【完結】慰霊の旅路~対峙編~

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頭川トンネル/旧津々良トンネル(富山・氷見市)

公開日時: 2021年12月12日(日) 02:05
文字数:8,190

ヤセの断崖を後にした一同は、Googleマップで”頭川トンネル”と検索し最短ルートで表示された比較的早い氷見市から入るルートを選び向かい始めることにした。


運転席に原田、助手席に小田切、後部座席の左側から侑斗、勝本、星弥の3人が乗ると、車の中では原田のお気に入りの楽曲でもあるNOTHING TO DECLAREが歌う”Another Light”を聞きながら意気揚々のムードで富山県の氷見市へと入り始めると、早速晩御飯を食べるために車で立ち寄れそうな店を見つけたところで営業時間内だった居酒屋に立ち寄ると21時を回っていた。


「せっかく富山まで来たのに、富山ならではの新鮮な魚介類など・・・!ああ!閉店も間近じゃ注文できるものが限られてくる・・・!」


侑斗が思わず嘆くと、隣に座る原田が侑斗の表情を見ながら答えた。


「次に富山に来るときは彼女と二人で来たら良いんじゃないの?」


原田から思いがけないアドバイスを言われた侑斗は思わず飲んでいたお茶を吹きそうになると、飲んでいたお茶を必死に飲んでから原田の顔をじーっと見て語り掛けた。「あのね。今の俺はね、ボランティア霊能者として日々忙しい毎日を送っているんだよ。今だってそうだよ。移動中はゆっくりしている暇もなく、慰霊の旅路のメールフォームに投稿された写真が心霊写真だと判断できるものなら、御祓いをしたりしているんだからそんな俺と誰か女の子が一緒にデートしたり出来る程の金銭的な余裕はまあ一応あるが、でも行けるとしたらこうやって心霊スポットの検証依頼に俺が霊能者として行くのに助手として同伴することぐらいしか出来ないからな。それでも”喜んでついていく!”だなんて言ってくれる女子はいないと思うけど?」と話すと原田は再び侑斗を見ると笑いながら答えた。


「侑斗は誰が見てもカッコいいじゃん。女子が本気で惚れたら絶対にどこであろうともついてくると答える女子は絶対にいると思うよ。だから諦めないで。」


原田なりの一言に侑斗は苦笑いをしながら「あっ、ああ。ありがとう。でも今は本当に忙しくって三連休が取れたことも奇跡に近いってぐらいのものだからね。きっと10月、11月、12月となると益々目まぐるしいぐらいに忙しくなって、これから先週末霊能者としての活動も果たして続けられるかどうかというのもあるからね。暫くはいち地方公務員としてしっかりと稼ぐことに専念しなくてはいけない。」と話すと一同の前に注文した海鮮丼が並び始めると一同は黙り込んで夢中になって食べ始めた。


勝本が「美味しい!こんな新鮮な、魚の生臭みがない魚なんて久しぶりに食べた!美味い!美味すぎる!!」と感想を言いながら話すと、その他の小田切、星弥、原田、侑斗の4人はあまりにもの美味しさに黙り込んで夢中になって食べ進んでいく。


「感想だけ言っているのって俺だけ?」


勝本が一同の様子を確認すると、「俺もゆっくりしていないでさっさと食べ進まないと次に行けない!」と話したところで、がっつりと食べ進んでいく。


その中で、侑斗が慰霊の旅路のWEBサイトや公式SNSでアップロードをした福井県の東尋坊、九頭竜ダム、石川県の熊走大橋、金沢大学医学部解剖体墓地、ヤセの断崖で写真撮影した画像をアップロードをしたところ、沢山の反響がありまた同時に多くのいいね!やリツィートやリポストが行われて、アクセスは瞬く間に一気に膨れ上がっていた。その中で、新たな心霊検証の依頼が慰霊の旅路に投稿されていた。


星弥が食べながら持っていたタブレットで慰霊の旅路の管理サイトでアクセス数の状況を確認していると、新たな投稿があったとメッセージ音が鳴ったところで、星弥は「新たな心霊依頼が入ったようだが読んでみようか?」と聞き出したところで、勝本は「どんな内容なのか教えてほしい。」と切り出したところで、星弥は読み始めた。


「皆さんお憑かれ様です。テレビ近畿でオカルト系番組のプロデューサーをしています、放浪中ちっち(ハンドルネーム)といいます。北陸での心霊検証の記事が話題になっていることを知って改めて読んでいたのですがまさか関西に来ていたとは正直思ってもいませんでした。再度関西に来て頂けるのなら、一度心霊検証をお願いしたいところがあります。解体費用の諸費用などもあり度々解体工事が止まったりするなどの、関西では知る人ぞ知る有名な心霊スポットが京都にあります。それがKホテルとされる場所ですが、これまで数々の心霊番組でも取り上げてきて実際に心霊現象とも思える映像が撮れたことでも非常に有名な場所です。今回、なぜどうして数々の心霊番組で心霊映像が撮れることも立証済みのKホテルで心霊検証を依頼したいのには理由があります。雲隠れをしていたであろう、かつてのホテルのオーナー一族がやはりきちんと建物を解体したうえであの土地を売却したいというのがあったのですが、心霊スポットとして名も知られ、さらに地元のヤンキーたちのたまり場になった挙句ボヤで一部が燃えたことも考えるとさすがにこれ以上あの建物を遺すと近隣の住民の迷惑にもなりかねないことを危惧し、4階や屋上に現れる心霊映像にも映ったあの女性の霊の供養をしてほしいという依頼が当番組に寄せられました。九州から遠いところで大変恐縮ですが、是非一度検討してもらえませんか。宜しくお願いします。日程は饗庭兄弟の都合のいい時に合わせてこちらもオーナー一族に連絡します。」


星弥が読み上げた内容に、小田切は「その依頼は断ったほうが良いかもしれない。」と話し始めると、続けて勝本も「悪い予感がしてならない。断ったほうが無難。」と続けて断るように進言するとそれを聞いた侑斗は小田切と勝本に理由を聞き始めた。


「せっかく解体前の除霊が目的なら断る理由なんてないんじゃないのか?そんな断らなければならないほどの強いのがいるってこと?」


侑斗が何気ない口調で質問すると、小田切は重い口調で語り始めた。


「そこはやばい。Kホテルって聞いて多分ピンとこないのは当然だと思うが、そこは相楽郡笠置町にある笠置観光ホテルという有名な心霊廃墟だ。俺も心霊特集で一度目にしたことはあるが、特にメールにも報告がされてあるその女性は危険すぎる。」と話すと、星弥は「何が危険?理由が知りたい・」と聞き始めると勝本が答えた。


「あまりにも顔の表情がまるで生きている人間のような仕草を見せるんだよ。まばたきをしたりしてね。生きているときによっぽど男性に対して恨み辛みがあったのだろうか見ている限りでは男性に対する執着心が強いと見た。よほどこの女性にとって良縁がなかったのか男性とは良い思い出が無かったのかもしれない。俺達は現地には行っていないが、あのあと俺にも小田切にも運営する心霊サイトに寄せられた情報では、女性はホテルの4階か屋上に高い確率で現れることが分かった。つまり心霊番組で映ったあの映像がガセではないというのが証明できた。ただあれだけはっきりと映るというのは、宜しくない。見ているだけで寒気がしたのを忘れられない。」


勝本がそう話すと持っていたタブレットで管理している心霊サイトに投稿された心霊映像を侑斗と星弥、原田の三人に見せ始めると、三人は写し出された映像をじっくりと真剣な表情で確認すると同時に言葉にならない思いで絶句してしまった。


星弥は映像を見たと同時に小声で「自殺者の御霊の可能性が高い・・・。」としか言えず、それを聞いた小田切は「まあそんなもんだろう。でも深入りは禁物だ。何しろ相当強い恨みを残して旅立たれたことに間違いはないのだからね。」と話すと、侑斗だけは違う感想を抱いていた。


「俺はこの女性と会ってみたい。きっと言葉には言い尽くしがたいほどの苦しみがあったはずだ。せめてもの、供養をしてあげたいという気持ちを伝えたい。」


侑斗がそう話すと、星弥が侑斗の顔をじっと見て説得をし始める。


「今俺達が行く頭川トンネルも侑斗にとっては素敵な素敵な女性が待っていること間違いないだろう。頭川トンネルで出来るとされる心霊現象の一つとして、かつてこのトンネルで女性の焼身自殺があったという話から、片足を引きずった白い犬が出る、車でトンネル内を通過した際にタイヤがパンクする、家に帰ってから金縛りにあうなどの報告が寄せられている。その他にも、頭川トンネルの近くが処刑場があり打ち首になった罪人の首を川に投げ捨てたことから頭川という地名がついたいう噂までもある。そしてこのトンネルまでの通り道は”白骨街道”とも呼ばれているという。この地に訪れた人々の投稿された情報によれば肝試しに訪れた際に、女性の悲鳴のような呻き声のような声が聞こえるとも慰霊の旅路でかつて訪れてリポートをしてくれた人も同じことを説明している。少なくともそれが女性が焼身自殺を図ったのでは?の噂にも繋がったのだろうだが、その女性が仮にもしヤセの断崖やKホテルで現れるような邪心に満ちた女性の霊だったらどうする?それでも可哀想だ!といって女性の御霊に同情してしまえば”待ってました!”とばかりに餌食になるのは目に見えている。気の毒だと思う気持ちはあっていいかもしれないが、どんな御霊に対してもそう考える気持ちは違うと思う。」


星弥が侑斗を説得するとそれでも侑斗の考え方は変わらなかった。


「俺は霊能者だ。心の闇と向き合い対峙していく。邪心に満ちた霊だとか、悪意に満ちているとか、そういうことはどうでもいい。霊能者として心の闇を抱え今もなお彷徨い続ける御霊に対して極楽浄土への道へと導くのが俺達の仕事だ。勿論Kホテルでの除霊の仕事だって兄ちゃんは嫌がっても俺は喜んで引き受ける。」


侑斗が強く言い切るように主張をすると、一同はどう説得をするべきなのか何も言えず黙り込んでしまったところで、勝本が立ち上がり「皆!さっさと食べ終えたら店を後にして頭川トンネルへと向かおう。」と切り出したところで、一同は店を後にし頭川トンネルへと向けて車を走らせた。


「頭川トンネルこと津々良トンネルは新道が出来たおかげで、心霊スポットとして言われている旧道のほうはいずれお役御免となる日が近いだろう。こんなこともあろうかと思って車の後ろにフリーサイズの長靴を5足積んでおいてよかったよ。老朽化のためか一部が浸水していて普通の靴では歩いて行けないところがあるようだ。また途中工事をしている箇所もあるため、車で行けるところまで行って頭川トンネルまでは徒歩で向かうしかない。懐中電灯はところで皆持っているよな?こんなことも予想できたからランタンを5つ持ってきたよ。」


原田がハンドルを握りながら話しかけると、小田切は「わざわざ用意をしてくれてありがとう。」と話すと、侑斗は「さすが。用意周到というか、そこまで考えるのかってぐらいのことを前もって予見しておいた上で色々と準備を整出てくるところが原田田らしい。」と原田をほめると、原田は照れながら「いや~それほどでも。」と答えると、フェンスの前まで車が辿り着いたところで安全に切り返しが出来るような場所で車を停車させてから徒歩で頭川トンネルを目指して歩き始めることにした。


歩きながら勝本が「スマートフォンの懐中電灯ではなく、原田君が前もって用意してくれたこのキャンプ用のランタンが大活躍してくれている。長靴も非常に役に立っている。本当によくここまで、頭川トンネルに行くことなんてそもそも最初の段階では決まっていなかったのに、準備できることはしっかりと準備してくることが偉いし見習いたいと思う。」と語ると、原田は「いやいや。たまたまですって。でも皆さんに喜んでもらえてとても嬉しいです。」と笑顔で答えると先頭を歩いていた星弥と小田切が立ち止まり、後ろを歩く勝本と侑斗と原田に対して声をかけた。


星弥が右手の人差し指を指しながら「見えてきた。あれが頭川トンネルの入り口だ。入り口に近づいたと同時に霊視検証を行い、女性の呻き声や叫び声の正体を突き止めよう。」と大きな声で切り出したところで、勝本は「わかった!」といってOKのサインを出すとまず最初に小田切と星弥の二人がトンネル内と入っていくと、続けて勝本、侑斗、原田の順で暗闇の世界へと入っていく。


トンネルに入ると同時に原田が「ゲッ!思っていた以上に浸水しているじゃん!」と話しかけ始めると、前を歩いていた勝本が「1931年(昭和6年)に開通されたトンネルだ。94年も経っているのだから老朽化が進んでもしょうがない。」と語ったところで、持っていたランタンを天井に向けて照らし始めた。


歩き進んでいくにつれて一同は悪寒に近いような酷い寒気に襲われ始めると、侑斗がたまらず「この寒気は霊障によるものですよね。」と勝本に聞き始めると、勝本は「ああそうだ。。強力なパワーを持つ何かが引き起こしている。」と答えると、高岡市内へと向けてゆっくりとした歩調で霊視を行いながら進み始める。


トンネル内を注意深く散策しているうちに侑斗がある点に気付き始める。


「噂にもあった焼身自殺をした女性の御霊の話が事実だとしたら、果たしてどこまで女性がもがき苦しんだ末に命絶えたのだろうか。天井を見る限りでは燃え煤のようなものは見受けられない。動物の泣き声とは全く別物の明らかに人の呻き声や泣き声が聞こえてくる辺りから、真相を追求したいところだね。」


侑斗がその場にいた全員に対して聞こえるような口調で話しかけると、先を歩いていた小田切がある点に気付き始めた。


「焼身自殺は噂の域にしか過ぎないのじゃなかろうか・・・?」


トンネル内に響くようにして聞こえた小田切の声に勝本は「それってどういうことだ?理由を教えてほしい。」と聞き始めると、小田切なりの結論を語り始めた。


「仮にもしここで焼身自殺が起きたとしたら、その女性は相当の強い覚悟を持って自らの命を絶ったということになるが、このトンネル内の壁や天井を見る限りでは明らかに焼身自殺を起こした人による痕跡が見受けられない。あったとしたら、トンネル内の一部も燃えて不思議ではないが、ところが燃えた後を修復したような個所も見受けられず、殆どが老朽化に伴うトンネル施設としての劣化としか言いようがない惨状だ。噂にもあった通り、この中に入れば入るほど確かに、男五人しかいないはずなのに女性の救いを求めてくるような悲鳴のような呻き声のような訴えの声は聞こえてくる。だがこれは焼身自殺をしたものではないだろう。」


小田切がそう話すと、星弥が小田切の左肩をポンポンと叩くと、小声で語り始めた。


「前をよく見てみなよ。いるじゃないか。しかも女性を囲むように何体もの御霊達だって現れ始めている。」


星弥がそう話すと立ち止まり、女性の御霊の動きを注意深く見ることにした。


その姿を見た原田は「顔を下に向いて、長い髪の毛を顔が見えぬようにして俺達を強く睨み付けているような気が、あれは噂に出てくる女性の霊なのか!?」と話しかけると、星弥は原田を見て「間違いない。白装束のような装いの、顔が全く見えない状態で長い髪で覆っているあの女性こそが、トンネル内で聞こえる声の主の正体だろうな。注目を浴びたいがために、生者に対して恐怖心を煽らせるようなことをしているだけに過ぎない。恐らくここは新道が出来るまでは交通事故の多発地帯だったのだろう。女性は焼身自殺をしたのではない。恐らくはこの付近で交通事故に遇い帰らぬ人となったのだろう。トンネル内には事故が起こったような痕跡も何もないことから恐らく、対向車が来た際の待避ゾーンなども無ければ、トンネルの幅員が車1台がやっと入れるぐらいのサイズでは、交通需要が増えてきたと共により大きく道路の幅を作り替えなければいけない必要性が生じてきたのだろう。その理由として事故が多く発生していたことが挙げられると推測される。ここに現れる御霊は思いがけない形でこの世を旅立つことになってしまった事故でお亡くなりになられた方達なのだろう。その他にもこの場所が人目につかないことを理由として付近の森で首を吊って自らの命を絶った人もいるのだが、数が数で知れている上にもうこの世に未練はないのか自然と同一化しているあたりから成仏はしていると見た。」と一通りの説明を行ったところで、星弥は侑斗にある提案を打診した。


「侑斗、女性の供養を行うか?」


星弥に聞かれた侑斗は「ああ。勿論だとも。霊能者として女性が極楽浄土に行けるように導く。」と答えると、原田は侑斗に「やめろ。それは危険な駆け引きだ。」といって止めに入った。原田に制止された侑斗は原田に対して「どうしてだよ!?目の前に困っている人がいるというのに見過ごさないわけにはいかない!」と言うと、それでも原田は侑斗に「見てわからないのか!?あれは危険な霊のサインだ。相当強い怨みの念を持ち彷徨っているのは見てわかった。あれは絶対に対峙なんてしないほうが身のためだ。祟り返しされかねない。」と強い口調で説得を行い始めると、侑斗は原田を見て「心配してくれてありがとう。でも命ある俺のほうが強い。」と強く言い切ると、侑斗は女性の御霊の前まで近づいて語り始めた。


「何があって、こんな陰気な場所に居座っているのかはわからないが、少しでもあなたが抱える心の闇に光を照らしたい。あなたは訴えている。きっとこの地で思いがけずこの世を去ってしまったことに対して、きっとあなたは今もなお助けてほしいという思いでこの地を通りかかった人に対してSOSのサインを出している。大丈夫だ。僕はそんなあなたを見捨てたりはしない。天国に旅立てば、あなたの心の痛みに寄り添ってくれる多くのあなたのご先祖様がお待ちです。あなたは向かうべき場所へ旅立ち新たな人のいち人生としてもう一度リスタートをするべきです。生きていたら色々としたかったことはもう取り戻すことはできませんが、違う誰かの人生の一部としてあなたができなかったことを次の誰かの一部として生き続けることは可能です。過去に振り返ることはどうか忘れて、前向きな気持ちでもう一度やり直しをしませんか。」


侑斗が現れた女性の御霊に対して優しい口調で語り掛けると、侑斗の言霊の力に女性の顔からは次第に涙のようなものを浮かべ始めると、それを見た侑斗は除霊のための御経を唱え始めたところで、女性の御霊は天を見上げ淡い黄色い光となってその場から消え去ったのだった。同時に女性の御霊に誘発されるようにして現れた御霊達も女性が成仏したのを見てわかったと同時に、侑斗の言霊の影響を受けたのか淡い光となってぽつぽつと消え始める。


そして辺り一帯に現れた霊達がいなくなったところで、侑斗は原田に近づくと「問題なく成仏できたよ。極楽浄土に辿り着けたらいいな。」と笑顔で言い切ると、原田はそんな侑斗の様子を見て思わずこう答えた。


「霊能者として決して怯えずに女性の御霊と言霊と御経の力で除霊を行える侑斗のほうが凄い。俺にはまねなど出来ない。」


原田がそう話すと、侑斗は「怯えたら負け。元々は命ある人間だったのだからね。怖がる理由など存在しない。」と淡々とした口調で語ったところで、星弥は侑斗に「よくやった!」と褒めちぎると続けて小田切も「凄い!凄いとしか言いようがない!」と言って侑斗のところへ近づき抱きしめると、勝本も侑斗に近づき「俺にも小田切にもそして星弥にも出来ないことをよくやってくれた。」と褒めちぎった。


そして一同は車を停車させておいた地点まで戻り始めるとそれぞれ自身の祓いを済ませてから、星弥が予めホテルの予約をしておいた高岡市内にあるビジネスホテルへと向けて走らせるのだった。


原田が運転する車の中で侑斗は大きないびきをかきながらぐっすりと寝ていた。


「凄いな。ある意味で大物かもしれない。」


運転していた原田がそう口ずさむと、後部座席に座る星弥が苦笑いしながら「きっと御祓いで疲れたんだろう。」と答えたところで、一同は予約しておいたビジネスホテルに到着しチェックインの手続きを済ませたところで明日に向かう黒部ダムでの心霊検証を行うために、それぞれがホテルの部屋に入ったと同時に就寝することにした。

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