アタシ達は今日、冒険者ギルドに来ている。
Sランク冒険者としての指名依頼があった為だ。
「お待たせしてごめんなさいね。来てくれてありがとう」
ヒルダさんが何やら資料を抱えながらやって来た。
「指名依頼だからな。断れないさ。で? どんな依頼なんだ?」
「まずはこの資料を見て頂戴」
アタシ達は資料を覗き込む。
「これは...被害報告!?」
「えぇ、そうよ。ここから北にしばらく行った所にオリンポス山という名の大きな山があるんだけど、ここ最近その近辺だけに竜巻の被害が出てるのよ」
「竜巻!? 自然災害じゃないのか!? それをどうしろと!? 俺達は竜巻の専門家じゃないぞ!?」
殿下の言う通りだ。自然災害じゃアタシ達にはどうしようもない。なんでそんな依頼が来たんだろう?
「自然災害じゃないのよ。それまで竜巻なんか起きたことがなかった場所に、いきなり竜巻が頻繁に発生するようになって、おかしいと思った付近の住民が調査したのね。そうしたら、竜巻が起こった近くで黒い大きな影が空に浮いているのを何度も目撃されているのよ」
「それって一体!?」
「分からないのよ。その正体を調べて欲しいの。もしそれが魔物で、竜巻もそのせいだとしたら倒して欲しい。そこまでが依頼内容よ」
「なるほど...依頼内容は良く分かったが、なんで俺達に指名が来たんだ!?」
「まず第一に場所が王都からかなり離れていること。あなた達なら空を飛ぶっていう移動手段があるからすぐ着けるでしょ? 第二に竜巻を作れるくらい強い魔物なら、こちらもそれなりに強い冒険者を用意する必要があるわ。あなた達なら適任でしょ?」
「確かにそうだな。分かった。引き受けよう。というか、指名依頼ならそもそも断れないよな」
「ありがとう。助かるわ」
こうしてアタシ達は指名依頼を受けた。
◇◇◇
「アリシアはどうする? メルに乗って行く?」
「うん、そうする」
オリンポス山へ出発する日、アリシアを除くアタシ達はナギに乗っている。アリシアはメルに乗って行くことにしたようだ。
ナギとメルが並んで飛ぶ様は、きっと下から見たら圧巻だろうなってふと思ったりした。
「メル、飛ばすよ? ちゃんと付いて来れる?」
「クルルッ!」
「良し。ナギ、飛ばして」
「キュイ!」
オリンポス山までは馬車で約10日くらい掛かるらしい。だから最初っからナギにはフルスピードで飛ばして貰う。
メルもちゃんとそのスピードに付いて来れるようだ。
やがて半日もしない内に、前方に大きな山が見えて来た。
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