物陰からじっとこちらを見詰めるあの視線には見覚えがある。
出会った頃のシルベスターにそっくりだ。あれってやっぱり某RPGよろしく「仲間に入りたそうにしている」んだろうなぁ...仕方ない。一肌脱ぎますか。アタシにも多少の負い目があるしね。
「あ、すいません。ちょっとお花を摘みに。オホホホ」
さりげなく席を外す...つもりが、ちょっとあざと過ぎたのか、みんなからの視線が痛い。ま、まぁ気にしないでおこう。ここで「じゃあ私も」とか言われなくて良かったよ。
王子にチラッと目をやりながら、わざと人気の無い場所に向かう。付いて来ているのを確認してからやおら振り向く。
「今日は制服なんですね?」
「...気付いてたのか...」
「そりゃあ、王子は目立ちますから」
主に猫耳と尻尾がね。ちなみにズボンってどうなってんだろ? 尻尾を通す穴が開いてんのかな?
「元に戻ったようでなによりです。それで? 私になにかご用でしょうか?」
「あ、あぁ、その...悪かった...」
「へっ!?」
「初対面でいきなり暴言を吐いたことを謝りたい。済まなかった...」
「あぁ、はいはい、あの時の。いいんですよ、もう気にしてません」
猫耳が完全に垂れ下がってるもんね。本当に申し訳なく思っているんだろうから。
「...そう言って貰えると助かる」
「じゃあ私はこれで」
「あ、ちょっと待ってくれ...」
「まだなにか?」
午後の授業始まっちゃうから早くして。
「その...頼みがあるんだ。俺様はもっと強くなりたい。協力してくれないか?」
「なんで私に?」
意味が分からん。
「アルベルトから聞いた。お前が...ミナがみんなを強くしたんだって」
「いやいやそんな、買いかぶり過ぎですよ。強くなったのは、みんながそれぞれ地道に努力した結果であって、私は何もしてないですよ?」
まぁ、みんなが精霊と契約した時には、多少なりとも貢献したかも知れないけどさ。それだってみんなが自分達の力で試練を乗り越えたって前提があった訳だし、私はキッカケになっただけなんだよね。そしてその後、みんなが強くなったのは、間違いなく努力したからこそなんだよ。
「だが今現在、ミナがみんなのリーダーなんだろ?」
「えぇ、まぁ、それは...」
戦闘の時限定だけどね。普段は殿下がリーダーだし。
「そのリーダーとしての目線で俺様を鍛えて欲しい」
「...なんでそんなに強くなりたいんです?」
「このままじゃダメなんだ...」
「というと?」
「アリシアより強くならないと、俺様はアリシアの番になれない」
「はっ!?」
コイツ、何言ってんだ?
「俺様がアリシアより強くなったら、アリシアは番になってくれるはずなんだ! 頼む! そのために協力してくれ!」
これは面倒なことになって来た...アタシは頭を抱えた。
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