学園祭も終わり、季節は秋めいてきた。
第2回総合テストがそろそろ始まる。前回は『精霊の愛し子隊』が上位を独占したけど、今回は厳しいかも知れない。なぜなら困ったちゃんが一人居るからである。試験勉強を手伝って欲しいっていうから図書室に来たんだけど、
「アリシア、ここの計算間違ってる」
「あ、ホントだ...」
「こっちは文法がメチャクチャ」
「あう...」
「歴史上の人物の名前違ってる。年号も合ってない」
「ひう...」
「化学式全然違う」
「ふう...」
「...アリシア、あんた得意な科目無いの!?」
「強いて言えば漢字の書き取りが.. 」
「この世界に漢字ねぇよ...」
「ですよね...」
「あんた、もしかして高校じゃ赤点まみれだった?」
「うぐ...」
「はぁ.. それでいいのか、花の女子高生...」
「返す言葉もありましぇん...」
「いいこと? この世界の学力レベルはね、全体的に前世で言えばせいぜい中学生レベルなのよ? 高校まで行ってた学力があれば、本来なら楽勝のはずなの。なにせ漢字も平仮名も片仮名も古文も漢文も無いんだから。国語は英語だし。それも中学生レベルの。外国語はフランス語かドイツ語だけど、それも中学生どころか小学生レベルなんだよ?」
「うぅ...分かってはいるんだけど...」
「数字も化学も中学生レベルの学力があれば問題無し。歴史だけは1から覚える必要があるけど、それだって年号と人の名前と地理を覚えるくらいなんだよ? 全然大したこと無いんだよ?」
「暗記が苦手で...」
「漢字だと思って覚えなさい。書き取りは得意なんでしょ?」
「やってみます...」
「頼むから赤点だけは勘弁してよね...」
「努力します...」
う~む...ここまで問題児だとは思わなかった...夏休みの宿題手伝った時は気付かなかったよ。でもまあ、今思うとあの時からおバカの片鱗は見せてたのかな。こりゃ困ったぞ...
「あれ? ミナにアリシア。二人も試験勉強?」
「そう、シルベスターも?」
「うん、前回より上を目指したいからね」
「良い心掛けだね。良かったら一緒にどう?」
「いいの? じゃあお言葉に甘えて。今は何をやってるの?」
「全般」
「へっ?」
「だから全般。アリシアのためにね」
「ホント、すいません...」
「そ、そうなんだ...大変だね...」
「シルベスターは?」
「ボクは暗記が苦手だから、それを重点的にね。ミナに教わった語呂合わせを駆使してやろうかなと」
「あれ覚え易いでしょ?」
「うん、とっても助かってる。ありがとう」
「どう致しまして。アリシア! 手が止まってるよ!」
「は、はい、すいません...」
これは前途多難かも...すぐ気が散るのは集中力の問題なのかな? それならば、
「アリシア、自分の周りにだけ遮音結界張ってみて。音が遮断されれば集中出来るでしょ?」
「なるほど...やってみる」
~ 1時間後 ~
「アリシア! 寝るな!」
バシッ!
「はうっ! すいません!」
これは予想外だったよ...
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