喜入駅を後にして、次の綾の照葉大吊橋に向かおうとした矢先に侑斗があることに気が付くと、そのことを秋庭に伝え始めた。
「秋庭さん、今から僕達綾の照葉大吊橋に行けば営業時間外で入れませんよ。」
侑斗の指摘に秋庭は「営業時間外!?何それ!?単なる心霊スポットじゃないの?」と聞き出すと、侑斗は「九州山地国定公園に指定されているので、しっかりと営業時間というのがあるみたいですよ。4月から9月の時期に関しては8時30分から18時までなのですが、10月から3月の期間に関しては8時30分から17時までと時間が短縮されるみたいなので、今僕達が鹿児島からそちらのほうへ向かったとしても、時刻は15時を回ったところなので、高速を使って急いだとしても2時間30分をまわってしまいます。よってタイムオーバーですね。」と語ると、秋庭は「え!?だって火曜日から土曜日の間に回り切らないといけないのに、朝の8時30分の営業オープンと共に行ったとしても出来る限りまとめていけるようなところがあればまとめなければいけなくなってくるじゃないか、明日は水曜日だから少なくとも宮崎と熊本、木曜日に大分と福岡、金曜日に佐賀と長崎、最終の土曜日に沖縄に行く日程でやらないと、2時間も3時間も滞在することを前提にとなってしまうと、移動する時間だけでも馬鹿にならない!」と話し始めると、侑斗は「あえてそういうところを選んで僕達に言ってきたんだと思いますよ。それにしても、あんな南九州市のおバカな広報課の女性はもうやめて頂きたいところですよ。悲しさが、微塵も感じませんでした。悲しさより同じ社会人として恥ずかしいの一言に尽きますよ。秋庭さんも涙を流してましたけど、あの涙は悲しくてではないですよね。」と聞き出すと、秋庭は「確かにね。でもあの百道さんってTOEICの点数はめっちゃ高くって、英語の才能だけで採用されたような感じはするな。」と語ると、侑斗は「特攻隊のことをスペシャル・アタック・チームと言わないだけでも良かったところですよ。ずっとチームだ、チームメンバーだって、明らかに彼女の話す言葉の一つ一つが場違いな言葉ばかり言ってましたからね。周りから白い目で見られる心霊スポットなんてもう沢山ですよ。」と答えるのだった。
そして秋庭と侑斗は西都市内にある予め予約をしておいたビジネスホテルに早々とチェックインをしたところで、改めて日程の打ち合わせをすることにした。
秋庭は侑斗に「綾町の広報課の関係者が実は首を長~くして俺達の到着を待っていたようだが営業時間外になって帰ってしまったらしくってね、明日は朝の8時30分から必ず来るようにするので、昨日は待たせてしまって申し訳ありませんでしたって改めて出迎えてくれた人に謝罪をしなければいけない。」と話すと侑斗は「そうですね。そうなってくると今僕達が宿泊しているホテルから、目的地の綾の照葉大吊橋までは所要時間が大よそですが50分はかかりますから、8時30分に到着しようと思ったら少なくとも7時30分には出発をする準備をしておかないといけない計算になりますね。明日は朝が早いですよ。少なくとも午前中に所要の予定を済ませたうえで、お昼の14時くらいまでには田原坂公園に着きたいですね。そのためには綾の照葉大吊橋から田原坂公園までの所要時間が2時間50分はかかる計算なので、到着時間を14時を目安としたら11時10分までには出発をしなければいけなくなってきますね。ゆっくりとしていたらまた予定が狂ってしまいますね。」と語ると、秋庭は「そうだな。少なくともじっくりと視察をしながらスピーディーに回らなければいけない。これから先がハードになってくるな。」と話したところで、二人は買ってきた御飯を食べ終え部屋の中にあるシャワーをさっと浴びたところで22時には眠りにつくことにした。
そして一夜が明け、2025年10月22日 水曜日の朝を迎えることになった。
朝の6時に目覚めた秋庭と侑斗は目覚めるとさっと身支度を済ませ、朝御飯を食べ終えたところで、7時30分にはホテルをチェックアウトをしたと同時に目的地の綾の照葉大吊橋へと向けて出発をすることにした。
侑斗が秋庭に「次に向かう綾の照葉大吊橋なんですけどね、今Googleのマップのアプリを見ているんですけど、フラッシュの反射によるフレアが撮れやすいのか、赤いオーブっぽい紛らわしいのが撮れやすい点があって、果たしてこれを心霊なのかそうでないのかを見極めるのが極めて難しいところですね。ただ兄の情報によるとここは投身自殺の名所だとも言っていましたね、何せ高さのある吊り橋ですからね。手招きをするような霊が居ても不自然ではないですね。」と語ると秋庭は「観光名所でありながら投身自殺の名所ですってか、ハハハ。あ~あ。聞かなかったことにしておきたいぐらいだ。」と話すと、その後に深く大きなため息をつき始めた。
そんな様子を見た侑斗は「投身自殺の名所って意識しなければ良いことだと思いますよ。怖がることはないと思います。」と言い切ると、秋庭は「そう言える根拠って果たしてあるのか?」とさらに言及してきたので侑斗は「ここで沢山の方が投身自殺を図ったって思わないほうが良いんです。思えば思うほど”怖い”という潜在意識のほうが勝ってしまって仕事にもならないと思いますよ。観光気分で渡り切ってくださいとは言いませんけども、あまりにも恐怖心を持って対応してしまえば、言い方悪いかもしれませんけどそれこそ自殺者の御霊達の思うつぼですよ。常に平常心を保つことのほうが今回のミッションでは大事だと思います。」と語り説得すると、秋庭は暫く沈黙した後に再びため息をつきながら「仕方がない。怖がらずに検証するしかない。」と呟くように話すと、侑斗は「そうするしかないですよ。あと、例の幽霊羊羹の話があったじゃないですか。清水の滝で真っ赤なオーブが撮影されたので、幽霊羊羹と合わせて真っ赤なオーブの羊羹と怪談話で有名な某有名タレントの発言から最恐のオレンジのオーブ羊羹ってのも発売されるみたいですよ。」と秋庭に話し始めると秋庭は思わず吹いてしまった。「悪趣味にも程がある・・・。」
二人が乗る車が綾の吊り橋の駐車場に8時25分ごろに到着をすると、旗を振って二人の車のところへと近付く存在に気付き、侑斗が慌てて車から降りると「あっ、昨日は予定が大幅に遅れて、だいぶ待たせてしまったようで申し訳ありませんでした。」と頭を下げて謝り始めると、駐車措置を取ってから車を降りた秋庭も続けて「お待たせをしてしまって申し訳ありませんでした。」と謝ると、近付いてきた東諸県郡綾町の町役場の広報課の担当の女性が「そんなこと、最初に友好都市の南九州市から回るという話は最初に市長から伺っていましたし、南九州市から綾町なんて距離がありますから一日で回り切れないことは予想できたことですから、気にしていませんよ。むしろ遠いところからわざわざ検証に訪れた上に、心霊観光地の一つとして照葉大吊橋を取り上げて頂けるだけでも光栄です。あ、紹介が遅れましたね。今年から綾町の役場の主に広報を主としたPRを担当している杉元遙と言います。侑斗さんと同じ社会人1年目で不慣れなところもあるんですけど、今日は宜しくお願いします。」と挨拶をすると、秋庭は「そう言ってくれて、しかし市長も俺達の行動範囲を、まあ俺のほうから伝えていたのも良かったのかもしれなかったけど、理解を示してくれて助かりました。僕たちは11時までしかいられないので(侑斗のほうを見る)、与えられた2時間30分のうちにしっかりと心霊観光地としてお手本にしたいと思ったところをしっかりと今回の検証で吸収していけたらと思います。」と語ると、侑斗も続けて「今日は短い時間ですけども宜しくお願いします。」と挨拶を済ませたところで、三人は大吊橋に向かうまでに杉元から先ずは見て頂きたいという事で照葉樹林文化館のほうから足を運んで中を見学することにした。
杉元が秋庭と侑斗の二人を先導する語りでゆっくりと展示物を眺めていると、杉元から二人に大まかな説明をし始めた。「ここで公開されてあるのは綾町の本来の自然と生活文化を案内しているとの同時にバードカービングという木彫りの鳥でこの地域の多くの鳥を展示してあるのが最大の魅力です。吊橋を渡って頂くまでにまずは綾町ならではの自然を学んでいただいてから渡って頂きたいと思って紹介をさせて頂きました。」と話し終えたところで、侑斗は「確かに、綾町の自然や文化に触れて、改めて自然と共生をしながら営んできたという歴史を学ぶことが出来ました。」と答えると続けて秋庭も「僕達が知らなかった綾町の歴史を改めて学ぶことが出来ました。本当に展示物が非常に良く出来ているのが印象に残りました。」と語り終えたところで三人は照葉樹林文化館を後にして、綾の照葉大吊橋へと移動し始めた。
杉元から渡るまでに秋庭と侑斗に「さて、これからが心霊観光地として綾町を代表する心霊スポットとして照葉大吊橋に渡って頂くのですが、照葉大吊橋は1984年の3月に開通し、2011年の10月に劣化のため改修工事を行ってリニューアルオープンを果たしました。長さ250m、巾1.2m、高さ142mの国内で2番目の高さを誇る吊り橋から眺めることが出来る雄大な景色を味わっていただきたいと思います。」と照葉大吊橋の説明をしたところで、350円の通行料を払った三人は吊橋を渡ることにした。
侑斗が杉元に「僕たちは前もって、吊橋とは聞いて居ましたが高所恐怖症の人には生き地獄でしょうね。床が金網になっていて心霊の恐怖よりも高い恐怖のほうが増すような気がします・・・。」と冷や汗をかきながら語ると、杉元は侑斗に「饗庭さんは高いところが苦手なんですか?」と心配になって聞き始めると、侑斗は開き直るようにして「いえいえ。高いところは怖いってのは無いんですけどね。」と言い切ったところで、杉元は「それならよかったです。ゆっくりと味わってくださいね。」と語ったところで、侑斗は秋庭に小声で「こんなに高いなんて思ってもいなかった。ジェットコースターにも怖くて乗らないのに、たまらん・・・!」と言い始めると秋庭は呆れて「ったく。高いところが苦手なら最初のうちにカミングアウトしたほうが良かったんじゃないのか。暫く下を見ないで、前だけをまっすぐ向いて歩いていったほうが良いぞ。」と侑斗にアドバイスをしたところで、三人は吊橋を歩き進んでゆく。
ゆっくりと慎重に歩いていくうちに杉元から照葉大吊橋に纏わる心霊現象の話について語り始めた。
「秋庭さんも饗庭さんも、通行料を払って橋の入り口から吊橋を渡り始めたときに異変を感じたりしませんでしたか?」
まさかの話の展開に秋庭が「入り口に何かあるのか?」と恐る恐る聞き始めると、侑斗は「まさかこんな下がスケスケだとは思っていなかった恐怖がありました。」と語ったところで、杉元が「投身自殺の名所として知られている所以になった怖い話が幾つかあるので改めてご紹介をさせて頂きます。あるサイトでは入り口にいたときに後ろのほうから”ねえ”という呼び声が聞こえてきたので振り返ってみるとそこには誰もおらず、またそのときにいたメンバーも同じ声を聞いており聞こえた声の主を探したそうですが、普通に話すくらいの声量で話しかけてきたというのがより一層この橋を渡ることに対しての警告なのではということに気付き、恐怖を感じて渡らなかったという話があります。そのほかは橋を渡っている最中に一緒に渡っていた従姉が下を流れる本庄川のところに誰かがいると言い出し、覗き込んだところ髪の長い人影がいたという目撃談もあるようにここでは自殺者の御霊による心霊現象の報告が寄せられていることが多いです。実際に歩いていただいて分かって頂いたかと思いますが、この地で最期を遂げられた自殺者の御霊が新たに自殺者を呼び込むための呼びかけが行われていても不思議ではないと思いませんか?」と語ったところで、秋庭が侑斗のことを気遣って杉元に「すみませんね。饗庭君がね、強がりましたけど高所恐怖症なんです。早く渡り切ってあげてください。といってもまたリターンをしなければいけないからそれは饗庭君我慢するよね?」と聞き始めたところで侑斗は「大人ですから我慢します。もう下は見ません。目の前の景色しか見ません。秋庭さん、心霊検証のためにもすみません、僕の代わりに下の様子を写真撮影していただけませんか?」と切り出したところで、秋庭が持っていたカメラで写真撮影を行ったところで、侑斗が何かの気配を感じ取ったのか、あることに気付き始めた。
「すみません。仕事なので怖いと思ったことは口にしないほうがと思っていましたがお気になさらないでください。実は杉元さんが心霊現象の一つとして”ねえ”と呼びかける声の存在のお話をして頂いていたと思うんですけども、あの時からすでにただならぬ気配を感じ取ったのですぐさま霊能者としての霊視を行いながら、高所の恐怖とも戦いながら検証を行いましたが、吊橋からの自殺があったというのは地元の方も知る人ぞ知る情報なんですよね?」
侑斗が確認のために杉元に聞き始めると、杉元は「そうです。ここは投身自殺の名所としても知られる場所です。絶景を堪能できる場所ですからね、最期の地として飛び降りたいと思って飛び降りるのかもしれませんね。」と答えたところで、侑斗は「先程から注意深く見られているんですよ。渡った当初は橋の下あたりの木々のほうからそれがやがて吊橋の真ん中あたりに来た時に今度は上から見られているような感じがしました。手招きをしているとか、そういった様子は一切見受けられませんでしたが触れてはいけないようなものと接しているような気がします。」と霊視した結果を語り始めると、続けて「我々はまだ橋の途中にいますから、渡り切った橋の向こう側で改めて僕が見たものをお話ししましょう。」と話したところで、三人は橋の出口へと向けて移動し始めると、出口を出て立ち止まれそうな場所に辿り着いたところで改めて侑斗のほうから橋で見た光景を説明することにした。
「恐らくですが、霊障によるものだろう”ねえ”の声の主は恐らくですが、自殺者の御霊による可能性が高いです。それは渡った先に何かあるから渡るなという警告ではなく、自殺の呼びかけそのものです。たまたま遭遇された方々が自殺者の御霊にとっては話しやすいと思われたのかもしれませんね。渡らなくて正解だったんです。渡ってしまったら仲間になっていたと思います。投身自殺の名所でよくある光景の一つで、呼びかけともとれる霊の行為があったとしたらここは決して心に迷いや悩みを抱えた状態では決して渡ってはいけないという事だと思います。」
侑斗が霊能者としての意見を語り終えたところで、杉元が「そんな霊が彷徨っているのだとしたら、心霊観光地として綾の照葉大吊橋をPRしていいのかどうか、危険なんじゃないんですか?」と訊ねると、侑斗は「危険だ。」と答えるにとどまった。
思いがけない答えに杉元は絶句してしまうと、秋庭が思わず「饗庭君、いくら何でもその答え方はないだろ!?」とつかさず突っ込むと、侑斗は秋庭に「すみませんね。悪いけどこれは洒落にならないほど自殺者を呼び込む強い負のパワーを持つ髪の長い女性の霊が彷徨っているんです。悪霊と見て間違いはないかと思います。僕がこの話を行うまでに、最初は下の木々から我々の動向を注意深く見ていたのがいつの間にか上のほうへ移動していて、我々を見下ろすようにして見ていると言いましたよね。実はこの正体こそが、目撃談や声を聞いたとある女性の自殺者の御霊によるものだと推測されますが、決して近づいてはならないと結論づく理由としては、女性の御霊は時折にこやかに微笑んでいるということです。」と話すと秋庭は失笑しながら「何だよそれ。にこやかに微笑んでいるのなら怖くないじゃないか。昨日に行ってきた知覧特攻平和会館で見たパイロットの幽霊と同様の類なんじゃないの?死んだ状況は違うけどさ、ここで死ぬことが出来て本望です的なことじゃないのか?」と切り出すと、侑斗は秋庭に「言い方を変えましょうか。最期ににこりと笑いながら自殺を図るぐらいなら、普通の人の考え方ならまず自殺をすることを思いとどまって飛び降りたりはしないと思います。しかし女性は飛び降り自殺を図ったんです。にこやかな笑顔でこの世に別れを告げてしまった女性は恐らくですが相当なこの世の中に対する復讐心があったと思います。その結果が女性が新たな自殺者を誘い込む要因になったと想定されます。女性の御霊は笑っていた、だが笑い終えるとこちらを睨み付けてきた。危険な兆候にあると感じ取りましたので、決してこの橋を心霊観光地として推奨してほしくない理由は無いのですが、生者に禍を齎す悪霊がいることは事実として受け入れたほうが良いと思います。」と答えたところで、侑斗の霊能者としての意見を改めて聞いた秋庭と杉元は背筋の凍る思いを感じ始めたところで侑斗は続けて話し始めた。
「除霊をしようと思うと、女性の悪霊以外にも女性と共謀して誘い込む御霊の存在がいる。ここは霊が集まりやすい環境があまりにも揃っている。山があり、水が近くにあり、高所である。御祓いを行えば関係のない御霊も祓わなければいけなくなってくるので、僕一人では処理しきれぬほどの膨大な御霊達が救済を求めて集まってくる事態に陥る危険性があるので、ここでの御祓いは行えません。ただ、心霊観光地として今後PRをする際は予めこう伝えてほしいことがあります。それは、”強い覚悟を決めた上で橋を渡りに来てください”ということです。自殺者の御霊達は心に悩みや迷いがあると分かればすかさず次のターゲットとばかりに狙ってくる危険性が高いです。幸い我々は、僕も含め心に付け入ることが出来る程の悩みや迷いがないと分かって上まで上がってきて見下すようにして我々の動向を注意深く見ていたんです。ですので自殺者の御霊達に弱みを見せつけないためにも、橋を渡るには強い覚悟を決めてくださいとPRをすることで、この吊橋の高さをアピールすることが出来ると同時に、自殺者の御霊達のトラップにハマらない策にも繋がるのです。」
侑斗がそう話し終えたところで杉元のほうを見始めると、杉元は声を振り絞るようにして「そう仰って頂いてありがとうございます。饗庭さんのご意見は今後参考にして心霊観光地の一つとしての宣伝材料として前向きに検討したいと思います。今日は本当にわざわざ来ていただいて検証もして下さって有難うございました。」と深々とお礼を伝えたところで、三人は駐車場まで戻るためにも再び吊橋を渡り始めた。
その際に秋庭が侑斗が見たと証言した上空の様子をカメラで撮影することにした。
秋庭が写真撮影を行っている姿を見た侑斗が秋庭に「今のところ、僕が見た自殺者の御霊達は僕達に自殺する様子が見受けられないことから諦めて退散しているので大丈夫ですよ。写真撮影しても何も不自然なものは映らないと思いますよ。安心して下さい。僕も吊橋の往復をしたおかげで高所恐怖症が克服できました。」と話し始めると秋庭は「そうか。あれだけ怖がっていたのにそれこそ饗庭君のほうが”怖い”といって橋の下へ飛び込んでも不思議じゃなかったんだけどな。」と言い始めると、侑斗は秋庭に「何を言っているんですか、飛び込むほうがもっと怖いです。バンジージャンプのようなことはしません。ってか秋庭さんそんなこと言ったら僕また足元を見てしまって背筋が凍り付くような思いをしたじゃないですか!」と言い返すと、秋庭は思わず「饗庭君の見た怖い自殺者の御霊の解説談のほうが俺も杉元さんも背筋が凍り付くほど怖い思いをしたんだけどな。」と突っ込むと、侑斗は「何を言うんですか。それが僕の霊能者としての仕事なんですから!」と反論すると、二人のやり取りが杉元にとってあまりにも可笑しかったのか、我慢できずに笑い始めた。
三人が橋を渡り切り、入り口のところまで戻ってくると、そこで改めて侑斗が秋庭と杉元に対して女性の御霊による禍から身を護るための御祓いを行ったところで、秋庭と侑斗は改めて紹介をしてくれた杉元に御礼を言うとともに車を駐車させておいた駐車場へと戻り始めると車のエンジンを発進させ、綾の照葉大吊橋を後にすることにした。時刻は11時を既に回っていた。
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