アリシアによる『オリンポス山』単独登頂という風竜の試練がスタートした。
出発する前、ミナ達は気を遣ってアリシアとエリオットを二人っきりにしてあげた。
「アリシア...気を付けて...」
「うん、ちょっと行って来るね」
「...本音を言えば止めたいけど...」
「アハハ...そうだよね...心配掛けてゴメン...でも私は」
「うん、分かってる。行きたい気持ちを抑えることないよ。僕達はここで待ってるから」
「ありがとう...」
二人は固く手を握り合って別れた。
◇◇◇
~ 1000m付近 ~
次第に植物が減って岩石が目立って来た。足場はそれほど悪くなく、快調に進めている。登山道らしき道があり、それを頼りに登って行く。まだここまでは登山というよりハイキングの延長のような感じだ。
~ 2000m付近 ~
傾斜がキツクなって来た。植物は全く生えていない。登山道らしき道もなくなった。ここからが本当の意味での登山と言えるだろう。富士山で言えば五合目付近か。
~ 3000m付近 ~
傾斜は更にキツクなる。気温もグッと下がり、あちこちに雪が積もっている。足場も悪い。アリシアは慎重に歩を進める。富士山で言えば七、八合目付近か。
~ 3500m付近 ~
富士山で言えば九合目。最後の山小屋がある地点。前世のアリシアはここでダウンした。山頂でご来光を拝むために山小屋で一泊したのだが、高山病による頭痛、疲労、吐き気や食欲不振に悩まされ一睡も出来なかった。
ご来光を拝むためには、当然ながらまだ日も明けぬ暗い内から出発するのだが、前世のアリシアはフラフラ状態でとても登れるような状態ではなかった。
このまま無理に登らせたら、足を踏み外して滑落するかも知れないと同行した父親が危惧した為、前世のアリシアを山小屋に留まらせることにした。
食べた物を全部戻したり、絶え間ない頭痛に悩まされながら山小屋でしばらく休んだ後、ご来光を拝めなかったという無念の思いのまま山を降りることになった。前世のアリシアが小学五年生の時の夏休みの苦い思い出である。
今のアリシアはあの時と違って成長しているし、魔法の助けも借りている。ここまでは高山病特有の症状も無く順調に来ている。
だが油断は禁物だ。富士山と違ってまだまだ先は長いし、季節だって夏じゃなく冬だ。アリシアは焦らずゆっくり行こうと思い、今日はここでビバークすることにした。
幸い天候が荒れることも無く風も穏やかだ。アリシアは大きな岩の上に平らになっている箇所を見付け、そこにテントを張ることにした。
高山病対策として水分を多目に補給してから眠りに就いた。
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