私は愕然としながらも、何とか現状を把握した。
今、アシュラの顔は最初のヤツに戻っている。特に特徴の無い普通の顔だ。恐らくこれが防御担当。左に回転すると怒った顔。これは攻撃担当だろう。右に回転すると仏様のような顔。これが回復担当だ。
『三位一体』つまりコイツは3つで1つなんだ。ということは、3つの顔を全て潰すしかない。1つでも残すと今みたいに回復されてしまう。でもどうやる?
味方が居れば3方向からの同時攻撃で何とかなりそうだが、ここには私一人しか居ない。助けを呼びに行ったりしたら、エリオットが手遅れになるし、そもそもコイツが逃がしてくれないだろう。
私一人だとさっきのように2つまでが限界。3つ目を攻撃する前に回復されてしまうだろう。
そう、私が一人ならば無理だ。だが、もう1人居れば?
時間が無い。また鐘が鳴った。残りあと2回。賭けるしかない! 私は大きく助走を取った。
「ハァァァァッ!」
最初の顔にジャンピングニーを叩き込む! 一発で顔が左回転し怒りに変わった。間髪入れず攻撃する。
『正拳5段突き!』
これも瞬殺で仕留める。顔が回転しようとするが...させない!
「ウンディーネ!」
『アイスプリズン!』
アシュラの体が凍り付く! これで回転は出来ない! この瞬間を逃してなるものか! 私は最後の力を振り絞って高く高く跳躍する!
「セイヤァァァッ!」
渾身のかかと落としが炸裂した! 氷と共にアシュラも砕け散る!
「バカな...そんなバカな...」
アシュラが最後の言葉を残して消え去った。鐘は残り1回で止まった。
「エリオット!」
エリオットに駆け寄り抱き起こす。まだ意識は戻っていない。
『大丈夫よ。心配ないわ。直に目を覚ます』
「良かった...ウンディーネ、ありがとうね。きっと気付いてくれるって信じてたよ」
『そんな私の方こそ、エリオットを助けてくれてありがとう。ゴメンね...私だけじゃエリオットを守れなかったわ...危険な目に合わせてしまった...』
「それを言うなら私達だって同じだよ。現にこうやって仲間と逸れたんだから。まだまだ私達は弱いってこと。だからさ、いっぱい修行して、みんなでもっともっと強くなろうよ」
『えぇ、そうね ...ありがとう...』
うんうん! どういたしまして!
『ほら、アリシア! あなたも少しジッとしてなさい! ヒールを掛けてあげるから! 全くもう! あなたって人は! 無茶ばっかりして! 心配ばっかり掛けて! 寿命が縮んだじゃない!』
「ゴメン、お母さん」
『誰がお母さんか!』
アハハ、でもホントにレムってお母さんみたいなんだよね。前世のお母さんにちょっぴり会いたくなったよ...それと精霊にも寿命ってあんの?
「う~ん...」
「エリオット! 良かった! 目が覚めたんだね!」
良かった! ホントに良かった!
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