あぁ~! もうダメだぁ~!
物凄いスピードで地底に落ちて行く刹那、アタシの頭の中に走馬灯が流れた気がした。あぁ~ 二回目の人生も短かったなぁ~ せっかくやり直せたのになぁ~ 恋もしてみたかったな~
ポヨーン ポヨーン ポヨーン...
「へっ?」
落下の衝撃を覚悟していたアタシは、柔らかい何かに受け止められた。そして何故かシャボン玉のような球の中に入っていて、しかも上下が逆さまになってる。
状況が良く理解出来ていないが、どうやら助かったらしい。ここは地底湖か? 水の上に浮いてるみたいだ。そこへ、
『危なかった! ギリギリ間に合ったわね!』
いつもの間延び口調じゃないけど、この声はウンディーネ? それじゃあここはウンディーネが作ったシャボン玉の中? 上下逆さまなのは落下の衝撃でひっくり返ったから?
だんだん状況を理解してきたアタシは、恐る恐る体勢を元に戻してみた。すると全員の姿が見えた。良かった! 全員無事だ! ウンディーネが助けてくれたんだね! ありがとう! 命の恩人? 恩精だよ!
ウンディーネにお礼を言おうと思ったら、それより早くウンディーネの怒声が響き渡った。
『シルフ! あんた、なんてことしてくれてんのよ! みんなを殺すところだったじゃない! 分かってんの!』
『ご、ごめんなさーい!』
『謝って済むなら警察なんて要らないのよ!』
『ふぇーん!』
「あ、あの、ウンディーネ? もう、そのくらいで...」
精霊の口から警察なんて言葉が出るとは思わなかったよ...
「ミナッ! 大丈夫だった? 怪我はない? 他のみんなはどう?」
全員から「大丈夫」という声が上がった。
『間に合って良かった...ゴメンね、シルフのバカのせいで怖い思いさせちゃって...』
「ううん、ウンディーネが助けてくれたから、もう平気。助けてくれて本当にありがとうね」
『どういたしまして...フゥッ、それにしても寿命が縮む思いだったわよ...』
精霊にも寿命があるんだ...いや、それよりも、
「ウンディーネ、素の口調はそれなんだね?」
『あぁ、普段はキャラ作ってるからね。素はこれよ。そろそろ~ 戻すわ~』
キャラって...精霊がどんどん人間っぽくなってる気が...あ、戻すのね。
「みんな~! 無事で良かったよ~!」
アタシ達は集まって喜びを分かち合った。
「だから俺は嫌だって言ったんだよ...」
うん、殿下。ゴメン、その通りだったよ...卵の件がなかったら降りなかったかも知れないしね。
「もう精霊をチェンジしたい...誰か代わって...」
うん、シャロン様。その気持ちは良く分かる。けど無理じゃないかなぁ。シルフの成長に期待するしかないかも。
「生きた心地がしなかった...あとなんか視界がボヤける」
うん、エリオット。アタシも同感。走馬灯が見えたような気がするもん。それと視界がボヤけてるのは眼鏡がズレてるからだぞ。
「怖かったよ~! もうお家帰りたいよ~!」
うん、シルベスター。アタシも帰りたいけど、卵を確認してからね。それと、もうちょっと男らしくしろ。すぐ泣き言言うな。怖いのはみんな一緒なんだ。
「ちょっと怖かったけど、面白かった! もう一回やってみたいな!」
うん、アリシア。ある意味予想通りの答えだったよ。あんたならきっとバンジージャンプとか平気なんだろうね。アタシは絶対ゴメンだけど。
「それでアリシア、卵はどこら辺にあるの?」
落ち着いた後、アタシ達は地底湖の湖面を移動する。
「ちょっと待って...穴があそこだから...落ちて来た位置はここで...多分...あっ! こっちだと思う!」
「確かなの?」
「うん、卵の近くに浮島みたいなものがあったから。ほら、あれ!」
確かに小さな島が見える。
「取り敢えず、あの島に上がりましょうか」
島に向かって移動し始めた時だった。突然、後ろから起こった波に足を掬われそうになった。
「な、なに!?」
振り返るとそこには、口元に何本も生えた長いヒゲ、大きく開いた口は何でも飲み込みそう。巨大なナマズが迫って来ていた。
「みんな、逃げて!」
飲み込まれたら、たとえウンディーネの加護があってもどうなるか分からない。ここは一旦撤収して体勢を整えて...
パチ パチ パチ パチ...
何の音? チラッと後ろを見ると、ナマズのヒゲの辺りに青白いスパークが見えた。
電気ナマズ!?
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