【完結】慰霊の旅路~対峙編~

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宇治川ライン(京都・綴喜郡宇治田原町)

公開日時: 2021年11月30日(火) 00:06
文字数:8,067

千日デパート火災跡を後にした一同はすぐさま歩行者の邪魔にならないような場所に移動をし始めると、それぞれ自身の御祓いを済ませてから近くの喫茶店で休憩をしようかという事になり、たまたま歩いた先で見つけた喫茶店に立ち寄るとコーヒーを全員が注文したところでブレイクタイムを取ることにした。


そんなときに、侑斗が持参していたタブレットで”慰霊の旅路”の確認を行うと、新規の心霊検証の依頼が入っていたので、その場にいた星弥、原田、小田切、勝本の4人に「新規の依頼が入っている。引き受けるべきかどうか皆で話し合いがしたい。」と切り出すと、小田切は「どんな内容が入っている?読んでほしい。」とお願いをしたところで、侑斗は投稿された内容を読み始めた。


『はじめまして。慰霊の旅路の心霊リポートを楽しく拝読させて頂いています。ハンドルネーム寧々といいます。わたしが最近体験した怖いことについて、本当にあれは心霊体験だったのかどうかを見極めて頂きたいと思い投稿をさせて頂きました。わたしは綴喜郡宇治田原町に住んでいるのですが、勤務先が平等院の近くのお土産屋ということもあって、よく車通勤の際に宇治川ラインを使っているのですが、そこで体験した出来事です。わたしがいつも9時の出勤に間に合うように、朝の7時40分過ぎには家を出て宇治川ラインへと出る道へと出てくるのですが、この日はなぜか走り始めると同時に段々と酷い寒気と言いますかね、悪寒に近いと言いますか、そんな感覚に襲われるようになって、天ケ瀬ダムを通り過ぎたなというときにそれは現れました。宇治川のほうから、ふと右腕を誰かに握られたなという冷たい触感に襲われると、それが続けて何人もの腕が、漫画ワンピースで言う、ルフィのゴムゴムの手のようなものが複数も川から伸びてきてわたしの手を掴み始めました。伸びてきた腕は川の方向へと引きずられそうになりましたが、わたしは”生きたい”と強く抵抗を示し、何とか最期の一人の腕が粘り強く引きずろうと引きずろうとしたので、命あるわたしのほうが強いんだと振り払って、何とか平等院の近くまでやってきたときには、あの複数の腕は消えていました。ただ一つ、今でも覚えていることはそれは生きている人間ではなかったという事です。わたしは京都方面へと向かって通行していましたが、そのときに対抗する車は走っていませんでしたし、対向する車を運転する運転手が必死になって私の車のほうへと腕を伸ばすなんてことは極めて考えにくく、また握られた手の平の触感も、それは冷たく生きている人のものではないのは明らかでした。わたしが運転する右腕を天ケ瀬ダムは自殺の名所としても知られているし、また宇治川ラインは信号がないためにスピードを出して飛ばす人も多いことから事故の名所としても知られています。何か起こるかもしれないなと思いながら通行していたのですが、心の中でふと昨日の仕事先でのミスが気がかりに思ってしまったこともあって、それも考えながらこの日は会社へとむけて車のハンドルを握っていました。そんな心の弱さに付け込まれたのかもしれませんが、今でもあのことを主出すと死ぬかもしれなかったという思いがよみがえってきて、出来る限り体験したことを思い出さないようにはしていますが、やはり怖いという気持ちが勝ってそれから二度と使わなくなりました。そこで銀河さんと北斗さんにお願いです。あの川から伸びてきた白い腕の正体は何だったのか、またあの道を使ったことでわたしに禍を齎す可能性があるのか、佐賀から遠い場所になるのですが、改めて心霊検証のほど宜しくお願いします。』


侑斗が読み上げた内容に、勝本、星弥、原田が考え始めると、小田切はある可能性を示唆した。


「俺の経験上で言わせたら、恐らく自殺・事故でお亡くなりになられた御霊達による複合体の可能性が極めて高い。」


小田切の話に侑斗は「霊の複合体?こう言っちゃあれですけど、プリンタじゃないんですよ。」と話すと、小田切は「複合体ともいうし、集合体ともいう。つまり複数の腕というのは、何人もの、いや何百人にも及ぶかもしれない。それだけ数多くの御霊達が一斉に集まってひとつの複合体として集まりだした結果、いくつもの腕が川から伸びてきたように見えるという錯覚の一つだ。恐らく腕を掴んできたのは何十人どころのレベルじゃないだろう、何百人、いや何千人に近い御霊が一丸となって女性に襲い掛かった可能性のほうが十分ありうる。自分の仲間を増やしたいがためにね。」と話すと、侑斗は「それじゃ、もう一度通れば今度こそ死んでしまう危険性が高いってことだよね?」と小田切に聞くと、勝本は「その危険性は極めて高い。この世に怨みを持って、生者に対して禍を齎そうとしているのだから、いかんせん質が悪い。投稿をしてくれた女性には早急に御祓いが必要になってくる。」と切り出したときに原田が「実は僕、難波駅の近くで車を駐車させているんです。行くんだったら僕の車に全員乗れますからその女性が勤務する平等院の土産屋のところへ行くというのはどうですか?」と提案すると、星弥は「えっ?車で来ているんだ?今日。因みに車は何に乗っているのかな?」と訊ねると、原田は「トヨタのランドクルーザーです。5人は乗れます。」と答えると、星弥は「それは有難い。でも今からだと15時を回った頃ぐらいに出発だけど、難波から宇治って結構な距離があるんじゃないのか?」と聞き始めると原田は「いえ。1時間以内で天ケ瀬ダムの近くに辿り着くことが出来ます。そんなに遠くないですよ。高速さえ使えばになりますけどね。」と返事をすると、星弥は小田切と勝本の表情を見ながら「どうする?」と聞き出すと、小田切は「仕方がないだろ。ついていけるところまでついて行ってあげる。」と答えると、勝本も「わかった。すぐにでも出発の準備をしよう。」と話すとすぐ席から立ち上がると、小田切は侑斗に「その投稿をしてくれた寧々さんに今から店に向かうと説明してくれ。除霊が必要の可能性があると返信を送ってくれ。」と指示を出すと侑斗は「わかりました。すぐ寧々さんに返事を送ります。」と答え、返事を送るのだった。


15時をちょうど回った頃ぐらいに、一同は原田が停車させてあるというコインパーキングにやってくると、助手席に侑斗、後部座席に小田切、勝本、星弥の3人が乗り込むような形で、投稿してくれた女性が勤務する会社の近くへ向かうことにした。


ちょうど京都へ向かう高速道路を走行中の事だった。


星弥が侑斗に「女性からの返事はどうだった?都合はついたか?」と切り出すと侑斗は「ああ。女性も3連休は休みなしで仕事しているみたいだった。たまたま投稿した時間が休憩中で、”慰霊の旅路”のWEBサイトや各SNSで千日デパート火災跡を伝えたところ、その投稿してくださった女性も近くまで来ているんだということに気付き始めて、慰霊の旅路に投稿してくれたみたい。お洒落な和雑貨などを販売しているお店のようだよ。」と話すと、勝本は「宇治と聞いたら抹茶のイメージが強かったんだけどな。でも平等院の近くとも考えたら観光客も多そうだし、和雑貨ばかりを扱うお店があっても不思議ではない。着物を着ていたら似合う何かが欲しくなるといったところだろうかな。」と語ると、星弥は「そうでもないだろ。単純にオーナーの好みが反映されているだけに過ぎないのじゃないのか。」と話すと、侑斗は「それとこれとは話が別。一先ず女性が取り憑かれていないかどうかをしっかりと見極めたうえで御祓いが必要だと感じたらすぐその場で御祓いを行う、そして検証のためにも天ケ瀬ダムから先の事故が多発するとされる宇治川ラインを車を運転しながら霊視検証を行うことにしよう。」と切り出すと、星弥は「そうだな。まずは今の女性に襲われたことによる変化が起きていないかどうかを確認しなければいけない。」と話すのだった。


侑斗が”慰霊の旅路”のWEBサイトや公式SNSで投稿した内容にどんな反響があったのかを確認していたところ、星弥に「Instagramのチャットに新規の書き込みがあるな。見てみることにする。」とその場にいる全員に聞こえるように大きな声で切り出すと、侑斗は投稿された内容を読み始めることにした。


「えっ!?うそ!?大阪まで来ているだなんて驚いた!!通り道になるかどうかは分かりませんが、僕が実際に体験したことを霊能者としてどう判断されるのかジャッジを下して頂きたいところがあります。それは僕サラダパンの鬼が地元の大津市内にある琵琶湖大橋の歩行者用トンネルがあるのですが、運動のためにも競歩のような感覚で歩き進んでいくと、髪は背中までに伸びた、黒い服装をした女性が僕のほうを見てじっと睨んできたんです。最初は睨まれるようなことなどまったくしていないのにどうしてなんだろうと不思議に思いながらも、その女性の側を通り過ぎた際にふと振り返ると、その女性は消えていなくなっていました。よくホラー映画であるような目の前に現れて”近寄らないで”だなんて脅しの言葉もあるのかなと内心はビクビクしていたのですが、そういったこともなく、消えてしまった。そんな印象です。あれから僕は霊障のような現象に悩まされることなどはないのですが、あれ以来僕があの時に見た女性の正体が気になって気になってしょうがありません。大阪から遠くなってしまいますがどうか立ち寄って、僕が大好きなサラダパンも堪能していただいて、帰ってほしいなあと思っています。ご検討のほど宜しくお願いします。」


侑斗が読み上げると、原田は「琵琶湖大橋なら宇治川ラインをまっすぐに行けば嫌でも辿り着く。時間としては1時間ちょっとすぎるぐらいかな。16時には女性が勤務するお土産屋に到着するんだから、女性が勤務中ならそう長居することも出来ないわけでもあるから、16時30分ぐらいには出発して17時30分過ぎには琵琶湖大橋で検証が出来るぐらいかな。まだ時間帯的にも日が暮れる時間帯でもないし、霊視検証もしやすいんじゃないのかな?琵琶湖大橋に向かいながら宇治川ラインの心霊検証を行うことで、目的地もないままふらふらと宇治川ラインを走るよりかは良いかと思うんだけどな。」と話すと、星弥は「まあそれもありか。そこは土地勘のある原田君にお任せするよ。」と答えるにとどまった。


そして走り始めて16時をまわろうとしたところで、女性が勤務する和雑貨ばかりを扱う雑貨屋を発見したところで近くのコインパーキングに車を停車させ、女性の働く店へと歩いて向かい始めた。


女性は店内でディスプレイの展示を変えたりなどしていたところを、侑斗は「あなたが”慰霊の旅路”に投稿をして下さった寧々さんですね。僕は北斗です。」と挨拶を始めると、後ろにいた星弥が「銀河です。この度は怖い体験に遭われたと伺い、取り憑かれていないかどうかも含め検証にやってきました。」と説明をすると、女性は「わざわざこんな遠いところまで来てくれてありがとうございます。ハンドルネーム寧々です。お手伝いの霊能者さん、確かええっと。」と話すと小田切は「ハンドルネームはバックドラフトです。」と答えると、隣にいた勝本は「ハンドルネームはジオラマの鬼です。」と答えると続けて原田は「事故物件のプロです!」と意気揚々に答え始めると、星弥が呆れた口調で突っ込むのだった。


「お前ら!今の仕事内容をハンドルネームにしただけじゃないか!!」


寧々が「ここに居たら他のお客さんの邪魔になると思うので、もう事情は店長に伝えています。スタッフルームの中に入って頂いて検証してもらえませんか。案内しますのでついて来てください。」と話すと、一同は寧々の後をついていくことにした。


案内されたスタッフたちの休憩場に到着すると、早速一同はテーブルに座るようにと案内され、寧々はその場にあったインスタントのコーヒーを淹れるための準備を整えると、一同にコーヒーとコーヒーフレッシュと砂糖を配り始めた。


星弥は「わざわざ、こんなことをしなくてもよかったんですよ。でもせっかく淹れて下さったのですから、有難く頂きます。」と答えて飲み始めると、ただ一人侑斗が一向に飲もうとしない。小田切が思わず「相変わらず猫舌なのか?」と侑斗に聞くと、侑斗は「だって熱いものを飲んでフーフーしなかったら舌火傷しちゃったもん。」と話すと、小田切は「いつまでもお子ちゃまだな。」と呆れかえると、それを聞いた侑斗は「だって熱いものはしっかりと熱を冷まさないと飲めないのは皆同じでしょ?」と聞き始めると、勝本は「そんな下らないことで議論をしてる場合じゃない。今は寧々さんとお話をして取り憑かれていないか見極めないといけない。」と話をしたところで、勝本から寧々に話をし始めた。


「今からあなたに悪い霊が憑いていないか霊視検証を行い、御祓いが必要だと感じた場合は今いる5人の霊能者でその場で御祓いを行います。」


勝本が説明を終えたところで、侑斗、星弥、原田、小田切、勝本の5人は気を集中させた後に精神統一を済ませてから霊視を行い始めるのだった。


小田切がいち早く霊視を切り終えたところで、寧々に声をかける。


「襲われてから、黒い影に襲われたことはありませんか?」


小田切の質問に寧々は「そうですね。夢で何度も、黒い影がわたしの近くに迫ってきたりする夢を何度も見るようになりました。黒い影は赤い瞳をしていて、人らしい形はしているのですがどことなく、人間ではないものといいますか、悪魔のようなものを見ているような、そんな感じの見た目でした。」と答えると、侑斗は「やはりそうでしたか。」と答えると、侑斗は自分なりの見解を説明し始めた。


「寧々さん。今のあなたには悪霊による呪いが憑いて来ている。宇治川ラインで寧々さんを襲った正体は、かつてあの地で事故や自殺などでこの世を去ってしまった方達による御霊の集合体で、この世の中に対する邪念で満ち溢れている、生者に対して禍を齎す悪霊ともいうし、邪念を持っていることから邪霊ともいう地縛霊のジャンルのうちの一つだと推測されます。非常に質が悪く、御霊達はあなたがあの地で死ぬ仲間になることを狙い最後まで諦めずに、御霊達が作り出した呪いが今のあなたに憑き纏っているのだと思われます。緊急の御祓いが必要だと思います。黒い影というのは、邪悪の象徴そのものです。それはたった一人のものではなく、複数の御霊達が集まって作り出されたものによる、それぞれの邪な気持ちが黒い影として可視化されただけに過ぎないものだと推測されます。」


侑斗が説明をすると、星弥は「寧々さん我々が座っていた椅子にゆっくりと深呼吸をしながら腰を掛けてください。呼吸のリズムが整ったところで御祓いを行います。」と寧々に説明をすると、寧々は「わかりました。」と返事をすると深く深呼吸を行いながら座り始めると、目を瞑りリラックス状態になったところで、一同は御祓いを行うための準備を早急にとりかかると、星弥は「準備は良いか?」と合図を送ったところで、一同は口を揃えて「OK!」と返事をしたところで緊急の御祓いが行われた。


一同が読み上げる除霊のための御経に寧々は途中上を見上げたり、鋭い目つきで睨み付けたりとそれはまるで取り憑く呪いが祓おうとしていることに抵抗を示しているかのようにも伺えたが、そんな様子を侑斗がしっかりと寧々の顔を抑えたところで、御経を粘り強く読み続けたところで、寧々はぐったりと顔を下に向いたところで、星弥は寧々に「大丈夫ですか?」とそっと声をかけたところで寧々ははっと我に返り「御祓いはもう終わられたのですか?」と聞くと、小田切は「終わりました。安心してください。」と笑顔で答えると、寧々は「ありがとうございます。何だか御祓いを受けたことで陰鬱な気持ちが抜け出せらられずなかなか笑う事すら出来なかったのですが受けたことで自然と笑顔が戻ってきたような気がします。」と答えると、侑斗は「それはよかったです。これからも素敵な笑顔を忘れないで、困ったことがあっても、それは心の裏に隠さないで、ストレス帳を綴ったりなどのストレス発散方法を模索してみたりされたほうが良いと思います。」とアドバイスをすると寧々は笑いながら「ありがとうございます。」と明るく返事をすると、寧々は店の外にまで出て、一同が後にするのを最後まで見送ってくれた。


寧々の勤務先を後にした一同は、宇治川ラインから天ケ瀬ダム、そして瀬田川の上流ラインを通って大津市内を目指すことにした。その道中で車を運転する原田にはできない霊視を、助手席に座る侑斗と、後部座席に座る勝本、小田切、星弥の4人でじっくりと行い始めることにした。


小田切が車の窓から眺める宇治川を見て「やはりここは天ケ瀬ダムで投身自殺を図った方のみならず、この曲がりくねった道で事故を起こしお亡くなりになられた方たちなどの魂が多く彷徨っているのだろう、俺達の動きを注意深く見ているのが何人もいや何百人はいるな。しかしそれだけではない。近くに火葬場があるのだろうか。地縛霊と、これから昇天していこうと山へ登って行こうとする成仏済みの浮遊霊を今ちらっと見た。ここは地縛霊と浮遊霊が交錯する場所でもあるのだろう。」と話すと、星弥がGoogleマップのアプリを見ながら「あるな。火葬場。でもここは自殺や事故でお亡くなりになられた御霊達のこの世の恨みが凄まじい。生者だと分かれば自分たちと同じあの世の暗闇の世界へと引きずり込もうとしているのだからね。やはりさっきの寧々さんが言っていたように、心の中で悩みや迷いを抱えた人がここを通るのは避けたほうが良いということに限るだろう。御霊達に心の弱点を突かれ、最終的にはこの地で死を選ぶように誘発されかねない。」と語り始めた。


侑斗は3人の話をじっくりと頷きながら聞いて居ると、右手のほうからうっすら見えてきた天ケ瀬ダムを目の当たりにして、「俺はここで事故死した方や投身自殺を図った人たちがどんな事情で亡くなったのか、どんな事情で追い詰められたのか、それぞれの方が抱える心の闇までは解決できそうにないが、さっきから色んな御霊達が僕達のほうを恨めしく見ているのを見て、地蔵か何かを設置することなど出来ないのだろうか。」と話し始めると、小田切は「地蔵は調べたらあるみたいだよ。写真で見る限りでは昭和57年8月吉日に建立とあるから比較的新しいほうだし、地蔵菩薩として発揮しなければいけない力は微弱のような気もするけどね。ただ博光とあるように、かつてこの地で命を落とされた方のお名前から来ているのかもしれない。無事故祈願と同時にその方の供養をすることが目的なのかもしれない。噂の首なしライダーが現れるという話も、制限速度を守らなかったことによる事故を出さないための一つとして警鐘を鳴らすべく広まった話なのかもしれない。」と答えるのだった。左側の窓から見える宇治川では数えきれないほどの無数の白い人の集まりは、制限速度の範囲内で走る一同が乗る車を襲いたいが近づけないとばかりに地団駄しているようにも見えた。そんな様子を原田が「出発するまでに結界を張っておいて正解だった。俺が予め結界の御経を唱えておいた。」と話し始めると、今まで聞いて居なかった事実に侑斗、星弥、小田切、勝本の4人は口を揃えて「えっ!!」と驚きを隠せないでいた。


「襲ってこなかったのはそのためだったか。」


一同がそのことに気付くと、車はあっという間に琵琶湖が見えるところまで近づいて来ていたのだった。そして近くにある立ち寄れそうなコンビニをカーナビの位置情報で見つけたところで車を停車させると、一同は念のためにそれぞれ自身の御祓いを済ませてから、琵琶湖大橋へと向かい始めるのだった。

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