「今度は物理で攻撃してみますか」
「あの固そうな甲羅をか?」
「違います。今は引っ込んでるけど、その内に首と足を出して来るでしょう? そこを狙うんですよ」
「あぁ、なるほど」
「てな訳で、亀を取り囲んで分担を決めて攻撃しましょう」
協議の結果、殿下とエリオットが首、アタシとアリシアが前足、シルベスターとシャロン様が後ろ足に決まった。それぞれが配置に就く。そして只管待つ。
「...なぁ、この亀...寝てるんじゃね?」
シビレを切らした殿下が首を覗き込む。
ボウッ!
「どわぁっ!」
亀が火を噴いたのを慌てて避ける。殿下の髪の毛がチリッとした。
「...起きてはいるみたいですね...」
ただこのままじゃ埒が明かない。待ってるだけじゃ、いつ出て来るのかも分からない。
「みんなで一斉に穴に向かって魔法をぶち込んでみましょうか。エリオット、アリシアの位置に移動して」
「了解」
アリシアだけは攻撃魔法を使えないからね。決してあの二人に気を遣ったとかじゃないよ! 作戦行動中なんだから! ほ、ホントだってばさ!
「カウントダウンします。3、2、1、ファイアー!」
全員で一斉に攻撃魔法を放つ。しばらくして、やっと亀が動き出した。
「そろそろ出ます! 攻撃用意!」
ゆっくりと亀の首と足が出て来た。
「攻撃開始! って、えぇっ!?」
出て来たと思ったら、アタシ達の攻撃が届く前に、まるでゴム仕掛けのようなスピードで再び引っ込んでしまった。空振ったアタシ達の攻撃はそのまま硬い亀の甲羅に当たって...
「バキッ!」「ビキッ!」「ブキッ!」「ベキッ!」「ボキッ!」
全て壊れてしまった...シルベスターの弓以外は...
「「「「「 ギィヤァァァッ! 」」」」」
◇◇◇
「こ、このクソ亀ぇ! よくもやりやがったなぁ!」
「あぁ、ミスリルの武器が...」
「せっかく手に馴染んで来たところでしたのに...」
「私は右手だけ壊れたけど、これじゃあバランス悪いよね...」
アリシアは利き手だけ。他のみんなは全壊。アタシのブーメランも...しかしミスリルの武器を破壊するって...どんだけ硬いんだよ、この甲羅...
「あ、あの、みんな...元気出して...ね?」
一人だけ無事だったシルベスターがなんか言ってるけど誰も聞いちゃいない。
「ミナっ! このクソ亀さっさと叩き潰すぞ!」
「あぁ! 愛用の武器の敵討ちだ!」
「たっぷりとお仕置きが必要ですわね!」
「ま、まぁ、落ち着いて行こう?」
アリシア以外、みんな興奮してるな...無理もないが。さて、どうしたものか。この状況をひっくり返すには...
ん? ひっくり返す?
閃いた!
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