電気ナマズだとしたら非常にマズい!
アタシは声を張り上げた。
「みんな、急いで水から出て!」
今はアタシとアリシアが一番前を走ってる。アタシ達が一番早く浮島に辿り着いた時、後ろから悲鳴が4つ上がった。ダメか! 間に合わなかったか!
「な、なんだこれ体が痺れ...」「か、体が動かな...」「うぅ...ビリビリす...」「お、お家帰りた...」
四人共感電したようだ。動きが止まっる。
「み、ミナ、あれってもしかして!?」
アリシアも気付いたみたいだ。
「そう、電気ナマズだと思う」
前世の記憶を持つアタシとアリシアだけが助かったのは、どうやら偶然じゃなさそうだ。きっとアリシアも後ろを振り向いた時に、アタシと同じようにその可能性、というか危険性に気付いた。だからより一層、逃げる足が速くなった。そういうことなんじゃないかな。
恐らくだけど、この世界では「電気」という概念が、そもそも無いんだと思う。電気で動く道具を見たことが無いし、学園でも理科の実験で電気を扱うことも無い。電気より魔法、電力より魔力ってことなんだろう。魔法の属性の中に電気、というか雷の属性が無い時点でそうなんだと思う。
だからきっとこの世界の人間は、電気ナマズも電気ウナギもシビレエイも見たことが無く、その危険性についても知らないのだろう。そんなことを考えていると、不意にアリシアが叫んだ。
「ミナ、電気ナマズが動き出した!」
放電して動きを止めていた電気ナマズが再び動き出す。それは電気で痺れた餌を捕食するためで...ヤバい ヤバい ヤバい ヤバい~! みんな食われちゃう~! でもまだ水の中には電気が残ってるから、近付けばアタシ達までビリビリに~!
ん? だったら近付かなければいいのでは?
アタシはブーメランを取り出し、植物の根をロープ状にして結び付けながらアリシアに尋ねる。
「アリシア、釣りは得意?」
それだけでアタシの言いたいことを理解してくれたようだ。
「任せて! 夏は毎年、川へキャンプしに行ってたからね! 釣りは得意だよ!」
「良~し、じゃあ行くよ~!」
アタシは電気ナマズに向かってブーメランを投げた。ナマズは悪食、動いてるモノにはなんでも食い付くと聞いた。だからきっと...
「良し! ブーメランを食った! アリシア!」
アタシはロープをアリシアに渡す。後はアリシアに釣り上げて貰うだけだ。だが...アリシアは動かない。アタシは焦った。
「あ、アリシア!?」
「もうちょっと...深く呑み込んでから...」
そう言ってアリシアは、手に持ったロープの感触に集中している。どうやら電気ナマズが呑み込んだブーメランが、胃に到達するまで待っているようだ。確かにそうしないと、引っ張った瞬間に抜けてしまうだろう。だが、もうそろそろみんなの所に電気ナマズが到達しそうだ。まだか...
「うりゃあ~! 一本釣り~!」
電気ナマズがみんなの目の前まで迫ったその時、アリシアが動いた! ロープを力一杯引っ張る! ロープがピンと撓る! アタシはロープが切れないように魔力を込める! 電気ナマズが浮き上がった!
「そりゃあ~!」
アリシアが更に力を込める! ついに電気ナマズが全身を露にした! デカイ! 5mは優に超えてる! 暴れているが、アリシアの力には敵わない! やがて...
「どりゃあ! 釣ったど~!」
電気ナマズを釣り上げた!
「やったね! 凄い! アリシア!」
「へへへ~♪ どんなもんだい♪」
だがアリシアが釣り上げた電気ナマズに近付こうとするのは慌てて止めた。
「待って、アリシア! まだ放電してるかも知れない! 近付かないで! トドメを刺すのはゴーレムに任せるから、あなたはみんなの回復をお願い!」
「おっと! そうだね。了解」
アタシはゴーレムに命じて、まだピクピク動いてる電気ナマズにトドメを刺した。みんなの所に戻ると、既にアリシアが回復してくれたようだ。浮島に釣り上げられた電気ナマズの大きさにみんなまずビックリして、次に何が起こったのか聞いてきた。
電気ナマズのことをみんなに説明したけど「電気ナマズ?」「なにそれ?」「電気ってなに?」やっぱり電気のことから説明する必要があるか。どうやって説明するかとアタシが頭を悩ませてると、
「ねぇ、なんか湖の水が減ってきてない?」
アリシアに言われて水面を見ると、確かに水位が下がってる。
なんでだろう?
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