【完結】慰霊の旅路~対峙編~

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伊世賀美隧道/旧伊勢神トンネル(愛知・豊田市)

公開日時: 2021年12月23日(木) 23:31
文字数:9,533

白山大橋を後にした一同は次に向かう旧伊勢神トンネルの下調べを始めていた。


侑斗が持っているタブレットを片手に、旧伊勢神トンネルに纏わる心霊体験談を調べながら、芦原に対してあることを語り始めた。


「旧伊勢神トンネルは1897年の明治30年に開通された当時としては画期的な技術が用いられたであろう材料として使われた花崗岩で造られているのが非常に印象的なトンネルで、自分も大学生だった時に実はこの旧伊勢神トンネルも調べたことがあったんだ。宇津ノ谷峠の明治のトンネル(明治9年開通)というのも、そして個人的に実際に足を運んだことがある熊本の旧佐敷トンネル(明治36年開通)と、現代とは違って機械のない時代、手彫りで汗水を流しながら掘削作業を繰り広げながら作業を行わなければいけなかったために、岐阜にある13号トンネル(明治33年開通)のような、場所があまりにも人里離れた山奥のために難工事を極めた末に、作業中に20名以上の方がお亡くなりになったともいう話があったように、この旧伊勢神トンネルも俺が長年研究している感じでは、人柱が埋められた否かは別として、”何か”は出てくるだろうなあというのが個人的な印象。ストリートビューで改めて見ても、不自然な靄がある以外は特に危険と感じるところも無かったので、まあ後はね心霊現象で伝わる内容の真偽を確かめるにはもってこいの場所だろうね。」


侑斗がそう話すと思わず芦原が「写真で霊視した”何か”の正体って何?」と聞き始めると、侑斗はうーんと考え悩み始めると「いや、写真で見る限りでは、あくまでも僕の個人的な考えなので参考に程度にしてもらいたいんですけど、非常に雰囲気のあってそれこそ夜に行けば”何か”の存在を強く感じるような場所だろうなあって思いながら慰霊の旅路に投稿された画像とレポートを見て、いつかは足を運んでみたいなあと言うのがありましたよ。2000年には国の有形文化財にも登録される、今後も大切に残していきたい明治時代の息吹を感じさせる貴重な資料ですから、怖いとかそういうことはもう別にしておきましょう。ざっと見た感じですよ、成仏した方の御霊が昇天するために高い山への山登りをするために彷徨っているような感じにも見受けられましたから、危険な霊が出るとは正直な感想としては思わないです。」と語ると、侑斗の話を聞いた放浪中ちっちがこう説明し始めた。


「以前にかの有名な某霊能力者がここで除霊を行ったらしいのだけど、その際に見たとされるのが、このトンネル工事の際に殉職されたであろう作業員の幽霊が現れたというもの。その作業員の霊に関しては某霊能力者の手によって手厚く供養されたというが、今もなお東海地方を代表すると言っても過言ではない。女性の幽霊や子供の幽霊、先程にも話が出たようにトンネル工事作業員の幽霊などがあるが、一番この旧伊勢神トンネルの名を有名にさせたのは地元新聞の報道で、”和服姿の女性が手を振って立っており車に乗せてあげるといつの間にか消えてしまっていた”という怪奇現象が多発したことに由来しているとされる。それがあくまでも憶測の範囲内ではあるが伊勢湾台風が発生した際に命を落とされた女性ではないかという話がある。その他、トンネル内に響く呻き声をトンネル内で何度か往復を繰り返しているうちに呪われてしまうといった噂もある。そこで当番組としては、地元新聞にも取り上げられた”和服姿の女性が現れるか否か”というのを議題に検証を行いたい。でもその前に、せっかく自衛隊の芦原さんがいるのだから、是非とも立ち寄って検証をしてほしいところがある。白山大橋から車で走らせて1時間30分ぐらいのところにある。」と説明をすると、芦原は「わたしが立ち寄ってほしいってところってどこなんですか?まさかと思いますが戦死者の墓地に行くとかそういうことではないですよね?」と聞き始めると、放浪中ちっちは「先輩達の墓地にお墓参りをするのはそんなに億劫な事?」と逆に訊ねられた芦原は放浪中ちっちに「いや、その苦手とかそういうことではないんですけどね、ただ霊能者の視点でですよ、戦没者の霊というのは死んでもなお闘おうとする、或いは生き抜くためにどんな手を使ってでもしがみつくというように、残留思念というのが極めて強いんです。それがあまりにもきついとちょっと事前に聞いていた心霊スポットの検証議題の内容とは、まあ同伴している以上出来る限りは同伴しますが場合によっては危険ではなかろうかと思ったんです。」と釈明すると、放浪中ちっちは「知多郡南知多町にある中之院軍人墓地は知っている?知る人ぞ知る心霊スポットのうちの一つで、昭和12年の上海上陸作戦で戦死された名古屋第三師団歩兵第六連隊の兵士の方々を生前の写真をもとにご遺族が戦没者の一時見舞金を使用して、供養するための銅像が浅野祥雲の手によって造られた。当初は名古屋市千種区月ヶ丘に安置されてあったものを平成7年の11月に現在の中之院に移転されたものなの。あるオカルト系の番組でカメラを銅像に向けたところ、反応しないはずなのに顔認証システムが反応したりするなど、顔の作りが非常に精巧に作られているためなのかカメラが人間の顔と認識しても不思議ではない面もあるが、不思議なのは顔認知する銅像としない銅像があり、それが機械による誤作動にしては説明のいかない話になってくるために、心霊スポットとしても知られる理由の一つとなっている。なかなかそう考えると不思議な話じゃないかしら。」と説明をすると、侑斗は思わず指摘をした。


「それって、銅像に魂が一部宿っているってことですよね?」


侑斗が放浪中ちっちに語ると「さあそればかりは、カメラの顔認知システムが反応する銅像としない銅像の原因までは誰しもが追究していないことだからね。ただ分かっている情報としては、銅像は大小100体以上あり、昭和12年の上海上陸作戦で名古屋第三師団歩兵第六連隊の兵士達が名古屋港を出発してからわずか六時間後に揚子江河口へ上陸する作戦だったが、この作戦に参加した兵士の殆どが全滅したらしい。それぐらいかな。でもこれはこれでやはり、亡くなられた方々に天国で安らかに眠ってほしいという気持ちを考えたら、真実は追求しないで、あくまでも”こういう不思議な現象が出るスポット”の一つとして取り上げたい。芦原さんも実際に見たらきっと感慨深い気持ちになられると思う。」と話すと、侑斗は芦原に「それぐらいの程度の物ならば、大丈夫でしょう。お亡くなりになられた場所とは関係がないですからね。それにお寺の敷地内にあるのですから、大切に供養されているはずでしょうし、禍を齎す危険性は無いと思います。」と話すと、芦原は「そうだね。それぐらいなら不思議な現象を確認するぐらいの気持ちで行きましょうか。」と答え、一同は旧伊瀬神トンネルに向かうまでに軍人墓地のある中之院へ立ち寄ることにした。


ディレクターが腕時計をしきりに確認しながら一同に「白山大橋を出発してから30分を経過したから、あと1時間後に到着する。大体18時には到着する予定だ。検証することはカメラの顔認証システムが反応する象としない象の真偽を確かめることだからあっという間に終わる。本題の旧伊瀬神トンネルへは18時30分に中之院を出発して20時頃から新伊勢神トンネルも含めて旧伊勢神トンネルの心霊検証を行う。」と話し始めると、心霊検証の予定が次第に遅くなっていくことを侑斗と芦原にとっては心配の種でしかならなかった。たまらず芦原のほうから、ぱうちゅが白山大橋で自殺者の霊に取り憑かれた経緯を説明し、せめてぱうちゅだけは外すべきだと提言するも、その意見をぱうちゅ自ら覆した。「先程はご心配をかけてすみませんでした。天理ダムの時からも2人には助けてもらっていてもらって本当にありがたい事ばかりです。でもこの心霊検証番組のレポーターを務める以上、お金を貰っているわけですから逃げ出すわけにはいきません。最後まで頑張ります。どんなに取りつかれてもわたしはわたしです!」と言い切ると、侑斗はそんなぱうちゅをみて声をかけた。


「怖いと思うのなら無理をしなくていい。よくここまで怖がらずにリポートをしてくれた。それだけでも見る人々にとって恐怖が伝わるシーンが撮影出来たと思う。」


侑斗が話すとぱうちゅは「侑斗さん、心配してくれてありがとうございます。でもこれば引き受けた以上、途中でリタイアなんてしたくないんです。どんな幽霊が来てもわたしは臆することなく立ち向かっていきます。もう大丈夫です。」と強い意気込みで語ると同時に、一同に対して笑顔を見せ始めた。


ぱうちゅの決意表明ともとれる発言を聞いた侑斗は「わかった。何かあれば必ず俺か芦原さんに絶対に相談してほしい。」と話すと、ぱうちゅは「わかっていますよ。」とさらにはにかむような笑顔を見せ、心配は不要だということをアピールする姿を見て芦原が侑斗に「ぱうちゅがあそこまで言ってくれているのだからわたしたちはぱうちゅの身を護ることを最優先に引き続き意識しましょう。」と指摘すると、侑斗は芦原に「そうですね。ちょっと自分の経験もあって、人の事言えど心配になり過ぎました。」と語ると、一同が乗る車は18時過ぎに中之院に到着すると、早速ぱうちゅが予めアシスタントディレクターから渡されたカメラを片手に入っていく。


侑斗と芦原はぱうちゅの背後をついていくような形で入っていく。


カメラを前にしてぱうちゅがリポートを始める。


「ここは別名”たぬき寺”といいまして、境内に入っていくと、あちらこちらに狸さんのチャーミングな像が見れてとっても可愛いですね!しかし今回番組の検証議題は狸さんの像の心霊現象について協議するじゃないんです。議題はこれから先にあるんですけど、昭和12年の上海上陸作戦でお亡くなりになられた名古屋第三師団歩兵第六連隊の兵士達を弔うために生前の写真をもとに像が造られたとされる軍人墓地です。銅像の作りが非常によくできているためにカメラが人間と感知してしまうといった不思議な現象が報告されているそうなので当番組でも実施しましょう!」


ぱうちゅが意気揚々に語ると、通りかかる狸の像を見て葉「可愛い!可愛い!」という姿を見て芦原は侑斗に「ここなら大丈夫よ。悪いのはいない。」と語ると、侑斗は「俺もこの地に足を踏み入れたと同時に霊視を行いましたが、お寺で大切に供養されているということもあって、きちんと管理をしてくれる場所に移動されたから、俺の目にはそれぞれの像が非常に安らかな表情をしている。顔認証で反応するのは恐らくだが、その像に魂が宿っている可能性のほうが高い。髪の毛が伸びる人形と同じ道理だな。」と話し始めると、芦原は「まあ髪の毛の伸びる人形は故人が愛着があったりして死んだ後も忘れられることが出来ずに人形そのものに宿ってしまうパターンだから、この兵士の像は亡くなって自分と瓜二つの像を自らの死後に改めて見た事によって、今後この像を見た人たちに対して”どうか忘れないで”という気持ちもあって、銅像と一体化したのかもしれない。いずれにしても、戦争が無かったらそれぞれの違う人生を歩んでいたはずだろう。色々と考えさせられる。」と語ると、ぱうちゅは軍人増を前にカメラで検証を行い始めると、芦原に大きな声で叫んだ。


「芦原さん!カメラを見てください!!顔認知するのとしない像があります!侑斗さんにも見てください!!」


ぱうちゅに呼ばれた二人はぱうちゅの元へと駆けつけてすぐさまぱうちゅの持つカメラを芦原が確認のために顔認証システムが果たして作動するのか確認すると、噂通りに顔認証をするのとしない象というのがあるのを改めて確認後、侑斗からぱうちゅに「どうして顔認証するのか、それは魂が帰るべき場所に帰っているという証拠そのものだ。カメラの顔認証はそこに人がいるとセンサーが認識して顔認証の機能が働く。つまり像を生きた人間だと捉えたという何よりの証拠だ。ここに眠る軍人の像は既に成仏しており、場所が変わったこの地で安らかに眠っているのだから、俺達は軍人像の皆さんの前に”こんな夜の遅い時間帯に来てお騒がせをしてしまいすみませんでした!”といって深々と頭を下げて謝ろう。それで検証は終了だ。お墓はこんな遅い時間帯に来ては”常識外だ!”と言われかねない。心から亡くなられた方々の追悼をお祈りしよう。」と話すと、芦原は「そうね。」と話すと、ぱうちゅはそれを聞いて安心したのだろうか「そうですね。普通に考えてもこんな時間帯にお墓参りするのはおかしいことですからね。」と語ると、三人は軍人像を前にして侑斗が大きな声で「ゆっくりとお休みのところをお騒がせをしてしまい申し訳ありませんでした!!」と大きな声で謝罪をして深々と頭を下げると続けて芦原、ぱうちゅが頭を下げて謝罪をしたところで、一同は中之院を18時30分過ぎに出発して本来の目的地である旧伊勢神トンネルへと向けて走らせた。


ハンドルを握るのは、ディレクターの名が運転を気にした放浪中ちっちがディレクターの代わりにハンドルを握って運転していた。


放浪中ちっちが赤信号で停止中だった時に、旧伊勢神トンネルで行う心霊検証について説明をし始めた。


「旧伊勢神トンネルは新伊勢神トンネルでも実は心霊の話題があって、ある情報サイトによると新伊勢神トンネルの開通が翌年の昭和35年に控えていた中で昭和34年に伊勢湾台風が発生して、台風の中でも作業に携わった12名の作業員が命を落とす結果となった。新伊勢神トンネルでは主に、その時に巻き込まれたであろう作業員の霊が出るとされている。そのほかにも、新伊勢神トンネルを通過中に着物を着た女性が手を挙げて立っているのを見て乗せてあげるといつの間にか消えてしまっていたという話がある。そのほかにもある母親と子供の霊がこの伊勢湾台風で亡くなっておりお互いがお互いを探し求めてこのトンネルを彷徨っているというのがある。子供の霊の目撃例が多いとされているのが、実は新道ではなく旧伊勢神トンネルで見かけることが多いとされている。トンネルを挟んで再会を果たせられなかった親子の霊が他の霊も誘きよせてしまっているのではないかというのがある。」


侑斗がその話を聞くとある疑問点が芽生えた。


「ちっちさん、先程はトンネル工事の殉職者は旧道での心霊現象だって仰っていたのに、新道だったってどういうことですか?間違った説明をしましたよね?きちんとリサーチをして下さいよ。新道なのか旧道なのか情報が曖昧のまま来られたのならば伝わっている情報がデマの可能性だってありますよ。」


侑斗がすかさず指摘をすると放浪中ちっちはあっさり自らの非を認めた。「ごめんなさい。心霊スポットに掲載されてある情報を頼りに計画を練ったつもりだったが、情報をしっかり把握していなかったのは素直に認める。デマの可能性も含め、東海地方最恐と言われているのは確実だから、そこはこの目で確かめて検証したい。」と侑斗に対して説明を行うと、侑斗は深く考えた末に「わかりました。新伊勢神トンネルは現在も使われている道路ですので、歩いての検証は不可能でしょう。天理トンネルと同様にゆっくりと速度を落として検証を行っていただきたいです。霊の有無についてはその場で判断を行います。」と答えて、侑斗は芦原を見ると芦原は侑斗を見てうんうんと首を振って頷くと、侑斗は放浪中ちっちに「新伊勢神トンネルを通り過ぎるようなルートで旧伊勢神トンネルへと向かいましょう。」と切り出し、先ずは新伊勢神トンネルでの心霊検証を行うことで一同の意見は合致した。


そして、時刻は20時を迎えたところで、放浪中ちっちから「この先にあるトンネルが伊瀬神トンネルよ。」と説明を受けると、侑斗は「わかりました。彷徨う御霊がいるかどうかも含め検証をさせて頂きます。」と語り始めると深く目を瞑り気を集中させた状態で霊視を行い始めた。時同じく芦原もトンネルに入るまでに侑斗に続けて霊視検証を開始した。トンネル内に入り、検証を行いやすくするために速度を落とした車内で侑斗と芦原による霊視検証を、ぱうちゅは興味深くじっと見つめていた。


トンネルを出て左の脇道から入ることが出来る旧道に車が入ると、芦原のほうから一同に対して伊勢原トンネルでの霊視検証結果を語り始めた。


「何名か、伊勢湾台風でお亡くなりになられたであろう男性の作業員の御霊は確認をすることが出来ましたが、時代の流れと共に色々な車が行き来しているのを見て、死んだ当初は死んでしまったことすら理解を示すのは容易ではなかったようですが、時間の経過と共に次第に受け入れるようになって今はこのトンネル内を走る車に対してじっと見つめています。”自分たちの頑張りの御蔭もあってトンネルが出来た”とね。途中で立ち止まって除霊を行う必要性は無いでしょう。死ぬまでに思い入れのある強い場所でもあったわけですから、それに彷徨っていた複数名の御霊の成仏はしていますので、通過する車のドライバーに禍を齎す危険性は皆無に等しいと思います。」


芦原が語ると、侑斗が「問題はこの先の旧伊勢神トンネルでの心霊検証のほうです。伊勢湾台風で亡くなった親子が出てくる可能性は無いと思われますが、その他の着物を着た女性や、トンネル事故で亡くなられた作業員の男性が現れるか否かを検証する必要性があります。ただ投稿された写真などで見ると、問題はトンネル内ではなく外のような気がします。写真を見ただけでは何の説得力にも繋がりませんが、僕はトンネル内よりもトンネルの出入り口のほうが強い気配を感じました。」と淡々とした口調で語り始めると、それを聞いたぱうちゅが「トンネルじゃなくて出入り口ですか?普通に考えたらトンネルじゃないんですか!?」と疑い始めると、侑斗は答えた。


「ここはトンネルの出入り口のほうが強い気配を感じる。恐らく、事故か何か。伊勢湾台風による犠牲者の可能性もあり得るが、少なくとも新道と旧道に親子の霊が出てくる話はデマだと思ったほうが良い。工事中のトンネル付近を大雨の中、一体何の目的で親子がこんな山奥を彷徨う?工事に携わる父親が心配になってか?それにしてはあまりにも危険を冒してまでするようなことではない。恐らくだが女の霊と子供の霊を見ただけで、親子だと解釈され、都市伝説のネタになっただけなのだろう。」


侑斗が指摘しているうちに車は安全に動かすことが出来るスポットへ停車をさせてから、徒歩で旧伊勢神トンネルへと向かい始める。旧伊勢神トンネルの前に辿り着いたときに、ぱうちゅが撮影モードに切り替わったところで、背後に侑斗と芦原が並ぶような形でVTRの収録がスタートした。


「やってきましたよ!東海地方屈指の旧伊勢神トンネル!!ここでは和服姿の女性やトンネル工事で殉職された方の霊が出る等、様々な怪奇現象が絶えないトンネルとしても有名な化けトンです!早速都市伝説の噂にある旧伊勢神トンネルを何度も往復を繰り返すと呪われてしまうという真偽を確かめましょう。怖いんですけど、都市伝説の真偽を確かめることも必要なことですからね。」


ぱうちゅがカメラを前ににこやかな笑顔で語るとトンネル内へとスッと入っていく。


ぱうちゅの後ろを侑斗と芦原が周りを警戒しながら霊視検証を行い始める。


侑斗が芦原に「やはり出入り口で強い気配を感じた。あの脇の、茂みから40代か50代ぐらいの男性がじっとこちらを見つめてきたのが分かった。あとは長い髪の女性がこちらを注意深く察すると同時に睨みつけられたようにも感じた。」と語ると、芦原は「わたしも侑斗君と同じものを見た。男はトンネル作業員の御霊だろう。作業中だったトンネル工事の現場が台風により甚大な被害を受け、男性は何とかトンネルから脱出してきたが、助けを求めてまだ人里があっただろうこの地を訪れた際に土砂崩れか何か、苦しみながらこの世を去ったに違いない。女性は身なりからして着物姿だろう。ただ台風時に濡れてしまえば移動しづらい着物など果たして着るか?」と侑斗に訊ねると侑斗は「そこですね。そこが不自然なんですよね。ただ伊勢湾台風の犠牲者ではないような気がするんですよ。」と語ると、カメラマン含むぱうちゅと侑斗と芦原の四人が旧伊勢神トンネルを検証のために何度も何度も繰り返し出たり入ったりを繰り返ししながら検証を行っていくのだが、やはり入ってきたときの入り口付近で感じた強い気配が侑斗と芦原の中では強く印象として遺った。


3回ぐらい往復を繰り返ししたときに侑斗がぱうちゅに改めて入ってきた入り口に戻って改めて再検証を行うことを語り始めると、ぱうちゅは侑斗の説明に理解を示したところでトンネルの入り口にまで戻ってくると再度検証を行い始めた。


「某有名霊能者が見たとされる、男性は恐らくこの作業員の男性だろう。しかし茂みと同一化して、自然と共に共生をしている様子からいずれは成仏していくだろう。何もしなくとも、この方はきっとこの世に対する柵を断ち切り、向かうべき場所へ向かわれるだろう。しかし問題は違う。後ろにいるあの赤い女だ。」


侑斗がそう語ると、芦原がぱうちゅに「これ以上いては危険。身の安全のためにもロケバスに戻りなさい。」と語りロケバスに戻るようにとお願いをしてから、現地には二人の除霊の様子を撮影するためにカメラマンが残る形で撮影が始まると、芦原がカメラマンに対して”続行不可能”のサインを送ると、侑斗も芦原も続けてロケバスに戻り、侑斗から先程の出来事について説明をし始めた。


「女の霊は確認できた。三名の着物を着た女性の御霊でした。ただ相当、怨みの念が強い。強すぎる。大昔にあの場所で何かあったはずです。恨めしくこちらをじっと見つめ、警戒をしてきました。”これ以上荒らすようなことをしては許さぬ”とね。伊勢湾台風の犠牲者ではないことは確実です。恐らくですが、社会的な制裁を求められた末にこの地で自滅に追い詰められた方達でしょう、リーダーらしき女性に寄り添うようにして侍女らしき女性が二人いましたので、時代的な考察から察すると明治時代以前の方の可能性が高いでしょう。それはそれはこの世の中に対する怨みの念を募らせながらお亡くなりになられたのですから、これ以上は関わらないほうが身のためでしょう。そのほうが、女性の御霊達の供養にも繋がります。そっとしておいて時間の経過と共に心の傷が癒えるのを祈り続けるしかありません。」


侑斗がそう語ると、一同は明くる日の錦ヶ浦での検証を行うために、出発前に全員が侑斗と芦原による御祓いを受けてから、宿泊予約をしていた駿東郡清水町のビジネスホテルへと向けて23時過ぎに出発をし始めた。


その間に侑斗は疲れてしまったのか、移動中の車内で大きないびきをかいてついつい寝てしまったのだった。そして日付が変わり2時過ぎにホテルをチェックインしてから明くる日の10月13日の朝8時30分にはホテルをチェックアウトし、9時過ぎには錦ヶ浦での心霊検証を11時まで行い、13時から打越橋での心霊検証を15時まで行い、最終検証地である旧小峰トンネルでの心霊検証を16時から18時まで行う日程で向かうまでに最終調整を終えたところでホテルに到着するとゆっくりしている暇もなく一同は明日の朝を考えてさっと眠りにつき始めたのだった。

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