自分がまるで透明の空気のように感じた時、“無の境地”に達したといえよう。それでいて、行動するのは、容易ではない。ましてや戦闘をするなんて考えられないこと。仙人のわし位であればできなくもないがな。とまあ、簡単に言えば、精神を研ぎ澄ます事で極限まで集中力を高める技じゃ」

「長かった…」

「危なく意識が途切れる所でした」

「で、爺さん、それはどう使うんだ?」

「お前さん、既に今が『無の境地』に至っとる。わしの話を静かに聞けていた、それが何よりの証拠じゃ」

「そうか、これが無の境地なんだ」

サトリと仲間たちは、旅の目的の一つだったワスプ・シャウトの子孫であるワスト・シャウトと出会った。ソングの隊員ロニョという人物はゼラチン族という獣と合成させられており、その犯人がワスト博士と知り探していた。旅の途中、サトリと仲間たちはワスト博士の四人の部下と戦ってきた。

「私は狂気の科学者だ。興味の湧く事を突き詰める事が仕事だ。巨大化、洗脳、獣化そして融合。どれも興味が湧き、実験をしたくて堪らなかった。そうだ、私がゼラチン族と人間の融合実験を行ったよ」

「…戻る方法は?」

「そんなものはない。私の実験は不可逆実験だからね」

「…分かった」

サトリの仲間、クリスが刀を抜き、ワストの腕を斬った。

「う、腕が!何をする!」

「…今までひどいものを見た。ひどいことをしたのはそっちだ」

ワストはマシンに乗り込み逃げた。その時、サトリが母から預かったネックレスを見て、ワストはサトリを捕らえた。

「それは、かつて世界を滅ぼしかけた女が身に着けていたものだ。それを持つ君は、私と同じ狂気の科学者の子孫だ」

着いた研究室でワストはサトリを仲間に誘った。

「僕はお前を仲間とは思わない!」

「はっはっは…君は正直者だ。正直者の君にはすでに仲間がいるんだろう。それは、困った時に助けてくれる、相談したら答えてくれる、困難な時には手を取り助け合えるね!なら、仲間はもういらないな、必要な仲間は揃っているからね!」

「…そんなことはない」

「だったら!私を仲間にできるかね?」

「それはできない」

「矛盾している!いつも私はのけ者だ…。まあ、仕方ないか。私は狂気の科学者だからね。これで私達は絶交だ。今後永遠に。最後に別れの挨拶だ。さようなら」

ワストが改造した自分の胸のボタンを押し、巨大化した。研究施設は崩れた。仲間によって救出されたサトリに対し、巨大化したワストは突如現れたゴーレムに殴り倒された。空を飛ぶ鳥は眺めながら思った。(強い仲間たち、生き別れた妹、それとも仙人の教え。どれも大切なものだ。一体どれが命に変わるほど大事なものなのだろうか?)その後、世界は統一国家に反対する敵組織との戦争に入った。世界各地でソングの隊員と敵組織の手下の戦いが行われた。ソングでも敵組織でもない強者も戦いに巻き込まれた。敵組織の手下、寒太郎は少女を連れた強者、又三郎と出会った。

「ここも寒うござんす」

寒太郎が一言呟き、又三郎は少女を後ろに隠すように立った。吹雪が吹き付ける中、二人は互いに駆け出した。

「“百花繚乱桜吹雪”」

「“燕返し”」

寒太郎が倒れ、又三郎は剣を収めた。膝を折った又三郎の元に少女が駆け寄り、又三郎はその頭を撫でた。その時、ラック・ゴールドは強者である又三郎に狙いを定めた。

「ヘルセブンが一人、デビル。又三郎、その命頂戴する」

倒れたはずの寒太郎が再び起き上がり、又三郎に一撃を浴びせた。又三郎が被った笠が二つに割れた。同じ時、同じ名前を持つマタ・サブロウは現実で倒れていた。彼は救急車で運ばれていた。その傍に、ゴショガワラ・ヒナギクが心配そうに見つめていた。ヒナギクはサブロウの手を取り、強く握りしめた。

「私も、お腹の子も、あなたの無事を祈ってるわ。だから、必ず生きて・・・」

ヒナギクと同じように少女は祈った。その祈りは、特殊な石“奇石”に届き、又三郎は息を吹き返した。

「私は、必ず生きる!」

又三郎の意思は、割れた笠を仮面に変えた。仮面を被り、又三郎は名乗った。

「私は、願いを叶える為に戦う、仮面セイバー」

「俺も地獄巡りに戻りたくはない。手加減はしない」

ラックの意思と又三郎の意思がぶつかり合った。

「“百花繚乱雛菊吹雪”」

「“燕返し=ゴールディウムカッター”」

寒太郎と又三郎は相打ちになり、同時に倒れた。駆け寄る少女の頭を又三郎は撫でた。仮面は粉々に壊れていた。同じ時、サブロウは目を覚ました。泣くヒナギクを見て、その頭を撫でた。

「どうして泣いてるの?」

「だって、あなたが急に倒れるから…でも、良かった」

その頃、寺を荒らしまわる敵組織の手下、ヴァスヴァンドゥと元ヘルセブンのアシュラが戦った。

「誰だか知らねえが、少しは歯が立ちそうだ。この俺、修行僧ヴァスヴァンドゥの修行相手としてはな」

「貴様がどれだけ強かろうと、このアシュラと同じ修行僧を名乗る資格はない。直ちにその名を剥奪させて頂く」

アシュラは刀を構えた。

「おい、剣が六本に見えるぜ、幻覚か?」

「否、幻覚にあらず。厳格な罰にありけり。慈悲が及ばず。我、本体、<憤怒>。この怒りの全身全霊をかけて、貴様に裁きを与える。覚悟!“阿修羅・六文斬り”」

ヴァスヴァンドゥの身体が六つに分かれた。

「是にて、我が魂の定めを果たしたり。我、自ら帰還せん」

その頃、ソング本部では、サトリと仲間たちの他隊員たちが集められた。総司令官グレートが台に立った。

「皆、急きょの呼びかけによく集まってくれた。もう知っている通り、SONGは宣戦布告を受けた。これに対して、SONGは真っ向から応戦する。現在、支部との連絡が取れず、状況が分からない。危機的状況に陥っている可能性もある。その場合を考慮して、一部の者には支援に向かってほしい。残りの者は要である本部を守ってほしい。編成はこの後伝える。それから奇石を各部隊に配布する。奇石を使用すればネアと呼ばれる自然の力を発動でき大幅に戦力が増加する。ネアの発動にはコツがある。カリュードが出会った仙人から教えを受けたのが、“無の境地”だ。簡単に言えば、精神を研ぎ澄ます事で極限まで集中力を高める技だ。敵組織が奇石を使用する事も考えられる。敵より適確なネアを発動して、勝利してほしい。これは、SONG全部隊を投入する最大の作戦“トッカータとフーガ”である。全員で作戦成功させる。以上だ。皆の健闘を祈る」

空を飛ぶ鳥は、意思を固めた。(考えても命に変わるものが分からない。だが、間違いなく今これだけは壊されてはいけないはずだ。奇石とかいうこの石に願えば自然の力が使えるらしい。)空を飛ぶ鳥は、石に願った。すると、巨大な竜巻が巻き起こり、ソング本部を破壊し始めた。総司令官の側近、近衛衆とタブラ・ラサが対処に当たった。しかし、閻魔王であるミズーリオの願いが込められた竜巻は通常の竜巻に比べて防御力においても攻撃力においても格段に高かった。

「何だこれは・・・敵組織の攻撃だとしたら恐ろしいものを敵にしてしまった」

「総司令官様。僕が止めてみせます」

シンメン・サトリは覚悟を決めた表情で、石に願った。すると、凄い勢いでソング本部の方に飛んで行った。

「サトリ君!」

数分後、竜巻は収まった。しかし、その場所にシンメン・サトリは倒れ、動くことはなかった。空を飛ぶ鳥は半壊したソング本部の上をぐるぐると飛んでいた。(嘘だ・・・シンメン・サトリが死んでしまった。これでは物語に支障が出る可能性がある。あの和尚様なら蘇生できるがこの時代にはいない。どうすればいいのか。)空を飛ぶ鳥は様子を見守った。世界各地で戦いは進んだが、ソング本部に敵組織の首領、グボアギ・ドゥブグフェが飛空艇に乗って現れた時だった。グボアギは自然の力、ネアを操る能力を持ち、ソング本部を一人で襲った。グボアギは策略でわざと捕らえられようとしていたが、サトリを失った責任を感じた総司令官、グレートは判断を誤った。グボアギは溶岩を本部の上に持ち上げた。

「これで本部は終わりだ!!」

「そうはさせない!」

グレートは土の気を操り、地面を伸ばして溶岩を叩き落とした。伸びた地面を移動させたが、少しの隙が出来てしまい、グボアギは逃げた。空を飛ぶ鳥は思った。(逃げたが、いいのか?)

「あの男に逃げられては行けない。捕らえるのだ」

空を飛ぶ鳥は驚いた。ソング本部の屋上にシンメン・サトリがいたからだった。(君は、メフィラスか?)

「そうだ。とにかく急ぐのだ」

空を飛ぶ鳥はグボアギの頭上に飛びながら石に願った。すると、激しい雷が落ちた。

「ぐぼあぎ!」

グボアギは倒れ、空を飛ぶ鳥はシンメン・サトリの元に戻った。

「それでいいのだ。あとは任せるのだ」

シンメン・サトリことメフィラスは腕を伸ばし、空を飛ぶ鳥ことミズーリオは意識を失った。


 

【第8章】

 気づくと、ミズーリオは鏡のような空間にいた。

「ここは・・・?」

ミズーリオの前にメフィラスが現れた。

「ココハドコトモ繋ガラナイ空間。私ト君ダケガ存在シテイル」

ミズーリオは頭を押さえた。

「何か忘れている気がする」

「当然ナノダ。君ハ死ンダノダカラ」

「死んだ?私が?」

「デハ、ソノ場面ヲ見ルガイイ」

一面の鏡に情景が映し出された。奇石の研究者ボーンの発明によって死後の世界に来ていたサトリと仲間たちは女神アナスタシアの提案で死後の世界を一つにすることになった。閻魔王として呼ばれたミズーリオはその提案に応じた。アナスタシアとミズーリオが手を合わせ祈ると、天国と地獄が一つになり、狭間が消滅し、無の空間となった。死後の世界にいた魂が去った時、ミズーリオは三人の英雄と再会した。

「ミズーリオ、探したぞ」

「アルフレア、タイフーン、クェーク。わざわざ我輩の為に…何て言っていいかわからないのだ」

「その口調は取れてないのか?」

「あ、わすれてた」

「ははは。笑わせるなよ」

情景が映し終わり消失した。

「死んだのは物語の話だったのか。現実ではなくて安心した。ところで、シンメン・サトリは生きていたのか?」

「違ウ。私ガ蘇生サセタノダ」

「有難う。どうして死後の世界に来たんだ?」

「デハ、ソノ場面ヲ見ルガイイ」

一面の鏡に情景が映し出された。現世に帰ったサトリと仲間たちは、死後の世界で手に入れたネアを操る能力で敵組織との戦いを有利にした。伝説の獣を操る敵との戦いで、サトリはティアマットと再戦した。

「貴様は、覚えているぞ。一度我に挑み、そして敗れた奴だ。また我の技で吹き飛ばしてやろう。我特製“ツイストーム”」

激しい竜巻がサトリを襲った。

「ははは。前は我の技を和らげたことに驚いたが、今回はそれすら敵わないだろう。なぜなら、ツイストームの威力が上がっているからだ!」

「そんなの、そよ風に感じる。止めだ!“大旋風・乱気流(ビッグウェーブ・テンペスト)”!」

「かつて我の餌食となった者が、何故これほどまでに強くなった!」

「そりゃあ、僕、エレクトなんで」

「エレクトだと?」

「選ばれし者のことさ」

その後、ティアマットは現れたバハムートを見て、負けを認めた。敵組織の首領、グボアギは捕らえられていたが、怪盗ミラーという人物の協力で脱獄しており、全ての力をもって暴れていた。しかし、サトリと仲間たちが来たことで追いつめられた。

「おれを本気にしたな!これでお終いだ!」

地面が割れ、巨大な穴が開いた。グレートが痛みを堪えながら、面々を見た。

「みんな…」

「サトリ!」

「まだ終わりじゃない!」

サトリが風のネアを発動し、面々は地面の上に乗っかった。

「ははは、そんな攻撃当たるか!」

「これならどうだ!」

グレートが土のネアを発動し、不意を突かれたグボアギは両側から地面の波で勢いよく挟み込まれた。

「ぐぼ、あ、ぎ…」

「やったぞ…」

敵組織に勝利した後、グレートは総司令官の座をサトリと仲間たちに譲った。

「今回の戦争の被害を出したのは、私の責任でもあった。だから、辞職する」

「そんな…」

「気を落とさないでほしい。寧ろ、喜んでほしい。君たちだから頼むんだ。君たちは僕のお気に入りだから」

「そうか。じゃあ、総司令官は俺がやるしかないな」

「何でですか?」

「何でだって?俺はリーダーだ。リーダーがやるのが普通だ」

「ロンドが向いてるとは思えない」

「クリスが良いと思う」

「僕は、サトリが良いと思います」

「何で、僕…」

「サトリは優しいです。優しい人は他の人の立場に立って考えられます」

「優しいだけじゃだめだ!俺のように強くないとだめだ!わかった!総司令官の座をかけて3人で勝負だ!」

ロンドとクリスとサトリが向かい合った。

「じゃあ、勝負開始だ!」

ロンドとクリスではなくサトリが勝った。その理由は、死後の世界で記憶を取り戻し、サトリが現実でエレクトという宇宙間での未確認生命体と戦闘する選ばれし者になったことの不安から来る無意識の攻撃が命中したからだった。

「あれ…勝っちゃった」

「サトリも総司令官になりたかったなら言えよ!ずるいぞ!」

「おめでとう。サトリ君。君に総司令官を任せる」

「そんな…まだ心の準備が…」

「大丈夫。君に任せるのは1か月後だ。引き継ぎが1週間かかるとして、それまでは時間がある。自由に過ごしてほしい」

一週間中、サトリと仲間たちの元に怪盗ミラーが訪れた。自由な怪盗はサトリに手伝いを頼んだ。怪盗の手伝いを受け、訪れたリオデジャトーンシティでサトリは妹と出会った。

「そうだ。これ、母さんから」

「わあ、きれいなネックレス」

「似合ってるよ」

「最近、母さんから返事が来ないんだけど、お兄ちゃん何か知ってる?」

「…実は、母さんは死んだ」

「え?」

「僕が母さんに再会した時、地震が起きて、お腹を怪我したんだ。SONG隊員の人が助けてくれたりしたけど、もうダメだった。だから、それは母さんの形見だよ」

「そうなんだ。ありがとう。大切にするね」

その後、総司令官の引継ぎを行っている時、ソング最強の十人の部隊、ララバイの隊長エンリケが報告に来た。ララバイの任務はたった一つ、最強の獣、オーマの討伐だった。オーマの群れに襲われ、ララバイの隊員は隊長を守り犠牲になった。そんな中、総司令官となったサトリに支部からオーマ発見の報告が入った。サトリは他者の体験を自分が体験できるリンクと言う能力でオーマを初めて確認した。サトリは現実と夢計画の登場人物がリンクしていることを聞き、現実では死んでいる妹の元に急いだ。しかし、間に合わず、目の前で妹はオーマに殺された。サトリはオーマに向かって全てを解放した。

「ヒナギクを返せ!“ネア・バースト”!!」

サトリを中心に爆風が巻き起こり、それは地球上の半分が壊滅する”サード・スクリーム”と呼ばれた。奇石の力で被害を逃れた仲間たちは、作戦会議を開き、オーマ討伐作戦が決定した。オーマが奇石をエネルギー源にしていることから、大量の奇石をカタナシティに運び、オーマを誘き寄せた。仲間たちの協力でオーマは残り一体となった。オーマは特殊な領域を展開し、代表者のサトリを捕らえた。

「我の領域(フィールド)内では、外界と遮断されている。他者と意思疎通は出来ず、リンクを使うこともできない。勝敗を決めるのは、己の肉体を用いた打撃のみ」

オーマの攻撃を受け、傷つくサトリを仲間たちは応援した。

(感じる…みんなの思い…聞こえる…みんなの声!)

サトリは仙人に教わった”弱者拳”でオーマに打撃を与えた。

「おりゃああ!!!」

「ぐああ!!!」

オーマに勝利したサトリと仲間たちは歓喜し、宴を開いた。そこに、星を監視する異星人、アグルが来星した。

「私たちがテラと呼ぶ星、地球の者も強いことが分かった。しかし、君は強すぎる力で地球を壊しかけたね?」

「はい…」

「十分危険分子と判断される。普段なら訪れていたが、私たちは銀河獣の出現でそれどころじゃなかった。その為、今判断する。地球の代表者は誰だ?」

「僕です」

「話が早い」

サトリとアグルは宇宙船に入った後、一枚の紙を持って現れた。それは“ガイアテラ相互不可侵共同条約同意書”で、『二つの星は互いに侵略することはなく、共同で戦うという和平を結ぶ条約』だった。

「このような話を持ち掛けてくる者が、悪い者だと思えなかった、それだけのことだ」

「なるほど。サトリ君、やるね。私が見込んだだけのことはある」

「グレートさんに言ってもらえるなんて、僕、感激です!」

こうして、地球に平和がもたらされた。さらに、オーマのコアにあった鍵を使ってサトリたちは現実に帰ったのだった。情景が映し終わり、消失した。

「コレデ夢計画ハ終ワリダ」

「彼らなら現実でも協力して危機を乗り越えるだろう」

「ソレコソガ夢計画ノ願イデ狙イナノダ」

「ところで、宝玉は7つ集まっていたか?」

「アア。コノ通リダ」

メフィラスはミズーリオに浮いた宝玉を見せた。

「6つは分かっているが、7つ目は誰の命だったんだ?」

「アナスタシア、ダ」

「そうか。いずれにせよ宝玉を7つ集めた。これで終わりだな」

「マダダ。実ハ宝玉ハ8ツアッタノダ」

「8つだと!誰が持っている?」

メフィラスは一瞬黙って言った。

「私ダ」

「それはつまり、戦うということか」

「存分ニ楽シムノダ」

メフィラスは腕を伸ばし、ミズーリオに触れようとした。ミズーリオは避けたが、背後に瞬間移動したメフィラスはミズーリオに触れた。直後、磁石の反発のようにミズーリオは吹き飛んだ。

「私ガ何ノタメニ宝玉集メヲサセタト思ッテイル」

「楽しむためじゃないのか?」

「ソレダケデハナイ。ヨク思イ出スノダ」

ミズーリオは思い出した。宝玉は自分にとって大事なものとメフィラスは言った。(メフィラスは私を鍛えていたのか?)

「当タリナノダ」

メフィラスが触れ、再びミズーリオは吹き飛んだ。

「それならそう言ってくれれば良かった」

「何モ知ラナイノト知ッテイルノトデハ異ナルノダ。例エバ、コレラノ事モ」

宝玉が光り、情景を映し出した。七つとも霊界ウルトラが滅びた。一つは、星を改造した爆弾が落ちてきた。一つは、兄弟宇宙人の遺したロボットを改造した軍団が攻め込んだ。一つは、銀河獣の百倍の合体獣が襲った。一つは、地球の代表者の命令で全勢力が攻め込んだ。一つは、ウルトラ人の誰かが霊界ウルトラの長ゼウスを殺し、戦争になった。一つは、アナスタシアがゼウスを殺し、戦争になった。一つは、ミズーリオがゼウスを殺し、戦争になった。

「何なんだ・・・これらの情景は?」

「コレラハ私ノ考エテイタ侵略方法ダ」

「・・・そんな嘘だと言ってくれ!メフィラス!」

メフィラスは指を数回折り、ミズーリオを挑発した。

「メフィラス!!」

ミズーリオはメフィラスに飛び込んだ。瞬間移動で背後に来たメフィラスが腕を伸ばした。ミズーリオはその腕を掴み、全身全霊の力を込めてメフィラスの腹部を殴った。

「強クナッタノダ・・・」

八つ目の宝玉が出現すると同時に情景が映し出された。ウルトラ人になったメフィラスが霊界ウルトラの代表者になった。

「私トシタコトガ勝手ニ映ッテシマッタノダ・・・」

「メフィラスは無駄な殺生はしない。8つ目がメフィラスの本当の侵略方法だった。7つは嘘だった。そうだな?」

「全部本当ダ・・・」

徐々に空間が消え始めた。

「どうなってる!?」

「モウソロソロダ。最後ニ伝エルノダ。強イエネルギー体ハ物質ガ無クナッタアトシバラクエネルギーガ残存スル・・・例エバ、侵略者タチノヨウナ・・・」

「そんな…現実では宇宙人撲滅計画で全ての侵略者が消滅した」

「現実ヲ維持スルノダ・・・」

空間が消えるとともにメフィラスも消えた。

【エピローグ】

 ミズーリオは目を覚ました。そこは寝室だった。

「・・・夢?」

ミズーリオがリビングに行くと、何もなかった。その後、ミズーリオは霊界ウルトラのシンボルタワーに向かった。都市は侵略者たちに飲み込まれたハデスによって壊滅的な状況だった。シンボルタワーの中にあるマザールームにアナスタシアがいて、ゼウスの様子を診ていた。

「様子はどう?」

「だいぶ落ち着いてきたわ」

「ハデス様は?」

「あの後からずっと隣の部屋で眠ったままよ」

「あんなことがあったから心配だな」

ゼウスが目を開けて言った。

「心配などいらない。ハデスは強い」

「起きられたのね」

「ああ。頭が痛むが。それより町の様子は?」

「ひどいわ。しばらく復旧に時間がかかるわね」

「そうか。今後同じような事態になるかもしれん。その時は、アナスタシア、それからミズーリオ、頼んだぞ」

「あなたもしっかりしてよね」

「わかった」

ミズーリオはメフィラスの言葉を思い出した。(現実を維持する力。何があっても維持してみせる。見ていてくれ、メフィラス。)ミズーリオは外を眺めながら意思を固めた。その後、メフィラスほどのエネルギーは現れなかったが、シン・ガイアこと地球で”心霊現象”が続

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