そしてライオネル王子がやって来た。
入ったクラスは、当然ながらお世話係である殿下達と一緒なので、アタシはまだ会っていない。お昼休みに紹介して貰うことになっている。どんな人なのか、今から会うのが楽しみだ。
そう思っていた時期がアタシにもありました...
「なんだぁ!? このチンチクリンはよぉ!? まだ小学生なんじゃねぇのか!? なんでこんなのが学園に居んだよ!? ガキはとっとと帰ってママのオッバイでも吸ってろ!」
うん、なんかもうね、初対面からいきなり敵意剥き出しなんですけど...なんで!? 食堂で挨拶した途端にこれだよ...アタシこの王子になんかしたっけ!?
改めてライオネル王子を観察して見る。学園の制服じゃなく、民族衣装のような白いローブを身に纏っている。頭にはターバンみたいなのを巻いてる。だからケモ耳も尻尾も見えない。
黒髪黒目は日本人の前世持ちのアタシからしたら馴染み深い。顔は王族だけあって整ってるけど、眼光が鋭過ぎて顔の良さを台無しにしている。
ちょっとちょっと! アタシがそんなことを考えてる間に、仲間達のライオネル王子に対する殺気が凄いことになってるんだけど! みんな抑えてね! アタシ気にしてないからね!? 外交問題に発展しちゃうからヘタなことしないでよ! 頼むからさ!
「ライオネル、ミナは俺達の大事なむす...仲間だ。侮辱することは俺が許さん。良く覚えておけ」
おい、殿下! 今、娘って言おうとしなかったか!? ま、まぁ、それはともかく抑えてね! ドウドウ!
「ハンッ! こんなのが仲間だぁ!? 笑かしてくれやがる! おい、アルベルト! お前が入ってるっていうなんたら隊ってのは、お遊戯クラブか!? それとも、おままごとクラブかよ!?」
これには少々カチーンと来た。アタシのことはなに言われても良い。こんな見た目だし。不本意ながら言われて当然という思いもままある。
ただし『精霊の愛し子隊』をバカにするのは許せない。今までアタシ達がどれだけの死線をくぐり抜けて来たか、どれ程の修羅場を体験して来たか、知りもしないで勝手なこと言わないで欲しい。
ガターンッ!
うわっと! アタシを除いた全員が、椅子を後ろに倒して立ち上がっちゃったよ! これはヤバいな...
「おい、ライオネル! 撤回しろ! 今すぐに!」
「王族に連なるお方のお言葉とはとても思えませんわね。品性を疑いますわ」
「いくら王子様といえど、言って良い事と悪い事があるでしょう」
「ボクはなに言われたって構わない。けど、ミナを侮辱するのは許さない!」
「アンタってホント最低ね...ゲームの時と性格同じ。全然変わってないわ...」
あ~...こりゃもうダメだな...アタシにも止められそうにないわ...あとアリシア、どさくさ紛れにヤバい発言しないようにね...って、あれ? ライオネル王子の様子が変だぞ?
「見付けた...」
いきなりアリシアの前で膝を折っているんですけど!?
「会いたかった! あなたこそ我が番! 我が妻となるお方だ! どうか私めと結婚して下さい!」
...は!?
一同ポカーン...
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