【完結】慰霊の旅路~対峙編~

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旧海軍司令部壕(沖縄・豊見城市)

公開日時: 2022年1月10日(月) 20:07
文字数:8,542

支倉のおごりで海ブドウを堪能した侑斗は、支倉が事務所として借りているという飲食店から近くの賃貸マンションへと案内された。


「支倉さん、まさかと思いますが今流行りの事故物件じゃないですよね。玄関に入って早速盛り塩がされているんですけど、これって何かあるんですか?扉の上には御札のようなものがありますし、何かあるんだったら前もって言って下さい。」


玄関で靴を脱いだ侑斗が気になって支倉に話すと「いや、特に何もないけど。ただ、あっちこっちで除霊とかしているから悪い気を持ち込まないという理由で設置しているんだ。」と言って答えると「沖縄は本州とは違って全体的に無念の死を遂げた方が非常に多く、その上地縛霊じゃないから、生きる術の一つと考えて憑いて来てしまうことが多いんだ。俺達が八甲田山で見たあの歩兵隊の兵士の御霊を思い出してほしい。遭難事件が発生してから今年で123年は経つが、未だに亡くなられた方々が死の彷徨を続けているのと同様に、時代がいくら明治、大正、昭和、平成、令和と時代や年号が変わったとしても亡くなられるまでに味わった苦しみやこの世への未練というのは決して祓えることはできない。今を生きる俺達に出来ることは、亡くなられた方々に対して永代的な供養をしてあげることなんだ。」と話すと、侑斗は納得したのか「そういうことだったんですね。」と話すと支倉は侑斗をリビングへと案内すると侑斗の目の前にソファでゆっくりと寛ぐ男性の姿が見えたので、侑斗が支倉に「あの人は誰なんですか?正直にカミングアウトしても僕は素直に受け入れますが、あの人は支倉さんの恋人ですか?」と訊ねると、それを聞いた支倉と男性が侑斗の質問に大爆笑すると、男性のほうから侑斗に声を掛けられた。


「因みに俺、果歩ちゃんって事務員の彼女がいるから違うんだけど。俺も侑斗君と同じボランティアの霊能者だよ。」と語ると、自己紹介を始めた。


「航空自衛隊の那覇基地に在留する白鳥賢汰だ。因みに俺と支倉と星弥君は同い年だけど、ピカピカの新社会人の侑斗君にはこれをプレゼントしよう。」


侑斗が白鳥の挨拶を聞いて「あ、どうも。」と話すと持ってきたプレゼントを侑斗に渡し始めた。侑斗が思わず「これって何なんですか?」と訊ねると、白鳥は「せっかく沖縄に来たんだから、侑斗君のためにと思ってさ、沖縄でも名店として知られている店でサーターアンダギーを買ってきたから食べなよ。」と答えると、侑斗は「わざわざ買ってくれてありがとうございます。僕の兄と同い年ってことは27歳ってことですね。因みに霊能者になられたのは何かきっかけがあったんですか?」と聞き出すと白鳥は「元々沖縄に来るまでは春日基地(福岡県)にいて地元も福岡なんだけど、もともと支倉も俺も10代の時から霊感があってそれがお互い社会人になって衰えるかなって言うのがあったんだけど、決して衰えることは無かったから、それに”ユタ(霊能者)の真剣募集”ってポスターをね見たときに、あこれはきっと後継者がいないから真剣なんだろうなって大人になって霊能者として活動するようになった。そのときに支倉と出会ったんだ。」と話し、侑斗は「そうだったんですね。」と言って返事をしていると後ろから支倉が二人に「ホットワインを作った。あったまるよ。」と語って手渡すと、侑斗は「ありがとうございます。ってか熱っ!」と言いながらグラスを受け取ると、白鳥は「ありがとう。」と語りフーフーと熱を冷ますと飲み始めた。


支倉が後ろでホットワインを飲み始めると、猫舌の侑斗は必死になってフーフーしている姿に白鳥は「そんなに熱いのが苦手!?」と聞くと、侑斗は「はい。猫舌なので苦手なんです。」と答えると、侑斗は「ちょうどいい温かさになった、頂きます。」と語り飲み始めた。侑斗がゆっくりとホットワインを飲み始めると、白鳥から「支倉から話を聞いたと思うけど、侑斗君に俺達から依頼したいことがあるんだ。」と話すと白鳥がタブレットを持ってきて「心霊写真の鑑定なんだけど、この写真を見てほしい。」と言われた侑斗はタブレットで表示された画像を見ると白鳥に「これは、つい最近撮影されたものなんですか?」と訊ねると白鳥は「それは旧海軍司令壕で撮影されたものなんだけど、カメラのフラッシュの位置の右下に赤い発光体が写っているのが分かるだろ。それは位置的に考えたらハレーションともフレアとも可能性は捨てきれないが、その赤い発光体が段々と写し出された場所が近付くにつれ大きくなっていく。これは機械による現象とは考えにくい。オーブかもしれない。」と説明すると続けてある写真を見せ始めた。


「これは心霊スポットじゃないけど、前田高地で撮影されたもの。曇天ではあるが雨は降っておらず、写真の右上と左下に写真撮影時の際に写ってしまったカメラのホコリによるものとは思えないほどの白くて大きな発光体が写っている。嘉数の戦いの舞台としても知られている場所だから、未だに戦死された方が彷徨っているのかもしれないね。まあ史跡である以上、幽霊が出たとはあまり言ってほしくないけどね。」


侑斗が二つの写真をじっと見つめた結果を白鳥に「確かに。戦死された方の御霊が未だに成仏できていない可能性がありますが、それを僕が鑑定しなくともユタとしてのキャリアのあるお二方なら何も依頼をしなくても良いんじゃないんですか?」と質問すると、支倉が「侑斗君には是非とも霊能者として足を運んでほしいんだ。」とお願いすると、侑斗は改めて白鳥のタブレットの写真を再度確認を行った末に「わかりました。」と言って返事をした後、シャワーを浴びて23時過ぎに就寝した。


2025年10月26日 日曜日の朝を迎えた。


朝の7時に起床した侑斗は改めて持っていたタブレットで海軍壕公園の心霊現象に纏わる話を調べ始めた。


「海軍壕公園の観光案内でも、ちらっと”怖い話ですが”って前触れから察してももうすでに霊が出ますよってことを宣伝しているようにも見えるんだけどな。自決した際の後が壁に残っている、外の滑り台では子供の霊が出るという噂がある。そのほかにも壕内を歩いているときに暗がりの場所から足だけの男が現れたというエピソードがあることからも、残留思念が残りやすいのかもしれない。」


侑斗がじっとタブレットを見ていると、隣で寝ていた支倉が侑斗に「おはよう。何調べているんだよ。」と聞き出すと、侑斗は「おはようございます。早速今日伺う海軍壕公園の心霊現象について調べていたんです。」と説明すると、続けて起床した白鳥が「海軍壕公園の怖い話を知って怖いと思ったのか?」と訊ねられ、侑斗は「いや。霊能者である以上怖いとは思っていないのですが、自決した後が残っているとも知ったら言葉に出来ないなと感じたんです。」と答えると、支倉は「自決した生々しい痕跡が残っているから怖いね、なんて言えば沖縄どれだけそんなスポットが存在していると思っているんだよ。この陸と空の那覇基地周辺で考えたら、そんな心霊スポットしか存在してないよ。因みにもっと怖い話をしようか。どうやって自決したか、手榴弾を使って自爆したんだよ。アメリカ軍の攻撃で全滅するまでは、この壕に立てこもってアメリカ軍と戦ったんだ。だから未だに兵隊と思われる霊や、壕内に入って気分を悪くされる方も後を絶たない。あとは、体をスーッと冷たい風がすり抜けたという体験をされた方もいる、それぐらい兵士の霊だろうと思われる話が多い。」と説明すると、侑斗は「前に映画の父親たちの星条旗(2006年アメリカ制作/クリント・イーストウッド監督)で見た事があるんですけど、敗戦の色が色濃くなって洞窟内に立てこもった日本兵が手榴弾で自爆して死んでいたというシーンがあって、まさにあのシーンが行われた痕跡が残っているってことですよね。」と訊ねると白鳥は「そう。作戦室に近い部屋で海軍の幹部たちによる手榴弾で自決をしたとされる痕跡が今も残っているんだ。実際に見てみたらわかると思うよ。実は俺達写真では見た事があるけど、実際に海軍壕公園の壕内に入るのは初めてなんだ。」と語ると、支倉は侑斗を見て「硫黄島の戦場のほうが凄いぞ。今でも慰霊目的で訪れる地元の方以外の立入は制限されているのは、処理しきれていない不発弾がまだ残っているからなんだ。それこそ自衛隊ですら入っていけないエリアがある。整備が進んでいない場所ほどいつ爆発してもおかしくないところばかりだからね。」と話すと、侑斗は「え!?そんなに処理しきれていないんですか!?」と語った後に言葉を失ってしまった。


三人はさっと立ち上がり、身支度を済ませた後に朝御飯を食べ終えると、8時20分には海軍壕公園へと向けて支倉の車で出発した。


助手席に座る侑斗が「ここから海軍壕公園ってどれほどの距離ですか?」と訊ねると支倉が「15分で到着する。営業時間が8時30分からだから、行ったらまさに営業開始したばかりで人も混み合っていないだろうしね。ゆっくりと拝観することが出来ると思うよ。」と話すと、三人の乗る車はあっという間に海軍壕公園の敷地内にある駐車場に到着すると徒歩で旧海軍司令部壕へと向けて歩き始めた。


歩きながら侑斗は支倉と白鳥に「ところで今までいかれなかった理由って何かあるんですか?」と聞くと、白鳥は「行こうと思ったら行けたんだけどね。ただこういうスポットは本当に沖縄だけに限れば一日で回り切れんほどの数があるからね。供養をしなければいけない所は沢山ある。」と話すと続けて支倉が「海軍の施設だけど一応気にはなっていたけど、でもなかなか忙しくて足を運ぶことが出来なかった。」と語り説明すると、三人は旧海軍司令部壕に入るまでに海軍戦没者慰霊之塔へ立ち寄り御参りを済ませた後で旧海軍司令部壕の施設内へと入ると参観料の600円を支払い、旧海軍司令部壕の中を散策し始めた。


歩き進んでいくにつれ侑斗が「壕の中だからひんやりしているのは分かるんですけどあんまりにもひんやりしすぎているような気がしませんか。」と話すと、白鳥は「仕方がない。ここには司令官室や作戦室が当時のまま残されているだけでなく約4000名の兵士が手榴弾で自決した痕跡なども壁に残っているんだからね。出るに決まっているよ。」と語りながら長い階段を降りると、順路と書かれた看板のルート通りに進むことにした。侑斗が地図を見ながら「まずは作戦室ですね。そこから幕僚室、暗号室、医療室、発電室と下士官兵員室、司令官室とあって最後に信号室ですね。」と話すと支倉が「写真で見る限りは、作戦室を抜けた先の幕僚室が手榴弾で自決した痕跡が残っているという部屋になる。この辺りが霊視をする確認がある。」と話すと、白鳥が「そうだな。幕僚室付近が残留思念が残っていてもおかしくない。」と答えて作戦室の中へと入っていくと、作戦室に入ったと同時に侑斗が「あの先の通路から強い気配を感じます。」と話すと、支倉が「あの先が幕僚室だ。気を付けて先に進んだほうが良い。」と侑斗に語ると、侑斗は「わかりました。先に進みましょう。」と話して先へ進んでゆく。そして幕僚室と書かれた部屋の壁には支倉が話した通りに爆破した手榴弾の破片が散ったことによる損傷が見受けられた部屋に辿り着いた。


侑斗が「案内板読みます。”自決された時の手榴弾の弾痕”とありますね。”司令官室と作戦室に近いこの部屋は幕僚が手榴弾で自決した時の破片のあとがくっきりと残っています。当時のままの部屋です。”ってありますね。」と話すと支倉が「さっきの作戦室もだったけど”作戦を練る重要な部屋でコンクリート漆喰で固めた当時のままの部屋です”って、どんだけ”当時のままの部屋です”を主張したいんだよ。そこが一番引っかかったな。」と話すと、白鳥が「司令官室も楽しみだな。きっとお決まりのセリフが出てくるんだろうな。”当時のままの部屋です”ってね。」と語り失笑すると侑斗は「”当時のまま残っていますよ”ということを主張したいだけなんだと思いますよ。僕が見た田原坂の弾痕の家は写真をもとに復元されたものですけども、これは当時のままの状態で保存していますよということを分かりやすく説明してあるだけだと思いますからね。」と笑いながら話すと、支倉が「さっきから俺達が下りてきた階段のところからじっと眼鏡をかけた男に注意深く見られているような気がしたが、見た限りでは禍は齎さないと思うが、俺達が笑い合っている姿を見てふざけやがってと思われたのかもしれない。ここに来たことに対して敬礼をしてから一言謝ろう。海軍方式の敬礼のやり方は知らんけど、気持ちは伝わるはずだ。」と話すと、白鳥も「そうだね。顔の表情から察して怒っていることに間違いない。今俺達が気付いたから若干表情が和らいだが、真剣にここからは供養の気持ちを忘れないでおこう。」と語った後侑斗の顔を見て侑斗も「そうですね。まず敬礼して謝罪しましょう。」と語ると、三人は現れた方向へと並んで立ち、敬礼をした後に”はしゃぎ過ぎてすみませんでした”と語ると、現れた男は安堵したのかスッと消えた。


侑斗が「他にも白い服や黒い服を着た方も見受けられましたが、あれは何だったんでしょうね。」と話すと支倉が「自決した際にあの幕僚室で折り重なるようにしてお亡くなりになっていたってことだろう。その当時のアメリカ軍に追い詰められた末に仕方なく自決を余儀なくされたことを考えると、あの部屋は笑ったりするような場所ではないってことだね。」と話すと、白鳥が「ちょっとふざけ過ぎたね。観光ではなく仕事だと思って真面目に見学しよう。」と切り出すと、三人は幕僚室を後にした。


ゆっくりと歩き進きながら各部屋を見学しているうちに、侑斗が「本当に狭いですね。こんな狭い壕の中に4000人以上もいたのかと考えただけでもあまり居心地のいい場所ではなかったように思います。」と話すと、白鳥が「多分通路だってこんな狭さだから誰かが譲り合わなければ先にも進むことが出来ないぐらいの狭さだ。だから所々に待避所があるんだろうね。こんな場所じゃ立って寝るぐらいしか出来なかっただろうな。」と語ると支倉が下士官兵員室の前で立ち止まると「白鳥、おめでとう。言う通りだよ。このイラスト図を見ていると、とてもじゃないけど安息の時間は過ごせそうにないな。」と話すと、侑斗が近寄ってイラスト図に書かれてある説明文を読むと「この狭さじゃ横になって寝ることも、この人数の多さじゃ出来なかったでしょう。」と話した後に、「当時の戦況の苦しさを垣間見ることが出来ますね。しかしやっぱり追い込まれたと分かれば潔く負けを認めるべきでしたね。どうしてそれが出来なかったんでしょうね。」と自分なりの感想を述べると、侑斗の意見を聞いた支倉は「それが天皇陛下のためにという言い分で出来なかった。だからズルズルと引きずった末に関係のない国民を犠牲にする形で終戦を迎えた。大国の思惑にNOと言えずズルズルと戦争に巻き込まれた末の悲しい終焉となった。でも今も変わらないと言えば変わらない。」と語ると、侑斗は「そうですね。仰る通りですよ。」と頷いてその場を後にした。


三人は司令官室のところまで足を運ぶと、入り口近くに設置されてあるお地蔵様の前で立ち止まり深々と頭を下げてから両手を合わせ拝むと、すぐ近くに掲げられてあるプレートに目が留まったのだった。


”大田実少将(当時)外幕僚6名が最期を遂げた当時のままの部屋です”


プレートに書かれてある内容を改めて読んだ侑斗は「最期を遂げた?その割には手榴弾を使ったような痕跡が見受けられず、どんな最期を遂げたのか、もう少し説明が欲しいのにこの説明ではあまりにも不足してますね。」と話すと、白鳥が持っていたタブレットのアプリにインストールしているウィキペディアで検索し始めた。「ウィキペディアで見ると、千葉県出身の大田実氏は海軍中将で佐世保鎮守府にいたが沖縄方面根拠地隊司令官として任命されたことにより現地で指揮を執ることになったとある。1945年6月13日に海軍壕内で拳銃で自決したと書かれてあるから、そもそも拳銃を使ってとかもう少し具体的に踏み込んだ説明にしないとこのプレートは説明不足な上にお決まりの”当時のままの部屋です”って、もう少しわかりやすく当時の苦境に置かれたことについてより言及してほしかった。これじゃ何で死んだのかがさっぱりわからない。拳銃で自決した際の血痕が今も当時のまま残っていますと書けばゾッとされるからか。残っていないと思うけどな。結局不足した情報をウィキペディアで調べたらここに来た意味がない。」と話すと、同じく侑斗も内容が気になって持っていたタブレットのアプリでインストールしているウィキペディアで検索し始めると「笑ってはいけないんですけどちょっとあまりにも説明文の内容がお粗末すぎて、せめてもっとオンラインでも壕内の様子が閲覧できるようになったのはすごくいいことだと思うけども、あとワンポイントの説明がないと、歴史を知らない人にとってはさっぱりわからないことになってしまう。イラストで当時の状況を伝えるにしても、もっとマネキンを使うとかリアルな状況の説明が欲しいですよね。」と苦言を呈した。


そして、壕内の見学するべき部屋をすべて見終えた三人は地上へと戻り、壕内で発見された遺品などが展示されてある資料館へと足を運ぶと改めて感慨深い気持ちになりながら展示されてある品々を眺めることにした。


数々の遺品を眺めるにつれ、侑斗は「あの時に見た眼鏡の男性は僕達に何を伝えたかったんでしょうかね。怒るだけなら声を上げたりするなどのアクションを起こすはずなのにそれすら見受けられなかった。ただ注意深く見て、僕達が存在に気付いて挨拶と同時に謝罪をしたらスッと消えた。あれは何だったんでしょう。まだここにいるから家族の方に来てほしいという意思表示の一つだったんですかね。」と支倉と白鳥に訊ねると、支倉が「戦後に元海軍部隊隊員だった方が遺骨収集に訪れた際に800体以上の遺骨を収集し、その後1500体の遺骨を回収して、今の海軍慰霊之塔が建立されたのだから、そう考えると多くの方々がこの地で命を落としたことになる。俺達は眼鏡の男に注意深く見られたが、一説では低い声が聞こえてくるとも、そういう話があるからやはりあの壕は史跡であると同時にお墓でもあると思うんだ。きっと俺達が騒いだことでそっとしてほしいという思いから俺達に注意喚起したのは間違いない。でも、もう少し大田実少将が自決しましたと書かれたプレートのところは、結局俺達はウィキペディアで大田実と調べなければ何で死んだのかが辿り着けない。沖縄戦の内容は所々で詳しく説明されてあるところはあった、アメリカ軍がこうして攻めてきたというのも分かったんだけど、結局肝心なところでウィキペディアで調べて情報収集してたら、プレートの意味がないように思えちゃうんだよね。あれだったらもう無いほうが良い。まあ血痕?らしき床に痕跡があったのは間違いないから調べなくとも拳銃かなとは察することは出来たけどね。」と話すと侑斗は「音声のアナウンスも流れていましたけどね、あまり参考になるものではなかった、ってか最後まで話聞いて居ませんでしたけどね。子供の霊が出ると言われる滑り台を確認しに公園のほうへと行きますか?」と訊ねると支倉は「ここに来るまでに見たと思うけど、海軍壕公園内にある滑り台って一つだけじゃないんだよ。しかも子供の霊が出る滑り台の話は全国津々浦々、ここじゃなくてもよくある怪談話の一つだし、特定されていない以上は噂話の一つにしか過ぎないと思う。心霊じゃないけど前田高地にでも行きますか。侑斗君が見たハクソー・リッジは浦添城跡の前田高地での激戦を映画にしたものだよ。」と話すと、侑斗は思わず「前田高地って映画の舞台だったんですね!それだったら純粋に観光気分で楽しみたいです。心霊写真が撮れたからって心霊検証をするのも何だか失礼だと思うので慰霊碑があればまずは手を合わせて激戦地だった舞台をみたいですね。」と語ると、白鳥が「そうだね。そうしようか。」と三人が改めて同意したところで駐車場へと戻ると、それぞれが自身への御祓いを済ませた後に車に乗り込み三人は浦添城跡の前田高地へと向けて出発した。時間は11時30分を過ぎていた。


ハンドルを握る支倉が侑斗にこう告げた。


「ハクソー・リッジだけだと心霊じゃないけど、不思議なことにハクソー・リッジの付近にある浦添城跡は有名な心霊スポットだよ。心霊かもしれないといった写真はひょっとするとハクソー・リッジじゃなくて浦添城跡のほうかもしれない。その付近で撮ったと説明があったので、こればかりは地図ではなく実際に現地に行ってみないと分からない。それだけは前もって言っておく。」


支倉の思わぬ告白を聞いた侑斗は思わず「えええ!?」と驚くばかりだった。

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