「ねぇねぇ、この卵もさぁ、孵化したらナギちゃんみたいな可愛い子になるかなぁ?」
アリシアが卵を抱きながらそんなことを言って来た。ちなみにアタシとシャロン様は持ち上げようとしても重くて無理だったので、必然的にアリシアが持つことになった。
なお、鼻血野郎どもはまだフラフラしているので、ナギの背中に置いて来た。町長さんへの報告は女性陣だけで行った。
「いや普通にワイバーンが孵化するだけっしょ?」
「そうですわよね。ワイバーンの巣にあったのだし、色も魔石と同じ青色ですしね」
「え~...そうなのかな...」
諦め悪いなアリシア。
「さぁ、とっとと帰ろう。ナギ、帰りはあんまり飛ばさなくていいからね? 今からならゆっくり飛んでも日没までには王都に着くだろうから」
「キュイ~」
帰路に就いてからしばらくすると、野郎どもがようやく復活した。アリシアが抱えている卵とシャロン様が抱えている魔石を見てビックリしている。
アタシが事の詳細を説明すると、
「大丈夫なのか? そんな卵持って来ちゃって...」
「孵化した瞬間にいきなり襲い掛かって来たりしませんかね...」
「ボクはちょっと興味あるかも。ワイバーンの生態に迫れるかも知れないし」
三者三様の意見が出た。
「まぁでもさ、生きてる卵なのか死んでる卵なのか、それさえも良く分かって無いんだから、それほど神経質にならなくても...」
その時、アタシの言葉を遮るように奇妙な音が響いた。
コンコンコンコンコン...
「ん? 何の音?」
アタシ達は耳を澄ませた。
コンコンコンコンコン...
「アリシア...ひょっとして卵から響いてない?」
アリシアが卵に耳を当てる。
コンコンコンコンコン...
「あっ! ホントだ!」
「も、もしかして孵化する!?」
コンコンコンコンコン...ペキペキペキペキペキ...パリーン!
「殻が割れた!」
「アリシア! 離れて!」
アタシは叫んだ。ワイバーンだとしたら、たとえ雛でも危険だと思ったからだ。アタシ達は全員武器を構えて卵から距離を取った。
と言ってもナギの背中に乗っている以上、そんなに距離は取れない訳なんだが...アタシはナギを着陸させようとしてちょっと躊躇った。
卵の中からすぐ飛び出して来ると思った何物かが、いつまで経っても出て来ないからだ。
「...アリシア、ちょっと覗いて貰ってもいい?」
「...わ、分かった!」
身体強化されたアリシアなら、何があってもすぐ対応できるだろうと思ったからだ。念のためアタシもバリヤを張る準備をする。
アリシアが恐る恐る卵に近付き、覗き込もうとした時だった。
「クウッ!」
そんな鳴き声と共に、青い何かがアリシアの胸に飛び込んで来た。
「うわっ!?」
思わず受け止めたアリシアの腕の中に居たのは...
円らな瞳をウルウルさせている真っ青な鳥だった、
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