二手に分かれたアタシ達は、牧草地を離れて森の中を探索することにした。
「う~ん、気持ちいいね~♪」
「マイナスイオンに溢れてるね~♪」
スライムの姿はまだ見えないので、アタシとアリシアは呑気に森林浴を楽しんでいた。
「マイナスイオンってなんですの?」
「気持ち良いってことですよ~♪」
「はあ、そうなんですの...」
シャロン様に説明するのがメンドイんでテキトーに誤魔化しておいた。シャロン様、ゴメンね。今はこの雰囲気を心行くまで満喫したいんだ。
森の中をしばらく歩いて行くと、何故か周りに木が生えてない開けた場所に辿り着いた。
「ここなんだろうね? なんで木が生えてないんだろう?」
誰ともなしに呟いたアタシの言葉は、先頭を歩いていたアリシアの叫びに遮られた。
「スライムが出たよ!」
スライムに会敵していた。
「どうする? 誰が攻撃する?」
アリシアが聞いて来た。目の前にはクラゲみたいに透けた体でモゾモゾと動いてる丸い物体の姿がある。紛うことなきスライムだ。RPGの序盤に良く出てくるヤツだ。
こうして見てもやはり雑魚としか思えない。本当に手強い相手なんだろうか?
「う~ん、確かに核らしきモノは見えないね~ どうしようかな~? まずはアリシア、物理攻撃でいってみようか?」
「了解~!」
アリシアが嬉々として攻撃する。
「ウリャッ!」
ポヨーーーン ポヨン ポヨン ポヨン
「あれ? 飛んでった!?」
なんと! スライムはアリシアの攻撃を受けても、自らの体をゴムのように変形させて、その弾力でアリシアの攻撃の力を吸収し、その力を利用して、まるでスーパーボールのようにポンポンと弾んで飛んで行ったではないか! 物理攻撃が効かないなんて恐るべし!
...あれ? これってマズくね? こっちの班、攻撃が物理に片寄ってねぇ?
どどどどうしよう! 正直、そこまで深く考えていませんでした、なんてとてもじゃないけど今更言う訳にもいかないよ~!
「ミナさん、なんだか前から沢山やって来ましたわよ?」
「ミナお嬢様、後ろからもです。凄い数ですね」
か、囲まれた~!? ヤバいヤバいヤバいぃ~! ウチらの中で魔法の威力だけで敵を吹き飛ばせるのはシャロン様だけだ。アタシとアリシアは物理攻撃が主だし、平民出身のマリーはそもそも魔法が使えない。つまり圧倒的に火力が足りないぃ~!
「み、皆さん、と、取り敢えず私の周りに集まって下さい。障壁を張りますので...」
アタシは例の透明な膜をドーム状に展開して四方をガードする。スライムがポヨンポヨンと飛んで体当たり攻撃してくるが、そんな攻撃じゃビクともしない。フウッ、一息つけたかな...
「それでこれからどうするの?」
うん、分かってた。なんも解決してないよね...
「まさかミナさん、ここから先、考え無しってことはないですわよね?」
「ソ、ソンナコトナイデスヨ...」
ヤバいヤバいヤバいぃ! めっちゃ疑われてるぅ! どうする!? どうする~!? なんかないか!? なんかないか~!? くぅ~! 捻り出せ~! アタシの小脳(コスモ)~!
アホなこと言ってる間にスライムがどんどん集まってお団子のようになってるぅ~! しかも四方八方囲まれた~!
うん? 集まってる?
来た来た来た~! アタシの小脳(コスモ)が降りて来た~! って、もうええわ。
「シャロン様! スライムが一ヶ所に集結するこの時を待っていたんです! 全部吹き飛ばしちゃって下さい!」
先生っ! お願いします!
「はあ...分かりましたわ」
『ヘルトルネード』
うおっ! 黒い竜巻って初めて見た! 凄い威力だな! スライムが粉々になって飛んで行くよ。
「ありがとうございます!」
いやだからそんなジトッとした目で睨まないで~! 反省してますから...
はぁ~...軽々しく二手に分かれるんじゃなかったよ...
読み終わったら、ポイントを付けましょう!