「すぐに出るわ! レム! 方角はどっち?」
『み、南よ!』
すぐに駆け出そうとした私だったが、
「アリシア! 待て!」
シャロン様に叩き起こされ、引っ張って来られた寝癖だらけの殿下に止められた。
「殿下! ミナの居場所が分かったんです! 行かせて下さい!」
「慌てるな! 走って行くつもりか!? すぐに馬を用意する!」
そうだった。急ぐあまりうっかりしてたよ。当たり前だが、いくら私が身体強化して走ったって、馬より速く走れるはずがなかったね。ここは大人しく、馬が来るのを待とうと思っていた時だった。
「クウッ!」
一際甲高く鳴いたメルが飛び上がった。そしてメルの体が光に包まれた。光が消えた後には、
「め、メル! あんたも大きくなれたの!?」
「クルルッ!」
ナギちゃんほど大きくは無いが、人一人なら余裕で乗せられそうな大きさに成長したメルは、少しだけ低くなった声で鳴いた。それは背中に乗れと言ってるように聞こえた。
「乗せてくれるの!?」
「クルルッ!」
もう一度鳴いたメルは、私が乗りやすいように姿勢を低くしてくれた。
「殿下! 私はメルに乗って行きます! 皆さんは馬に乗って後から来て下さい!」
すると殿下は一瞬考え込んだ。私一人じゃ危険かもと心配したのかも知れない。無理もないけどね。
「...分かった! アリシアなら一人でも大丈夫だろう! だが決して無理はするなよ! 俺達もすぐに追い付くからな!」
「ありがとうございます! メル! 行こう!」
「クルルッ!」
私はメルの首元に掴まるような形で背中に乗った。メルが力強く羽ばたく。一瞬だけエリオットと目が合った。不安そうにしている顔に大丈夫と笑顔を浮かべて、私とメルは大空に飛び立った。
◇◇◇
「レム! 後どれくらい!?」
『もうちょっと先よ!』
飛び始めて一時間くらい経っただろうか。メルはかなりの高速で飛行している。体感だとナギちゃんと同じくらいのスピードが出てる気がする。
やがて眼下に大森林が広がっているのを確認した。この森のどこかにミナ達は居るんだろうか?
『アリシア! そろそろよ!』
レムが叫ぶ。
「メル! スピード落として!」
「クルルッ!」
『この辺りのはずなんだけど...』
レムがそう呟くので、私も辺りを見回してみた。その時、私の視界に何かキラッと光るモノが飛び込んで来た。
「レム! メル! あそこ!」
私が指差す先に広がっているのは、半透明になった巨大なドーム状の膜が、上空から森の一部を切り取ったかのようにスッポリと覆っている光景だった。
『これは...結界の一種かしら...随分と頑丈そうね...』
「レム! 間違いないよ! ミナ達はあの中だ! 感じるんだ!」
見えないけど分かるんだ! 絶対この中に居る! きっと閉じ込められているんだ!
『えぇ、そうね...でもこの結界、そう簡単には破れそうも無い感じよ?』
「やってみなきゃ分かんないよ! メル! 出来るだけあの膜に近付いて!」
「クルルッ!」
『ちょっとアリシア!? どうする気!?』
「こうすんのよ!」
私はメルの背中から膜に向かって飛び降りた。
「チェスト~!」
かかと落としの体勢で。
こんな結界なんか物理で壊してやる!
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