【完結】慰霊の旅路~対峙編~

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原城跡(長崎・南島原市)

公開日時: 2022年1月4日(火) 21:17
文字数:8,369

犬鳴ダムを後にした秋庭と侑斗は、次の目的地がある原城跡がある長崎県の南島原市へと向けて出発した。


車の中で侑斗は秋庭に「次に行く原城跡は会えたらラッキーな幽霊の目撃例がありますよ。」と切り出すと、秋庭は「会えたらラッキーな幽霊って何?天草四郎の幽霊でも出るというのか。」と聞くと、侑斗は「噂によるとどうもそうらしいです。天草四郎の御霊が出るそうです。目撃例もあるから、お会いできるものなら会ってみたいですよね。何たって、37000もの元士族等で構成された一揆軍の大将をたった16歳の少年がまとめられることが出来るってのが、凄いですよ。まだ彷徨っていらっしゃるようならば、これほど謁見してみたい幽霊なんていませんよ。」と話すと、秋庭が笑みを浮かべながら「それなら、西南戦争の激戦地だった田原坂で西郷隆盛の御霊とは遭遇できたのか?墓碑銘にも戦死者として名前が刻まれていたじゃないか。」と聞かれた侑斗は「西郷隆盛の幽霊なんてあそこに出ません。出たとしたらそれは自決した鹿児島市内にある”西郷隆盛洞窟”だと思いますけどね。でも、天草四郎も西郷隆盛も、この世に思い残すことがないから姿を現すことはないでしょう。」と切り出すと、秋庭は「せっかく南島原まで足を運ぶんだから、会えるものなら会いたいね。」と話すと侑斗は「そうですね。でも僕達と同じ思いをしているのは、御参りに来られている方も、歴史ファンの方だって皆さんそう感じて足を運んでいることでしょう。」と話すと、二人の乗る車は予約をしておいた南島原市内のホテルへ21時過ぎにチェックインの手続きを済ませた後に、部屋でゆっくりと寛ぎ始めた。


ベッドに座った侑斗は原城跡の心霊現象に纏わることを調べ始めた。


「今回の原城跡も、前回訪れた熊本の田原坂も、心霊現象のことについて調べようと思っても内容が内容で怖いというよりかは完全に日本史の勉強ですね。そういえばこれ教科書に載っていたなあ、なんて思いながら見ていますよ。改めて見ると、日本史市場最大規模の一揆とされているのが島原・天草の乱みたいですね。(スマートフォンを片手に)へえ。必死に抵抗も虚しく幕府に鎮圧されてしまい、幕府への反乱とし多くの人間が公開処刑で晒し首にされたとありますね。無念の思いが今もなお地縛霊となって現れるのか。しかし幕府に逆らったからって、女子供や民間人を含む37000人を全員原城で処刑、中には生きたまま火をつけられたり、縛られた状態で生き埋めにされた者もいるから、今でも掘れば人骨が出てくるそうですよ。霊が出る以外にも激戦が繰り広げられた場所なので、血の臭いがするとも言われていますね。」


侑斗が椅子に腰かける秋庭にそう語ると、秋庭は「血の臭いって一体どんなものだろうね。だって普通に考えたら何百年も前の、島原・天草の乱っていつだった?」と侑斗に訊ねると侑斗は「ちょっと待ってくださいね。調べますね。島原・天草の乱が起きたのは1637年(寛永14年)12月11日に勃発して、1638年(寛永15年)4月12日に集結したとあります。島原・天草の乱を機に幕府がより鎖国への政策に舵を切ったとありますから、相当な規模の反乱だったということは言えますね。因みに幕府軍側にはあの宮本武蔵も参加していたようですが、高齢だったうえに一揆軍の投石で足を負傷してしまい大した戦力にならずに離脱したという記録が残っていますね。その宮本武蔵が被弾した木というのも残っているみたいですね。」とワード検索をして調べた結果を話すと、秋庭は「へえ。明日は市役所に来てくださいとかそういった約束はしていないから直接原城跡の観光用駐車場があるからそこで待ち合せをするってことになっている。時間は9時だね。時間も時間だから、心霊現象と言えるようなものって調べてみたところ夜に訪れた際に白い靄やらオーブが撮れる等の変な写真が撮れるといった報告があがっているようだし、何だったらホテルから原城跡ってそんな遠くないところにあるから侑斗一人だけでも試しに行ってきたら?あと天気予報は晴れなのに急に雨が降ってきたりという報告もあるけど、雨の日は天草四郎を筆頭とした大名行列が見れるなんて目撃談もあるみたい。逆に今の時間帯のほうが検証のし甲斐があったりして。俺は行かないけどね。」と侑斗に提案すると侑斗は「今から原城跡に独りで心霊検証なんてしません!それに被写体に白い靄が掛かるってことは亡くなられた方々が集団で現れたってことなんですよ。これって敵だと思われて警告の意思表示を出している可能性もあるんですよね。それがあるってことはやっぱり夜にはいかないほうが良いってことです。明るい時間帯に行って、天草四郎のお墓に行って、天草四郎の御霊にお会いしたいですって、会えるものなら会いたいですよ。霊媒師じゃないのでそんなことはできませんけどね。でも現実に考えると、投稿されてある写真や動画、ストリートビューなど心霊じゃない情報も含め調べると、この当時に一揆軍として一緒に戦った家来というのか仲間と言うのか、亡くなられても攻めかかってくる幕府軍に対し必死になって抵抗を示している。女性やお子さん達は応援する立場でずっと見守り続けているというのか、武器を持って戦うようなことはできないが、付随している以上出来ることをして抵抗の姿勢を露わにしている感じがありますね。ここは幕府の政策に必死になって抵抗の意思を示した方々が、幕府の圧倒的な攻撃力に屈してしまい無念の死を遂げた方達ばかりですので、肝試しとかそういうのは田原坂もなんですけどそこはやっぱりリスペクトの気持ちがないと亡くなられた方に対して凄く失礼な行為です。呪われようが祟られようが俺は知らない。」と語ったところで、秋庭と侑斗はだらだらと喋って過ごしながら23時過ぎに就寝することにした。


そして2025年10月24日 金曜日の朝を迎えた。


朝7時に起床した秋庭と侑斗はホテルの食堂でモーニングを取るためにさっと身支度を済ませてから、1階へと下り始めると用意された朝食御膳を食べながら、次に向かう蟻尾山から最終目的地の糸満市の喜屋武岬の打ち合わせを行うことにした。


話し合いをして行く中で、秋庭があることを話し始めた。


「最初のさ、知覧特攻平和会館で饗庭君がパイロットの霊を見たって言っていた三角兵舎の復元地のところってあったじゃん。あそこの写真をさ、丸田市長にも南九州市の釘本市長にも見せたんだけどさ、俺達こう言われたよ。”早急な御祓いが必要”だってね。続く綾の照葉大吊橋でも誰が見ても分かる不自然な場所に女性がうつっていたのも、田原坂での亡くなられた官軍の方の上半身だけの写真が写っていたのも、観音の滝での男の子と女の子の写真も、それぞれ全部の市長に報告したらやっぱり口を揃えて”御祓いをしてきたほうが良いよ”って言われたけど、饗庭君がその都度その都度御祓いをしてもらっているのだから俺はそんなに気にしていなかったんだけど、でも昨日の犬鳴ダムでも本当に饗庭君が言っていたように、カメラのフラッシュではない赤いオーブが俺達の付近に近づくと最終的にはダム底に写り込んで、まるで俺達を誘発して突き落とそうとしているのではないか?というのも撮れたから、ちょっと帰ったら本当に大丈夫かって言われそうな気がするんだよな。ちょっと見てほしい。」


秋庭が侑斗にこれまでに伺った心霊検証で写真撮影を行った際に不審な写真が撮れていたと侑斗に告げると、侑斗は「霊能者の観点から検証したいので見せて頂けませんか。」とお願いして、侑斗は秋庭からカメラで記録されてある静止画の画像を一枚一枚丁寧に確認をすることにした。


一つ一つ確認していく上で、侑斗は秋庭に「心霊写真は後で僕が御祓いをしておきます。皆さんにお見せはもうされているんですよね?」と質問すると、秋庭は「ああ。一応こんな写真が撮れましたと言った感じで報告はした。」と答えると、侑斗は「それはまずいです。きちんとした御祓いをしておいた状態で画像を添付しておかないと禍が伝染する可能性があるかもしれません。出来ればこんな画像を送るんだったら最初から僕に相談してほしかったんですけどね、まあ向こうには御祓いをして下さいとしかこちらもお願いをするしかないんですけどね。」と語り、秋庭も侑斗の詩的ともとれる発言を聞いて侑斗に「ごめん。一言ちゃんと霊能者の饗庭君に検証をしてもらってから画像を送信するべきだった。」と言って謝罪の意を伝えると、侑斗は「もう送信してからでは遅いです。出来れば早急に御祓いを受けてください。それしかないでしょう。」と答えて二人は朝食を食べ終え、部屋に戻った。


部屋に戻ってからの侑斗は、朝の報道番組のニュースが気になったのか、テレビのチャンネルをつけると、報道番組で伝えられているニュースを食い入るようにして見始めた。その間の秋庭は市長に相談の連絡をしていた。


テレビをじっと見つめる侑斗に秋庭が「さっきのこと、市長が対応してくれていたみたいで、それぞれの市長が写真を見てすぐに御祓いをその日のうちに受けてきたみたいで、大丈夫ですといってくれた。自分としてはこの心霊観光地のプロジェクトを、小城市が主体となってというのもあって、広報課として働く一員として率先して頑張って取り組みたいというのがあって、周りが良く見えていなかった。饗庭君に迷惑をかけて申し訳なかった。撮影された写真をすぐにでも饗庭君に見てもらって御祓いが必要なら御祓いをするなど、適切な処置を怠ってしまった。本当に悪いと思っているから、これからは饗庭君運転してくれるって言ってくれたけど、でも饗庭君には悪い事をしたって自覚があるから、ここから先は俺が運転するよ。」と語ると侑斗は少し考えた末に「覆水盆に返らずって言葉がありますからね。やってしまったのはどうしようもない。取り返しがつかないことですから、これ以上誰が悪いとかそういった話はこれから先無しにしましょう。起こったことはリセットしましょう。次から気を付ければいい。それだけです。」と秋庭を励ますように話すと、秋庭は「そういってくれてありがとう。今度は絶対に気をつける。」と語り、8時40分に二人はホテルのチェックアウトの手続きをして、約束場所でもある原城跡の観光駐車場へ出発した。


8時50分には約束場所の駐車場に到着すると、目印になるように侑斗が大きく手を振ったりして合図をしていると、侑斗の合図に気付くようにある車から手を振って合図をされたことに気付き、侑斗が秋庭に「あの車かもしれませんよ。」と話して、秋庭が「そうかもしれないね。」と返事をした後に「おーい!」と手を振って合図を送り始めると、秋庭の車の近くにまで車を駐車したその車から、とても可愛らしい感じの女性が出てくると二人の元に近づき挨拶をしてくれた。


「秋庭さん、饗庭さん、ようこそ南島原市が誇る世界遺産へようこそ!今回ご案内をさせて頂くのは、地元南島原市の観光大使を務め、長崎県のご当地アイドルとして活動している柊穂乃花です。饗庭さんの霊能者としての活動はわたしも何度かテレビで見た事があるので、お会いできてとても嬉しいです。宜しくお願いします。」


可愛らしい口調で二人の前で挨拶すると、侑斗がニタっと笑いながら「まさかこんなご当地アイドルが来てくれるとは思ってもいなかったです。今回怖いと思うことを経験するかもしれないけど、覚悟は出来ているかな?」と訊ねると、柊は「饗庭さんったらそんな怖い事を言って怖がらせようとしているんですね。ここに現れる幽霊さんは怖くないと思います!とっても良い幽霊さんばかりだと思います!」とにこやかな笑顔で主張すると、侑斗は「この世には良い幽霊もいるが、禍を齎す悪い幽霊もいるんだぞ~。」と脅すようなことを言った所で秋庭が呆れかえってこう突っ込んだ。


「お前、仕事忘れてナンパしようとしているだろ。」


秋庭に突っ込まれた侑斗は「秋庭さん、何を言うんですか。ナンパなんて、学生時代の時以来してませんよ。社会人になってからは忙しくなって、そんな遊んでいる余裕なんて出来なくなったんですよ。でも、モテたときはモテましたよ。自慢じゃないけど彼女が9人いたときあって9股とかしていたときもありましたよ。今は仕事が恋人ですからね、仕事だけで9股していますから。」と語り言い訳をつくと、秋庭が「そうか。今は仕事が恋人なのか。それにしても9股はないだろ。」と言い返すと、侑斗は「今はそんなことしてませんって。5股がバレて一瞬で俺彼女がいなくなってからしなくなったんですから。あっ今さっきの話はマジですからね。浮気は隠し通そうとしても絶対バレるんですから、それから大人しくしていますよ。」と何気なく語り始めると、秋庭は柊のほうを見て「こんな外見だけが良い下衆野郎に気をつけなさい。」と指摘をしたところで、侑斗が思わず大きな声を上げた。


「俺はそこまで下衆じゃないって!」


楽しい自己紹介(?)の時を終え、三人は徒歩で原城跡の本丸跡を目指すことにした。ゆっくりとした歩調で歩きながら、柊から秋庭と饗庭に原城跡の説明と心霊現象に纏わる話をし始めた。


「原城跡は2018年6月30日に世界遺産としての登録が決まった長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産の構成遺産の一つとして知られています。これから少し歩いた先の左手に原城の大手門跡、少し行った先の右手には原城の三の丸跡があります。さらに歩いて行った先に原城の二の丸跡があります。わたしたちはホネカミ地蔵様のところで一度手を合わせてから、原城の池尻門跡から本丸跡に入るのですが、入ったすぐのところにある天草四郎時貞の墓碑と佐分利休之丞の碑を前に拝んでから本丸跡と原城跡を目指しましょう。その前に原城跡の心霊現象についてお話ししますね。三代将軍の徳川家光の時代にキリシタン弾圧や過酷な年貢を取り建てられた島原の領民が一揆をおこしたのが島原・天草の一揆です。農民や浪人以外にも弾圧を受けていたキリシタン民も一気に加勢し、カリスマ的な人望があった元士族の天草四郎時貞を総大将として廃城と化していた原城跡を立て直し、88日間にも渡って籠城した。強固な守備を誇り、二度に渡って敵の攻撃を防いだそうですが、時代の深刻さを重く見た幕府軍がのべ13万弱の軍勢を差し向けて、一揆軍は全て戦死、または処刑され、内通者除くすべての方が野に晒されたと言われています。今先程の話は島原・天草一揆についてですけども、主に言われていることは雨の降る夜に無念の死を遂げた領民やキリシタンたちが行列を組み彷徨い現れると言います。目撃者によると、白い影の亡霊が現れるそうです。今でも発掘すると、一揆軍の人骨らしきものが出土されていますので令和になった今もなおこの地で亡くなった方の無念や幕府への怨念が遺っているんだと思います。それを是非ともボランティア霊能者として幅広く活躍している饗庭さんに心霊観光地として推奨できるのかをして検証して頂きたいですね。」


柊が侑斗のほうを見て御願いをすると、侑斗は「わかりました。霊能者として率直に思ったことをお伝えできればと思います。」と語った。三人はゆっくりとした歩調で大手門跡、二の丸跡を通り過ぎ、ホネカミ地蔵様が目の前に見え始めたときに柊が秋庭と侑斗に「今目の前にあるのが、ホネカミ地蔵様です。本丸跡に向かうまでに、先ずは来ましたという報告もかねて両手を合わせましょう。」と提案すると、秋庭は柊に「そうですね。」と話すと侑斗のほうを見て「両手を合わせ挨拶してから本丸跡に行きましょうか。」と切り出して、三人はホネカミ地蔵様の前で深々と頭を下げて両手を合わせて拝み始めた。拝み終えると、池尻門跡から本丸跡に繋がる階段を上り始めると、階段を上った先にある天草四郎時貞の墓碑に立ち止まると、深々と頭を下げて両手を合わせ拝むと、続けて階段脇の方向にある佐分利休之丞の碑の前でも深々と頭を下げて両手を合わせ拝んだ。


「挨拶するべき場所は全て終わったので、原城の本丸跡から原城跡とゆっくりと見ていきましょうか。」


柊が秋庭と饗庭に語ると、秋庭が「昔城があった、その割には何も残っていないんだね。ここにこういう部屋がありましたとか、そういった痕跡もないのか。」と柊に対して聞き出すと、柊は「はい。もう幕府軍の猛攻を受けて一揆軍が負けを認めたときに、城があった場所は再建が不可能なほど破壊されつくしてしまったので、恐らくここに建物があったはずというところに分かりやすく案内板を出して説明しています。最近案内板を新たにリニューアルをしたばかりなんですよ。」と語り説明すると、侑斗は何かを感じ取ったのか、さらに奥の方向へと突き進んでゆく。


秋庭が侑斗に「饗庭君、何か感じたのか?」と聞き始め、侑斗の後を追うようについていくと、少し歩き進んだ先で侑斗が立ち止まると秋庭に「いますね。恐らくですが、一揆軍の一員として幕府軍と戦われて戦死された方々が、かつて城があった場所をウロウロするような感じで彷徨っていますね。見た限りでは手厚く供養されている、天草四郎の墓碑はファンが多いのか花やお供え物が本当に多くって驚かされましたが、地元の方達できちっと管理されている場所なので、戦死された方々も今となっては”自分たちのことを大事に思ってくれている”と思って自然と同一化していますね。禍を齎す危険性は皆無に等しく、御霊達の安息の時間を奪う肝試し等の罰当たりなことをしなければ、亡くなられた方々の怒りに触れることはないでしょう。心霊観光地として足を運ぶのは良いと思いますが、この地で最期を遂げられた方達に対する供養の気持ちを損ねるような行為をしてしまえば、心霊現象には遭遇するでしょうけども、その後はどうなることやら保証しかねます。」と語ると、近くまで駆け寄った柊から「饗庭さん、何かありましたか!?」と聞かれ、侑斗は柊が駆けつけてくるほうへと振り返ると、柊に対し「すみませんね。ご心配をおかけし申し訳ありませんでした。」と一言謝罪をすると、自分なりの見解を説明し始めた。


「心霊観光地として宣伝をして良いと思いますが、せっかく世界遺産の一つとして登録をされていますし、またオカルト系の心霊系番組で”霊が出る”と分かっているから人気を稼ぎたいがためにルールを守らないYouTuberとか、肝試しに訪れる若者達によって安息の時間が邪魔されぬように営業時間は設けたほうが良いですよ。防犯カメラも設置して、夜の時間帯の訪問を避けられたほうが良いと思います。僕もたまたまですよ、ここに訪れるまでに人気のあるYouTuberが肝試しに原城跡に訪れたときに肩が非常に重たくなったということを仰っていた時に、その際に写真撮影された写真には霧など発生していないのに白い靄のようなものが全体を覆うようにして写り込んでいるのを見て思いました。”これは逆鱗に触れてしまったな”とね。街灯のある今とは違い、明かりが無くなってしまえば漆黒の闇に包まれ、肝試しに訪れることそのものが非常識だと考えられてもおかしくないと感じる方達ばかりですので、激しい怒りに触れたら大袈裟に言ってもと言われてもと思われてしまいそうなんですが、祟られるかもしれません。そこはやはり人として最低限のルールを守ったうえで、この地に訪れてほしいことを願うばかりです。」


侑斗が話し始めると、柊は首をうんうんと頷きながら「そうですね。非常識な時間に馬鹿騒ぎをされるぐらいなら、最初から営業時間などを設けたほうが良いってことですよね。市役所の広報の方にも、饗庭さんが仰っていたことは伝えて、今は24時間営業という形でどの時間帯に行ってもオープンな状態ではあるんですけども、いずれは管理スタッフなどを置くような形で大切な世界遺産を守っていきたいです。」と言って答えると、秋庭も「悪ふざけして近隣の住民の迷惑になりかねない行為を防ぐためにも実施をしたほうが良いと思うよ。早々と市役所のほうには僕達が思った率直な意見として伝えるべきだ。」と柊のほうを見て話すと、柊も「わかりました。」と返事した。その後、侑斗と秋庭は城があった場所をゆっくりと視察したところで原城跡の心霊検証を終えた。駐車場にまで戻ってくると、侑斗による御祓いを実施、秋庭と侑斗が案内役をしてくれた柊に御礼を伝え、秋庭と侑斗は次の目的地である鹿島市の蟻尾山へと向けて車を出発させた。時刻は12時を過ぎていた。

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