猫耳っ娘 カドルサムとの一日

猫耳と暮らすたった一日の幸せ
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第8話 ネコにつきもの

公開日時: 2022年2月27日(日) 14:54
文字数:2,464

 種々雑多ともいえるように、色々な出来事があった今日一日。ギルドの依頼もなんなく達成し、それから多少たりとも騒動があったものの、俺達は今しがた家で夕食を食べ終えたところだ。夕食はいつも通りテイクアウトしてきたものだったが、今日は歩き疲れていたこともあって夕食を食べ終えた後、俺とカドルサムはソファの上でゴロゴロしていた。


「ふぁ〜、さーてご飯も食べ終わったことだし、ドルドルは寝るかにゃー」


 カドルサムはその尖った牙が曝け出るほどの大きなあくびを垂らしながら言った。夕食を食べ終えたばかりということで、眠くなってくるのがちょうどこの時間帯。マタタビで酔ってしまったりと今日一連の疲れが彼女の身にはっきりと現れてて、尻尾はずいぶんとご機嫌ななめである。


「うん、おやすみカドルサムー」

「おやすみなのにゃ……」


今にも眠ってしまいそうなこの表情。

カドルサムは覚束ない足どりでそのまま自室へ向かうが……。


ーーここでふと、俺の脳内にひとつの疑問が生じる。


「あれ? そういえばお前、帰っても来てからけ?」


その一言で一瞬彼女の全身がピクッと微かに震えたような気がした。しかし、何事もなかったようにそのまま部屋から立ち去ろうとするカドルサム。俺の瞳から射抜かれるその鋭い視線に彼女の額から冷や汗が滴るーー。


♢♦︎♢♦︎


「ーーお風呂に入るのは嫌にゃ!!」

「いや、そうはさせまい!! 今日は森を歩き回って汗をかく機会も多かったはずだ。お風呂に入らなければベットルームが汚くなるだろう!!」


……こと既に遅し。その数十分後は大乱闘が始まっていた。

いわばそれはクッションの投げ合いなどという単純な戦いであったが、お風呂に入ることが嫌いなカドルサムにとっては命をかけた戦いだ。尻尾が毛羽立っている様子や荒々しい呼吸はそれらを物語っているようだった。


「なんでそんなにお風呂に入ることを嫌がるんだ、お前は!!」

「お風呂というそのものが嫌なのにゃ!! 嫌と言ったらいやいやいや……っ!!

 それにベットで寝ることはドルドルにとって一種の癒やし!!

 つまり''''ということなのにゃあぁぁーー」


「なんだ、''って!? それを言うなら’’ペットセラピー(ペットを飼うことによって得られる癒やし効果のこと)’’だろ!! 言葉を自分の都合がいいように改変するな」

「にゃぁぁ……、確かにそれもそうなのにゃ。今回はドルドルの負けを認めるのにゃ。


 ーーおしっ、お風呂に入って来ます!!」


カドルサムは俺に向かって敬礼のポーズを取ると、バスルームへと駆け出していった。ここでいさぎよく自身の過ちを認めてくれたのは良かったけど、やけにすんなり俺のいうことを聞いてくれた気がする……。


♢♦︎♢♦︎


「アイツ、随分と長くお風呂に入っているな……」


 それから一時間ほど後の出来事のこと。カドルサムはお風呂に入ってくると言い残したそれっきり、まだお風呂から上がってきていない。あれほどお風呂が嫌いと言っていた彼女がこんなにも長くお風呂に入るはずがないし、なんかちょっと不自然だと思う。


そういうのはあくまでも人の好き好きだけれども、脱水症のリスクも考えられるしな。ちょっと胸騒ぎがするのは俺の気のせいであってほしい。こうして俺は彼女の安全確認のため、彼女が入っているはずのバスルームの脱衣所の前までやって来たのである。


「……カドルサム? 随分と長い間お風呂に入ってるような気がするけど大丈夫か?」


脱衣所の扉を軽くノックしながら言う。

しかし、貫かれるのは静寂というただそれだけ。

扉の向こう側から彼女の返事は一切帰ってくることはなかった。


「……カドルサム? 聞こえてるのか?」


二度三度やってもその結果は同じ。

静寂というものがひたすら流れるだけであった。


「……扉を開けるぞ? いいな、カドルサム?」


返事はやはり帰ってくることはなかった。

扉の前で空を切ったその声は溶け込むように消えていった。


’’彼女の身に何かあったのかもしれない’’

そう感じ取った俺は、高まる鼓動と焦燥感に思わず勢いよく扉を開くーー。


「カッ、カドルサム!!!」


乱れる呼吸を整えながらも見上げた視線の先、そこにいたのは衣類を身に着けたまま床に倒れ込んだ姿であった。


咄嗟に彼女の元へと駆け寄るーー。


「カドルサム……!!!」


そうして彼女の体をそっと持ち上げた。幸い、彼女の胸元はまだ上下していて息もまだある。熱があるわけでも、汗をかいているわけでもない。


一体俺は何をどうすればいいんだ……?


こういうときこそ冷静に対応すべきなのだが、降り積もる不安と心細さのばかり落ち着きを取り戻せないばかりである。彼女の体を何度も揺さぶり意識があるかをどうか確認をする。しかし、ことはなかった。


「おっ……、お願いだ!! 目を覚ましてくれっ、カドルサムーーー!!!」


そんな必死な叫びもあったのか、ほんのわずかだけども彼女の唇が動いたのがわかった。それに加え、上手く耳を使わなければ聞き取れなさそうな大きさだけれども彼女が俺に何かを伝えようしていると瞬時に理解する。


脇目も振らず彼女の口へと耳をたてたーー。


「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………zzZ」

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