霧の中に悪魔がいる

full moon
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(7)

公開日時: 2021年8月9日(月) 11:30
文字数:513

駐車場には、何台もの警察車両が止まっていた。


その警察車両は、駐車場の白線を無視して、レストランを囲むように並んでいる。


ほんの僅かに流れるそよ風に、薄霧の水の粒が揺らめく。


私は、警察官に連行される。


警察車両の周りには大勢の警察官が居る。


その中に、見覚えのある人達が居た。


それは、老婆が、霧の中に悪魔がいると叫んだ、あの時、早々にレストランを出た若いカップルだった。


そのカップルは、私を見ている。


その表情は、悲しさと恐れが混ざっている。


私もカップルを見た。


カップルは、すかさず目を逸らす。


私は駐車場の崖側に止まっていた救急車に誘導される。


その時、崖の下に広がる町並みが見えた。


所々、雲のように霧が町並みを隠している。


しかし、霧の無い場所は、はっきりと見える。


悪魔が地ならしした様子は無い。


道路を行き交う車は忙しなく、人々は変わらない朝を迎えていた。


何の気持ちも変わらないのに、自然と、目に涙が滲む。


私は、誘われるまま、救急車に乗った。


軽快な鳩の鳴き声が聞こえる。


その鳴き声は軽快だった。


朝を迎えて、一日が始まる事を喜んでいるように聞こえる。


その鳩の鳴き声をぼうっと聞いていると、それを遮るように、救急隊員は、救急車のドアを閉めた。

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