ミナとアリシアがコソコソと囁き合っていた間、精霊王は纏めに入っていた。
「理解したか? 貴様らは幻想にすがり付いていたんじゃ。そんな空しいことは直ちに止めよ。現実をしっかり受け止めるんじゃな」
エルフどもはすっかり項垂れてしまった。
「そもそもがじゃ、貴様らは邪竜を復活させてどうするつもりじゃたんじゃ!? 世界を滅ぼす気じゃったのか!?」
「...そんなつもりはなかった...邪竜様が復活なされば我らに繁栄を齎してくれるだろうと...」
長老が苦し気に呟く。
「そんな訳無かろうが。仮に復活したとしたら、貴様らが真っ先に餌食とされたことじゃろう」
精霊王に冷静に指摘されて長老は黙り込んでしまった。
「さて、ミナよ。生贄にされそうになったお主はさぞや業腹だろうが、愚かな指導者に導かれた民には多少の慈悲は与えてやっても良いと思うんじゃがどうじゃ?」
「そうですね...まぁ確かに危うく殺されそうになった身としては、皆殺しにしても飽き足らない所ではありますが、ちょっと時間が経って冷静になってみれば精霊王様の仰る通りかも知れませんね。この里の者に対する処分は、もうすぐここに到着する予定のアルベルト殿下に託したいと思います。ただ...」
ミナは跪いているエルフの戦士ルークの前に立って、ゴーレムを一体作り出した。
「てめぇだけは許せねぇ! 死にさらせやぁ!」
呪詛の叫びと共にゴーレムで蹴り飛ばした。
「へぶしっ!」
ルークは吹っ飛んで行ってそのまま気を失った。次にミナが長老に目を向けると、
「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」
長老はひれ伏してしまった。さすがに老人には手を出し辛いのかミナは、
「今日はこの辺で勘弁してやらぁ!」
と、捨て台詞を吐いたのだった。
◇◇◇
「ミナっ! アリシアっ!」
「「 殿下っ! 」」
それからしばらく経って、日が暮れる頃にアルベルト達が到着した。抱き合って再会を喜ぶ女性陣を尻目に、アルベルトは精霊王から事の詳細の説明を受けていた。
既に里の者全員が武装解除されナギが睨みを効かせている前で、長老や族長含めた里の首脳陣はアルベルトと会談を行い、その場でアルタイル王国に恭順することが決まった。
里の首脳陣や戦士達に対する処分は後日決定することになり、その夜は全員でエルフの里に一泊してから王都に帰ることになった。
次の日、ミナがナギに乗って帰ろうとすると、
「待てミナ! お前は当分の間ナギに乗るのは禁止だ! 俺の馬に乗れ! 理由は分かってるな!?」
「は、はいぃ...」
そもそも騒動の発端であるミナは大人しく従うしかなかった。
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