なにがどーしてこーなった!? ~乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています

ロリっ娘無双
真理亜
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ちみっこと風竜の山 その2

公開日時: 2021年6月10日(木) 16:39
文字数:1,013

『オリンポス山』は海抜約5000mクラスの高い山で、頂上付近は万年雪を冠している。


 霊峰とも呼ばれている山らしい。その威容にアタシ達は圧倒される。


「凄いね...」


「うん...なんか厳かな感じがする...」


「それと寒いね...」


「うん...防寒装備は万全なはずなのにね...」


 アタシとアリシアがそんな会話を交わしていると、


「おい、あれが竜巻の通った跡じゃないか!?」


 殿下が指差す方を見ると、確かに森の中の一部に木々が倒れている所がある。


「降りてみましょう」


 降り立った場所は針葉樹の森の中で、風に薙ぎ倒された木々が道を作っているかのようだった。


「まるで何かが通った跡みたいですね」


「あぁ、それが森の奥まで続いているな。跡を尾けるか?」


「そうですね...」


 アタシはちょっと考えてから、


「上と下から行きましょう。アリシア、徒歩で行ってくれる? あんたの身体強化なら山の中でも軽いもんでしょ? 私達は飛んで行くから」


「オッケー!」


「何かあったらすぐに言ってね?」


「了解!」


「メル、アリシアをよろしくね?」


「クルルッ!」


 もしかしたら何か手懸かりがあるかも知れないので、アリシアには地上を見て貰おうと思った。アタシ達は再びナギに乗って空から跡を追う。


 やがて森の奥の方の木々が生えてない場所に出た。


「ここは湖!?」


 湖と呼ぶには小さい。池と呼ぶべきだろうか。とにかくそんな所だ。


「ナギ、水辺の辺りに降りて?」


「キュイ!」


 アタシ達は水辺を探索しながら、アリシアの到着を待つことにした。


「キレイな湖だな」


「えぇ、透明度が高いですね」


 底の方まで良く見える。魚の姿は見えない。


「ん!? あれは!?」


 湖の底に何か光る物がある。


「なんだろうな!?」


 殿下と二人で目を凝らすが良く分からない。


「ウンディーネ、あれなにか分かる!?」


『ん~...斧みたいね~』


「はっ!? なんだって!?」


『だから斧よ~』


 まさかと思うが...ここで湖の女神が出て来て『あなたが落としたのはこの金の斧ですか? それともこの銀の斧ですか?』なんてね。


 あれはお伽噺であって、実際にそんなことある訳が...


 ザバァ!


 あったよ! ただし出て来たのは女神じゃなくて...


『ほう、人間の姿を見るのは久しいな』


 湖から長い首を出してこちらを見下ろしているのは...


 神話の時代を生きる存在、長大な体をくねらせるその姿は、ドラゴンではなく竜と呼ぶに相応しい。

 

 アタシは呆然と見上げながら、そんなことをボンヤリと考えていた。

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