冬物装備とアリシアの剛弓を調えたアタシ達は、北方の町『ポラリス』を目指す。
大山脈の麓にあるその町が今回の依頼元だ。今回もナギの背に乗って向かう訳だが、
「ね、ねぇ! ナギ! あんた、飛ぶスピードが上がってない!?」
周りの景色が凄い勢いで後ろに流れて行くんだが...
「キュイ?」
本人っていうか本竜にはその自覚は無いようで、長い首を傾げるだけだ。さすがにこのスピードだと、怖がりシルベスター以外のみんなも顔が強ばっている。かくいうアタシもその一人だ。シルベスターなんか顔面蒼白で今にも倒れそうだ。
「イエ~イ♪ もっともっと飛ばせ~♪ ジャンジャン飛ばせ~♪」
能天気に浮かれているバカ一人を除いて...誰なのかは言うまでもないよね...
なんと結局、馬車で約10日くらい掛かる距離を、僅か1時間足らずで飛んでしまったらしく、やがて前方に万年雪を頂く大山脈が見えて来た。
「ナギ! ちょっとスピード落として!」
「キュイ!」
「あっ! 町が見えたよ!」
視力強化しているアリシアが叫ぶ。その時だった。
「ギイェェェッ!」
ワイバーンが襲い掛かって来た! それも群れで! ワイバーンは翼の生えたデカいトカゲといった姿の魔物だ。翼を広げれば約5mくらいの体長だろうか。それが20匹くらいの群れを作っている。
「みんな! 戦闘用意! アリシアとシルベスターは弓矢で! その他は貫通系の魔法で!」
「「「「「 応っ! 」」」」」
ワイバーンとの戦いが幕を開けた。
◇◇◇
『ファイアーランス!』
『アイスニードル!』
『ウインドスビア!』
みんなそれぞれの得意属性で攻撃するが、アタシは一人だけ攻撃せず、ワイバーンの攻撃に備える。
「ウリャ!」「トリャ!」「......」
アリシアは剛弓を事も無げに使い熟し、シルベスターは静かに魔弓を操る。ワイバーンはあっという間に数を減らした。
残ったワイバーンが一ヶ所に集まって、鋭い牙の生えた口を大きく開ける。ブレス攻撃!? アタシはバリヤを張って身構える。
「うぐっ!?」
アタシ達は全員耳を抑えた。こ、これは超音波攻撃!? だとすれば物理防御のバリヤじゃ防ぎ切れない! アタシは耳を抑えながら、みんなに聞こえるように大声で叫ぶ!
「みんな! 防御を捨てて全力攻撃! 次のブレスを打たれる前に片付けるよ!」
「「「「「 応っ! 」」」」」
アタシもブーメランを構えて投げ付けた!
「ギイェェェッ!」
ワイバーンは全滅した。
ふう...なんとかなったね...
アタシ達は依頼達成を報告するために『ポラリス』の町へと向かった。
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