これはアリシアが、闇の眷族四天王が1柱アシュラと対峙していた時のお話。
シルベスターは闇の中、逸れてしまったアリシアの姿を必死に追い求めていた。
「アリシア~! どこだ~!」
返事は無い。焦りだけが募る。どれくらい走り回っただろうか。息を切らしたシルベスターの目に、遠くの方で淡い光が闇を照らしている場所が見えた。
「あそこか!?」
疲れた体に鞭打ってその場所を目指す。
「アリシア~!」
居た! 無事だった! 良かった! エリオットも居る! 見付かって良かった! 無事で良かった!
そのはずなのに...
なぜか一瞬、彼女達の元へ向かうことを躊躇った。二人の邪魔をしちゃいけないって思ってしまった。そのくらい良い雰囲気に包まれているように見えた。二人の無事を素直に喜びたいのに...こんな時にそんなことを考えた自分がちょっと情けなくなった。
理由は分かっている。自分達は6人で1つのチーム。男3人に女3人。殿下とシャロン様は婚約者同士。アリシアとエリオットは、あの様子を見る限りは恐らく両想い。
では自分は? そしてミナは?
何も無い。ただの仲間でそれ以上でも以下でもない。その理由も分かってる。自分に告白する勇気が無いからだ。断られたらどうしよう? 嫌われたらどうしよう? そんな風に怖がって1歩を踏み出せない自分が居る。
ホントに意気地無しだよな...
アリシアから事の詳細を聞いている間も、そんなことをつらつらと考えていた。
「アリシア~! 無事で良かった~!」
そこへミナが涙を流しながら現れた。アリシアが心配で堪らなかったんだろう。ちょっとだけアリシアのことを羨ましいと思ってしまった自分にまた嫌気が差した。
◇◇◇
「デートを邪魔する!?」
「人聞きが悪いな! 邪魔じゃないよ! 心配だから見守るんだよ!」
「それは余計なお世話っていうんじゃ...」
「いいから! シルベスターも協力してよ! 殿下とシャロン様がチケット取ってくれるからさ!」
気は進まなかったが、楽しそうなミナの姿を見ていると断り切れなかった。
その結果はと言えば...
「アハハ、見事にバレちゃったね!」
「だから止めようって言ったのに...」
「まぁまぁ、楽しかったからいいじゃない! じゃあまた明日ね!」
「ちょ、ちょっと待って、ミナ!」
「なあに!?」
「あ、あのさ、今夜、オペラをちゃんと観れてなかったでしょ?」
「そうだね~」
「こ、今度はさ、ぼ、ボクと二人っきりで観に行かない?」
「え~!? あのオペラのチケットそう簡単に取れないよ!?」
「な、なんとかするよ。だから...」
「分かった。取れたらね」
「約束だよ!」
まずは1歩前に進む。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!