「お待たせしてごめんなさいね。色々とゴタゴタしちゃってて」
ヒルダさんは息を切らしていた。沢山の書類を抱えて大変そうだ。
「いえ、お気遣いなく」
「それで早速、報酬の件なんだけど...え~と...ちょっと待ってね...あぁこれこれ。まずはギルドからの依頼達成料が一億ペイルでしょ。それから魔石の売却益が同じく一億ペイルね。更にこれはギルドからの感謝の意を込めて謝礼金一千万ペイルが支払われるわ。おめでとう! あなた達、今日から大金持ちね! あ、あと国からの報償金も出るからまさにウハウハね!」
アタシ達はもう言葉もなかった。そんなアタシ達を尻目にヒルダさんが続ける。
「あ、そうだ。はい、どうせもうSランクになるのは確定だから、先に作っちゃったわ」
そう言ってアタシ達に冒険者カードを手渡して来た。それはキラキラと虹色に輝いていた。
「王子様とシャロンちゃんの分は戻って来てからね。きっと今頃は報償金の件に祝賀会の打ち合わせで忙しいから、すぐには解放されそうにないけど。もしかしたら祝賀パレードって話も出てるかもね?」
「い、いくらなんでもそこまでは...」
「あら? あなた達は国難規模の災厄から国を救ったヒーローなのよ? 為政者にとってみたら政治目的で使わない方が変だと思わない? これからきっと公式行事に引っ張りだこになるわ。覚悟しておいた方が良いかもね?」
アタシ達は全員が遠い目をしていたと思う...
◇◇◇
結局その日、殿下とシャロン様は戻って来なかった。
次の日、学園にも現れなかった。その代わりと言っちゃなんだが、アタシ達は学園中から注目の的となり、ひっきりなしに土竜との戦いのことを聞かれ、お昼休みになる頃にはみんなグッタリと疲れ切っていた。
そしてようやく殿下とシャロン様がやって来た。お二人は目の下にうっすら隈が出来ており、アタシ達以上に疲れ切った様子で食堂のテーブルに突っ伏した。
「まさか戦いが終わった後の方が疲れるとは思わなかった...」
と、殿下が自嘲混じりに苦笑する。
「政治の世界を甘く見てましたわ...誰もが私達の功績に便乗しようと、やれお茶会だの晩餐会だの夜会だの舞踏会だのと、ひっきりなしに誘いに来て...国を救ったヒーローと懇意にあるところを見せ付けようとする思惑が透けて見えて、本当に嫌気が差しましたわ...」
と、シャロン様も疲れ切った表情を浮かべる。ヒルダさんの言ってた通りになったね...すると殿下がこちらも疲れ切った顔を上げて、
「だが安心してくれ。我が『精霊の愛し子隊』の使命は、あくまでも精霊を倒すこと。そのことは改めて周知徹底させたからな。今回の功績は謂わば付随したようなもんだから、我々のお披露目は祝賀会と祝賀パレードのみとした。お前達の家族にも召集が掛かっているから、そのつもりでいてくれ」
まぁ仕方ないか...逆に言えばその2つだけで済むように、殿下達が交渉してくれたってことだもんね。ウチの家族にはまた迷惑掛けるんで申し訳ないけど、これも貴族としての社交だと思って我慢して欲しい。
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