転生前のアタシ達の世界では「竜」と「ドラゴン」は似て非なる存在だったと思ってる。
東洋と西洋の違いっていうか、民族的あるいは宗教的な違いっていうか。東洋的には神にも等しい存在だと思われるている「竜」。竜神や神竜なんて言葉もあるくらい敬われて畏れられる対象。
対して西洋的には打破すべき悪、打倒すれば栄華を欲しいままに出来る存在としての「ドラゴン」。具体的には、お姫様を拐って行ってそのお姫様を助けに行った騎士に倒されるとか、キラキラした物が大好きで金銀財宝集めるのが趣味で、倒すとそれを全て手に出来るとか。
まさに両極端なんだよね。今まで戦って来たり、仲間になった「竜」あるいは「ドラゴン」は、レッドドラゴンがそのまんま西洋的でトカゲがデッカくなったような姿。ナギはどちらかと言うと東洋的な感じがする。土竜はそのどちらでも無いって感じ。
そして今目の前に居るのは、アタシ達東洋人にとっても馴染み深いまさしく「竜」って感じの存在。長大な体に短い手足。長い二本の髭に角。体色は透き通るようなエメラルドグリーンで、瞳は赤く輝いている。思わず拝みたくなるような神々しさがある。
アタシ達が圧倒されて固まっていると、竜が厳かに喋り出した。
『どうした人間達よ? 我の試練を受けに来たのではないのか?』
「へっ!? し、試練!? い、いえ違いますけど...」
『そうなのか? では、なんのためにこんな所まで遥々やって来た?』
「えっとですね、最近この辺りで竜巻の被害が多発しているとのことで、その原因究明のために来ました」
『なんとそうであったか。済まんな。それは我の仕業だ』
「えっ!? そうなんですか!? なんでまた!?」
『最近、我の力を取り込もうとする不届き者共がおってな。そいつらを撃退していたのだ』
「えっと...それはどういった連中なんでしょうか!?」
『正体は分からんが、禍々しい黒いオーラを纏ったヤツらだ』
するとここで精霊王様が口を挟む。
「風竜よ。そやつらは恐らく闇の精霊の眷族じゃ」
あぁ、やっぱりこれが風竜だったんだね。なんとなく分かってはいたけどさ。
『お主は?』
「儂は精霊王ユグドラシルじゃ」
『ほう、お主が精霊王か。お初にお目に掛かる。して闇の精霊の眷族とは?』
「この世を闇に落とそうとする穢れたヤツらじゃ。儂らはそれを阻止せんと戦っておる。お主が取り込まれんで良かったぞ」
『我はあんなヤツらには屈せぬ』
「それは心強い。どうじゃ風竜よ、儂らに協力してはくれぬか?」
『フム、我の力を欲するなら試練を受けて貰う必要がある。試練を乗り越えられたなら、我は喜んで手を貸そう』
試練か。そういやさっきも言ってたね。どんな試練なんだろ?
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