「エルフども! いいか! よおく聞けい! 儂の名は精霊王ユグドラシルじゃ!」
精霊王はエルフの里の隅々まで届くような大声を張り上げた。エルフどもの間に動揺が走る。あちこちから「精霊王!?」「実在したのか!?」というような囁きが聞こえた。
「貴様らが崇拝しておる邪竜じゃが、既にこの世には無い! 長年に渡る封印によって力は弱り、存在が消え掛かっておった! そして今回、完全に消え去った! もはやどこにも存在しない! 存在しないものを崇拝して何になる! いい加減目を覚ますんじゃ」
そんな精霊王の訴えに長老が反発する。
「そ、そんなバカな! 邪竜様は確かに存在しておる! あれ程の魔力は邪竜様以外に有り得ん!」
「あれは邪竜の魔力の残滓。謂わば残りかすのようなもんじゃ。それも今となってはキレイに消え去ったがの。もう何も感じんじゃろ?」
「そ、そんな...だ、だが確かに...あれだけ強力だった魔力が今は...一体どうして...」
「それはこの青い鳥が全て浄化したからじゃ」
そう言って精霊王はメルの頭の上に移動した。
「その鳥が!? 一体どうやって!?」
「恐らくじゃが、この鳥は神獣なんじゃと思う。そうじゃろ?」
するとメルは「クルル」と鳴きながら、ゆっくりと頷いた。
「おぉっ! なんと神獣様とは!」「言われて見ればなんと神々しいお姿!」「ありがたや~! ありがたや~!」
途端にエルフの里の連中は、手の平を返したようにメルを崇め始めた。その光景を横目で見ながらミナとアリシアがコソコソ囁き合っていた。
「メルって神獣だったんだね」
「うん、みたいだね。私もビックリ」
「なんで急に大きくなったの?」
「私にも分かんない」
「アタシも乗せてくれるかな?」
「頼めば多分ね。でもいいの? ナギちゃん焼き餅焼くかもよ?」
「あ~...確かにね。やっぱ止めとく」
「ねぇ、それよりミナはなんでエルフに捕まってたの?」
「それな...実は、かくかくしかじかって訳でアタシが悪いんだわ...」
「なるほど...これこれうまうまって訳ね。そりゃ確かにミナが悪いわ」
「ホント申し訳ない...」
「殿下達にもちゃんと謝りなよ? 今頃こっちに向かってるはずだから」
「うん、そうする。でもアリシアが先に来てくれてホント助かったよ~...間一髪だったもん...」
「それな...そのことに関してはさ、後でレムにも謝らせるから...」
「うん!? どういう意味!?」
「実は...かくかくしかじかで...」
真相を知ったミナがぶち切れたのは当然の流れである。
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