あれからすぐにシルベスターと合流した。
「あぁ、良かった! アリシア! 探し回ってたんだよ!」
離れ離れになってからずっと探してくれてたみたいで、メチャクチャ心配された。事の経緯を掻い摘んで説明したら、私が四天王を倒したと知って、今度はメチャクチャ驚かれた。と、そこへ、
「アリシア~! 無事で良かった~!」
ミナが駆け寄って抱き付いて来たので、慌てて受け止めた。普段と逆だなって思って笑っちゃった。どうやら私とシルベスターまで行方不明になったと思って、みんなして探し回ってくれたみたい。
それもそうか。私達の所がアタリだったんだから、他の2ヶ所はハズレってことだもんね。エリオットが無事だったのも確認して、みんなしてホッと一息吐いたところで、私とエリオットが全てを話して聞かせた。
途端に重苦しい雰囲気に包まれる。それも当然のことで、なんと言っても私達のお膝元である学園に、闇の眷族の侵入を許してしまったんだから。それも四天王クラスを。由々しき事態だよね。私が倒したことを驚くよりも、問題の深刻さが暗い影を落とした。
特に狙われていたと知ったミナの顔色が悪い。自分のせいで私達を危険な目に合わせて申し訳ないとか思ってんのかな? そんなこと気にしなくていいのに。すると精霊王様が、
「アリシア、良くやってくれた。礼を言う。これで四天王の内、2柱が消えたことになり、闇の力をかなり削いだことになる。儂の力もかなり回復した。もう眠る必要もない。これからは、お主達の近くに易々と侵入を許すような真似はさせないと誓おう。レムよ、お前も寝ている暇はないぞ? 心せよ」
『精霊王様のお心のままに』
こうして波乱に満ちた1日が終わった。
◇◇◇
「ね、ねぇ、これって本当に変じゃない!?」
「変じゃない変じゃない、良く似合ってる。凄く色っぽいよ」
「そ、そう? このペンダントとイヤリングはどう? 似合ってる?」
「似合ってる似合ってる。とっても可愛いよ」
私は今、かつてない緊張感に包まれている。ついに今夜、エリオットと二人でオペラを鑑賞するのだ。初デートだ。ドレスコードがあるので、正装するためにミナの部屋でマリーさんに手伝って貰っている。
ドレスは学園の舞踏会で着たモノを使い回してるけど、アクセサリー類は新品だ。冒険者活動で貯めたお金を使って、ドレスに合うモノを揃えてみた。髪はハーフアップに纏めて貰った。鏡で確認する。うん、我ながら良い出来だと思う。
「アリシア、お迎えが来たよ」
いよいよだ! めっちゃ緊張する!
「アリシア、お待たせ...」
タキシード姿のエリオットがそこに居た。ヤバい! めちゃめちゃイケてるじゃん!
「エリオット...どうかな? 変じゃない?」
「とても良く似合ってるよ...その...凄くキレイだ...」
「あ、ありがとう...」
よっしゃあ! 掴みはオッケー!
「いってらっしゃ~い♪」
私達は、とても良い笑顔で送り出してくれたミナに見送られて、オペラハウスに向かった訳なんだけど、今思えばあの笑顔には裏があったのね...
正直、オペラは観ても良く分かんないし、退屈なんだけど、そんなことはどうでも良かった。隣にエリオットが居てくれるだけで幸せな気分になれた。
そんなオペラ初心者の私に、エリオットは親身になって解説してくれて、それがまた嬉しかった。長い上演時間も気にならない程だった。そしてオペラが終わった。
「エリオット、ありがとう。エリオットのお陰で結構楽しめたよ」
「僕も楽しかったよ。こんなにオペラを楽しめたのは初めてかも知れない、アリシアのお陰かも」
「エリオット...」
「アリシア...」
こ、この雰囲気はもしかして!? もしかしちゃったりするんじゃないか!? あ、ヤバい、緊張してきた...
そんな時だった。この雰囲気をぶち壊す声が聞こえたのは...
「おい、押すな! 危ないだろ!」「シーッ! 静かに! バレちゃうじゃないの!」「み、見えない~!」「ミナ、ここから見えるよ!」
あ、アイツら~! 私は隣のブースに乗り移った!
「アンタら、ここでなにやってんのよ~!!」
「や、やぁ、アリシア」「き、奇遇ですわね」「ぐ、偶然ってあるんだね」「ゴメン、アリシア、ボクは止めたんだけどね...」
「ふっざけんなぁ~!!!」
こうして私の初デートは散々な結果に終わった。トホホ...
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